理研(RICOH)OLYMPIC C
今回はkazさんのオリンピックである。大戦直前に理研・リコーから生まれたものの三代目、本格的127カメラだ。
長い間愛用された事を偲ばせるケース。この時代の国産品としては非常に程度が良い。切れた糸は改めて縫いつけてある。
使ってきた人の気持ちが詰まっている気がする。これはこのままにすべきだと思い補修はしなかった
リコーのホームページより
年式相応だが、沈胴用ヘリコイドが固い、シッャターが怪しげ、全体に汚れているなどが基本的な要改善事項。
前玉回転式の前玉を外す。分厚いシムが三枚も入っているし、無限遠のストッパー位置が怪しい。
シッャターリングに不思議な打痕がある。こんなところを叩く理由が無い。シャッター速度決定のピンが外れる怖れあり。
平らになるように修正。
矢印がシャッターレバーだが、これも曲がっている。周りと摺り合い、レバーの戻り=シャッター速度に影響が出ている。
出来るだけ平らになるように修正した。引っ掛かりが無くなってすっきり動くようになった。
内部には後のリコーのカメラと同様に長いアームが見られる。低速を欲張っていないので作動は問題ない。
この時代のものとしては意外に複雑なつくりだ。清掃給油で問題なく作動する。全体を清掃、大ヘリコイドはボロンで潤滑した。
全体に磨いてすっきりした。戦争直前の頃のものとしては材質は悪くない。ただ、エバセットなのでシャッターの押しストロークが
長い。カメラのホールドがしにくく、手ブレになりやすい。特に横位置は非常にシャッターを切りにくい。自分の物として実用するなら
レリーズ付グリップを使うだろう。
前玉の位置が怪しいので、ピントグラスで確認して設定した。ストッパーの本来位置は不明だが、実際に無限が出る位置を基準とした。
もし厚いシムを減らすと、相対的に前玉を緩めた位置で運用することになる。その修正のためのシムだろうが、ここだけは技術レベルに
疑問符が付いた。
127フイルムで34フォーマット(ベスト半裁)なので小柄だが、ベークライトボディーはずっしりしている。
根元の大ヘリコイドで沈胴する。フォーカスは前玉が受け持つ
小さいファインダーだが意外に見易い
しっかりしたフイルムプレートが付いているから平面性は良いはず
《試写》
會津さんから頂いたフイルムの中からフォルテ100を選ぶ
手ぶれ失敗カットや不可解な光線引きカットもあったが、意外なほどしっかり写った。ただ、最後のカットのように平面性が
悪くて形が崩れてしまったものもある。
☆1936年、昭和11年のものなので物資不足やシステムの発展期だからより原始的なものを想像したが、意外なほど完成していた。
レンズ性能は戦後のものと変わりなく、確実なヘリコイド沈胴やフイルム押さえ板の存在など、初期型の問題点を改善して
完成に近づいている。ボディーレリーズとセルフコッキング、連動距離計、自動復帰の巻止め兼枚数計が付けば一先ずの
完成だろう。これだけの技術があったから戦後直ぐに大ヒット作、リコーフレックスを製造できたとわかる。
このカメラで良い写真を写したければ、手ぶれ対策(レリーズ付グリップ)とフイルム押さえの強化(ただし擦り傷対策が必須)だ。
これらの対策をすれば、立派な御散歩カメラとして運用できる。
☆意外に写りますね>kazさん
May 2016