KODAK SIGNET 35

 kazさん依頼シリーズ、コダックの人気機種、シグネット35



 シグネット35は一時期に異様に人気があり、とても高騰した。作品はあちこちのブログにあり、私はあえて探すほどのものではなく、 縁があったら使ってみようと思った。その後、修理依頼に一台が入って来たのだが、ピンが甘く曖昧で、とても正式に報告出来るレベル では無かった。よってレストア報告リストには入れていない。正式報告は今回が初めて。クラカメブームは去ったから、冷静な 報告には良い時期かもしれない。



 エクター44mm f=3.5

 このレンズの評判が高く、それがブームの元となった。もともとコダックのレンズはフイルムメーカーだけにカタログデータと言うより 写した結果が良く、特にコマエク・コマーシャルエクターなどの評判が高いからこのレンズも人気が出たのだろう。 焦点距離が微妙だが、50oに比べればちょっと広角で、使い易そうだ。

 全体に錆び、くすんでいるのを磨いた。また、軍艦部を外してファインダーを清掃したが、記録し忘れた。巻上げと巻戻しノブを 外し、その下のネジを緩めるだけであっさり外せる。非常に単純な構造なので特記事項は無い。カウンターが動作していないので ギア部のアームの動きを直して改善。距離計は問題なかった。



 コダック35以来の如何にもコダックな外観。セルフコッキングではないが、二重露出の防止は付いている。直進ヘリコイドで 沈胴はしない。シャッターレバーが独特だ。実用ではそれ程使いにくくは無い。







 カウンターは手動で合わせる。



 この時代のアメリカのカメラには露出計算判が付いている。露出計が普及していない頃の「明るい戸外で順光なら1/100秒で 11-16、これで(フイルムのラティテュードで)使えるネガになる」などカン露出のまとめみたいなもので、国産なら 簡易セノガイドと言うところだ。北米の明るさが標準だが、これが意外に良い値を出す。



 左の底部と前の境にある小さなレバーが巻戻し用のスプロケットをフリーにする部分。内部の巻止めストッパーとつながっている。



 アパーチャーの直ぐ下のギア状の物が巻止めストッパー。これの一定の回転を検出して巻止めする。オートハーフのように シャッターをコッキングする機能はない。フイルムなしで空写しするにはここを廻すと巻止め解除になり、シャッターを切れる。 フイルム押さえ板がメッキで、透明度が高いフイルムだと滲む可能性あり。本気で使うなら黒いものと交換すべきだろう。

《試写》

 コダックにはコダックのフイルムと言うことで、ゴールド200で行った。









 色はあまり調整していない。コダックらしい暖色だ。ピントは問題ないがちょっとフレアーっぽい。逆光ではコントラストが 低下する。スキャンしたもののコントラストを上げて調整している。

☆以前にテストしたものと方向的には同傾向だ。どこか紗が掛かったような、良く言えばノスタルジック、きつく言えばボケっぽい。 ピントが悪いわけではなく、全体にフレアがあるのでそう見える。色はコダックらしく黄色から赤が明るくなる。順光と逆光では 描写がはっきり変わり、半逆光でも絞りを1段は開けないと人物の顔などが暗くなりすぎる。

 これをどう使うか、少なくとも記録用途には向かない。当たり外れが大きいから、あてにするとがっかりカットが出るだろう。 いわゆる「ユルフワ」写真が向きか。色を生かしてノスタルジックを狙うのが良いかもしれない。内面反射防止対策と フイルム押さえ板の改善は必須だろう。

 大判用のコダックのレンズはきちっとピントやコントラストが出た上で、ふわっとした雰囲気を持つ。同傾向ではあるが、 135ではそこまでは届かない気がした。


☆夢の中のような、不思議な味です。面白いですが使いこなしは難しいですね>kazさん


MAY 2016


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