ZEISS PLATECAMERA(?TAXO改)

 プレートカメラとは写真用プレート、即ちガラス乾板のカメラで、旧規格のカメラである。蛇腹式で引き出すタイプのレールを持ち、 多くは簡易なファインダーで、本格的な撮影はピントグラスで行うタイプだ。これらは使いにくさや枚数対応のため、戦前から ロールフイルムに対応するフイルムバック(ラーダ、ロレックス、その他各カメラメーカーなど)が売り出されていた。



 今回はちょっと不思議なモデルだ。不思議の理由は連動距離計(ただし故障中)が付いていること。これが無ければツアイスの TZXOなどではないかというタイプだが、距離計はきちんとサイズバランスが良く、作りがっしっかりしている。後に述べる 理由から後付と判断した。



 距離計カバーを外したところ。簡素だが片側にはプリズムが使われている。基線長が長いので、精度的には十分な性能が あると思われる。この部分単独ではミラーが動き、二重像ははっきりしている。



矢印が距離計駆動のレバー。これを動かすと二重像が動くから連動させれば良い。問題はこのカメラの基本構造。前板が開閉する ので、ここも可動で無いと畳めなくなる。オリジナルはどこかに消えて、固定部のみ残っていた。この構造で折りたたみは非常に ハードルが高い。前板固定なら単純だが、この部分に蝶番を入れたら肝心の距離計がスムーズに動きにくくなる。しかも連動範囲を 超えて前板が前進するから、その時にはレバーから離れられなければならない。





 テストできれば良いので折りたたみはあきらめた。単純にレバーを押す部材を接着した。上にはレバーが逃げないようガイドを 接着した。いずれもゴム系で接着しただけなので、何時でも外せる。





 バック部は二重構造。この時代の汎用ロールフイルムホルダーは公差どころではなく違いが大きい。それらに対応するために この構造になっているようだ。残念ながら手持ちのバックは合わないので、これを外して直付けでテストと決めた。



 テッサー12p4.5、コンディションが良い。旧コンパーは1/250秒までのタイプ。低速がちょっと遅いので清掃給油した。











《試写》



 ミスで光漏れしたりピン合わせの間違いなどいろいろあり、フイルムは3本消費してしまった。後述の理由でファインダーが 使えないので、自作のレリーズ付ホルダーにリンホフの4×5用ズームファインダーを装備して撮影した。ファインダーは ピントグラスで確認して無限で視野率90パーセントくらいで運用して見た。近距離のパララックスを考慮してグリップで 少し内側に向けている。



 APX400にて





 Presto400 二枚目は645程度にトリミング、三枚目はホルダーの浮きで光が入ったが、距離系の至近距離の見本として掲載



 FORTE PAN100

 セットが完璧なら距離計は機能している。

☆このカメラ、ドイツの職人が他のカメラ用の距離計を組み込んだものと推定した。他の機種と考える理由は、ツアイスのこのタイプに 距離計を塔載したものは知られていないからである。しかし技術レベルは高く、乾板で運用するなら一枚撮りながら距離形式で きちんと使える。ただし距離計連動部は開閉に無理があるので、部品が破損したのだろう。レバーを反対側で押す構造なら 開閉と連動を無理なく出来るが、その場合には内部で倍率変更部品が必要になる。その辺の問題が後付には付きまとうものだ。

 汎用ロールフイルムフォルダーだと接眼部に目を寄せられないので、距離計は使えるがファインダーは 使えない。フレームファインダーは接眼側が外されているのでどうしてもなら反射ファインダーだが、これは実用にははなはだ 見難いのが問題点か。

 いろいろ使いにくさはあるが、ロールフイルムで69判をきちんと写せる。距離計によって近距離開放でもピントの不安は無い。 この当時(1930年代)なら高機能だし、現代でも一発に賭ければスナップさえこなす。良いカメラだ。


☆面白いカメラです。このまま展示、実用としてください>Sさん

June 2016


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