KONICA 3A
このカメラはKazさんからの預かりもので、シャッターを整備した。
手動の機械式でレンズ固定カメラはまさに無数にあるが、その完成形とは次の要素を持つと考えられる。「セルフコッキング」
「レバー巻き上げ」「クランク式巻き戻し」「距離形連動」「パララックス補正」 などだろう。細かいところだと一度押せば
次に巻き上げるまで有効に保たれる巻き戻しボタンなどもあげられる。
これらのほとんどは、一部の高級機を除いて第二次大戦後に実現した。ライカやコンタックスなどはほとんど最初から以上に
挙げたデバイスを装備していたが、普及機であるファミリーカメラにおいては遅れていた。コニカでも初期型は連動距離計が
ついているだけで、二重巻上防止その他の機能は無く、巻き上げできるボディーに単体シャッターを組み合わせただけだった。
二型になると二重巻上げ防止と洗練された沈胴メカニズムなどが追加され、V型でほぼ完成した。VAはそれにファインダーフレーム
が距離計と連動してパララックスを補正する「生きているファインダー」となり、このシリーズの最高峰になったといわれている。
シャッターがまともに動作していないので開く。前玉はいきなり廻せば外れる大判カメラ用的構造なので、シャッターには
簡単にアクセスできる。
ガバナーの渋りと軽い羽根油なので直ぐに復活したのだが、前玉を組むと巻上げ時に羽根が開いてしまう。どうもシャッターの
チャージストロークが不足だ。このカメラのチャージは、巻上げ軸・下部のリンク・コッキングピンと続くので、下部を
分解することになった。
これがLV連動ピン。今の時代に絞りとシャッターが同時に動き、絞り優先、又はシャッター優先で操作するにはいちいち
連動解除せねばならず、極めて使いにくい。このピンを外すと絞りとシャッターリングが独立して操作できる。
ウラブタ開閉のノブとロック。半回転で開ボタンが押せるようになる。
底板を外した。普通なら簡単な作業だが、このカメラは複雑なウラブタロック機構で、パトローネだけでなく専用マガジンに対応し、
ウラブタ開閉ロック(オレンジ)はその回転も司る。従って軸が貫通しているのでこれを外さないと底板は外せない。しかし、
この中心のネジは固定後に削られていて、実質的に外すことを拒絶している。マガジンを使う事はありえないので、ここをリューターで
削って分解した。黄色が巻上げ部からシャッターチャージを受けるリンクで、これが外れてしまっていた。このリンクはおそらく
油切れによると思われる磨耗で、ストロークが規定値ぎりぎりだった。この部分で対応するには部品交換しかない。
ウラブタロック部の部品
巻上げは出来るがシャッターがもう少しでセットというところでストロークを使い切り、セットできない、しかもハーフコックで
戻るのでシャッターが開いてしまう。エバセットシャッターでレリーズを押す途中で写すのをやめると、シャッターが勝手に開いて
しまう事がある。あれと同じ症状だ。シャッター前のリングをセットし、ロックするごくわずかな動きでセット不良になる。
ロックピンでわずかにバレルが押されるとセットできなくなるのだ。
対策としてロックはゴム系接着剤で戻り止めにした。ロックだけの問題で外からは見えないし、次に分解する時は接着を剥がすだけ
なのでこれで良しとした。
組み付け後、ここは接着剤で固定した。パトローネで使う限り特に問題ない。
ヘキサノン48o2.0、定評ある手堅いレンズ
《試写》
試写はプレストとIlford FP4+にて
最初のプレストで光漏れが発覚、開閉部の遮光を全て見直し、対策した。
対策後のFP4+では問題なくなった。ピントやコントラストなど問題なし。すっきり切れた感じに上がった。
☆このカメラが完成形だという評価は間違いない。見やすいファインダーと切れ味のあるレンズですっきり写る。逆光や
コントラストが高いものも無難にこなす。
操作性手第一級とは言い難い。巻上げのダブルストロークはアイデア倒れだ。実質は単純なレバー式が勝る。
ピント操作はリング全体ではなく取っ手で行わないと微妙な操作がしにくい。フタの開閉は無駄な操作がうっとおしい。
それでも持ったときの質感、巻き上げレバー操作の楽しさ、結果の見事な画質など第一級のカメラと言える。この後の
35Sシリーズの方がスペックでは勝るのだが、質感、高級感はVAに勝てない。不思議なカメラである。
☆やっぱり良いですね、御愛用を>Kazさん
March 2016