MAMIYA Universal Press(改)
元はユニバーサルプレス。今はハウジングだけ、ほとんどの外装も無いジャンク。おそらく610さんから拝領のジャンクセット
の一つだと思うが、ワンオブゼム、記憶が怪しい。転がっているのを見ているうちにちょっと構想が沸いてきた。
はがれかけの皮は全てはがし、掃除してレンズやバックを仮付けして様子を見た。どこかおかしい・・・
左に見える木材は過去の改造のための部材の一部。レンズ固定のリング類が緩いので、前板を外そうかと思ったが、
腐食したボルト・ナットが完全に固着している。無理をする事は無いので裏からマウント周りのネジを締めこんだ。
マミヤプレスを見慣れている人はこれらの写真に違和感が沸くだろう。上下左右がおかしい。そう、ホルダーが90度ずれて
いるのだ。この写真で見えている手前は本来は頭の部分で、距離計やファインダーが乗っていた部分。今は何も無くて
穴が開いているだけ。これらの穴は貫通しているので、このままだと激しく光が入る。
手前が本来の底部。しかし三脚ネジさえない。ずいぶんいろいろ改造されていたようだ。
90度ずれていた原因は、フイルムホルダーを脱着・固定するMアダプターがヴァーティカル、つまり縦位置用の
アダプターだから。ユニバーサルプレスはMアダプターでプレス用、Gアダプターでグラフレックス系(RB67)
そしてポラロイド用のバックは直接取り付けられるのでユニバーサル=多用途と称されたのだ。その代わりにアオリ機能は
省略されている。それらの内、Mアダプターには縦位置用があり、それが付属していたのだ。
最初の構想はプレスの広角専用目測軽量ボディーだった。このボディーはそのために全ての部品を外されたのだろう。
しかし縦位置用だと使えないと言うことで放棄されたのか。(Mアダプターはなかなか見つからないし高価だから)
構想は決まった。「縦のものを横にする」
加工開始。横にした時に干渉しそうな内部の反射防止リブに穴を開けまくって折り取り、ヤスリ掛けして黒塗り。
平らにする必要は無いのでここまでで止める。縦位置でも蹴られないのだが、光路ギリギリなのでエッジでの反射が
考えられるから広くした。反射を弱めるより懐を広くして光の移動距離を長くするのが最も確実な内面反射防止処理なのだ。
ヴァーチカルアダプターが横位置になった。
元は上だった右横にはベニアを貼り付け、その他の場所も穴を塞いで皮を張ったり軽く磨いたり。新しく上になった
部分にはアクセサリーシューのセットなど一通りの加工をする。三脚ネジ穴は元の縦位置用が対応する。
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右のアクセサリーシューはアルミ板を既設のネジで止め、その板に強力接着した。フラッシュが壊れるほどの
力がかからない限り外れる心配は無い。左は距離計も乗せるときのために増設しておいた。
基本構成。レンズはこのシリーズの最高傑作、50o。その他に75oを考えている。その場合は35oカメラ用の35o
ファインダーまたはリンホフのユニバーサルを乗せる。(これ以上の焦点距離のレンズは本来のプレスに任す)
90度ずらすからレンズの指標もずれる。使いにくいと思ったが、意外にも問題が無い。50oの場合、被写界深度が
深いので、5メートルに合わせて絞りが11だと無限から1.7メートルが深度に入る。シャッターも基本的に固定して
絞りのみ動かす方法だと気にならない。感度400で昼間の撮影ならファインダー命、タイミング命で使える。
《試写》
秘蔵のプレストにて実施
1.2枚目は11に絞っているが、3枚目は開放にした。十分使える絵になった。
☆マウントなどは変更していないから、試写の感想は50oレンズの感想だが、今後50oはこのボディーで運用するので
これを一つのパッケージと考えて評価する。
大きさ的には前から見てほぼスクエアであり、伸び上がった元の形より威圧感が少なく、扱いやすい。ファインダー位置が
大きく下がったので、パララックス矯正はほとんど不要になった。無限位置で固定し、近距離は上が少し切れると考えて
写せば大丈夫だ。シャッターはレンズ横で左手親指でダイレクトに切るが、非常に軽いのでブレの恐れは無い。
このタイプにはセコール50oが必須だろう。周辺まできちんと描写し、イメージサークルが大きいのでアオリに耐える
イメージサークルがある。発色はちょっと冷色系ですっきりしている。このレンズのシャッターを1/250秒固定にし、深い深度を
頼りにタイミング重視で写す。ただし、巻上げ連動では無いから無意識のうちにシャッターセットし、決して二重写ししない
スキルは必須だ。それでも69の大画面で一発に賭けるのは痛快だ。
マミヤプレスでこの手の改造は多い。狙いは軽量化だと思うが、その観点ならあまり意味は無い。ファインダーと距離計では
大した軽量化にならないのだ。ジャンクならいざ知らず、壊れていないものを改造するのは慎みたい。本来の状態で立派に
使えるカメラなのだから。
☆仕上げました>610さん
August 2016