Toyo Seiki Kogaku Elbowflex and 謎のRAEMOFLEX




 あちこち問題があるということで、ひいらぎっこさんから整備のために預かったエルボーフレックスとラエモフレックス(?) ・・・聞いたことも無いカメラ。

 仲間の応援でエルボーフレックスは一応出自が判った。

The Elbowflex (エルボーフレックス) is a Japanese 6×6 TLR series, distributed in 1955-6 by Elbow Shokai and made by Toyo Seiki Kogaku, later Cosmo Camera Seisakusho. http://camerapedia.wikia.com/wiki/Elbowflex より抜粋

 要するに1955-6年に東洋精機光学で作られ、エルボー商会から売られた二眼レフということだが、全く聞いた事が無い。 カメラ年鑑などには掲載されているので、そういう会社、いわゆる四畳半カメラなのだろう。

 ラエモフレックスは1955年頃の輸出カメラの資料に名前のみ出ていたが、社名は空欄でどうもどこかのOEMらしい。 この先は全く不明。レンズ名はVery Anastigmatだが、これもまったく手がかりなし。

《四畳半カメラ》

 1940年代後半から1960年代は、一般用カメラとして二眼レフに人気があった。この頃には頭文字がAからZまであると言われる ほど二眼レフメーカーが乱立した。実際にはJ、U、Xで始まるものは無いのだが、同一機種の名前を変えた物なども含め、 判るだけでも数十社が存在した。

 二眼レフは一眼レフや距離計式と異なり、暗箱と前板移動部と巻上げ部にレンズシャッターセットがあれば形になり、 フォーマット(多くが66スクエア)の威力で密着で見る程度なら大メーカー的技術力は必須ではない。そこで、いろいろな 部品メーカーからパーツやユニットを買い、組んで自社のエンブレムをつけて一丁上がりの簡易なノンファブリックが流行った。

 これらの会社は規模が小さく、狭い工場で組んでいたので「四畳半カメラ=四畳半で組んだようなカメラ」という蔑称が生まれた。 これらメーカーは昭和30年代後半にはどんどん淘汰されて消えた。同一メーカーで国内用と輸出用のエンブレムを変えたり、 OEMが多かったので、詳細はわからないものが多い。

 大手メーカーでレンズは自製せず他社に依頼していた(リコーなど)ものは、何らかの理由で規格外 として返品したものが相当数あったのは間違いない。現代なら原料に戻すか廃棄だろうが、物資不足の時代だからノンブランド として処分、つまり無印で横流しされ、それが四畳半メーカーに供給されたのでないだろうか。四畳半メーカーはレンズも 買って自社名をつけていたので、ヤシカ系の75oかリコー系の80oの規格外品が廻されたとしても不思議は無い。

 この時代の二眼レフはレンズ周りの規格が良く似ていて、レンズの固定ネジなどには統一規格があるかのように共用出来る ものが多い。そんな事実から勝手な想像をしたのだが、残念ながら今となっては真相は藪の中である。

 ミラー、グリスや皮などの質が低く、メンテナンスされることも無く時間が経過したものが多いので、カメラとしての 評価は低いが、必ずしも全てが低いとは言えない。きちんと整備すると意外な性能を発揮するものが多く見られる。二眼レフ という形式は特殊な構造(ローライのフルオートマットやマミヤのレンズ交換等)を持たない場合は整備性が良く、多くが ノンコートなのでカビで再起不能という例は少ない。66フォーマットの威力で「ちゃんと使える」物が多くある。 戦後の混乱が生み出したアダ花だが、楽しいカメラたちだ。


 と言うわけで、何はともあれ整備して写して見ることにした。先ずはELBOWFLEXから。



 ネジが消えているなど問題はあるが、見かけ的にはぼろいだけ。例えばピントノブのカバーが失われているので、レジンペーパー を切り抜いた。



 すっきりした。



 ウラブタのヒンジ部のネジ、向かって左が欠けている。正確にはネジが折れて中に残った状態。



 この細いネジをタップを立てて切り直すのは無理なので、1oのドリルで貫通穴を開けた。



 少し太めのネジを強引に締めこんでセルフタッピング+接着剤でしっかり固定した。



 ウラブタの締りが悪い。フリーで見るとこれだけずれている。おそらく強引に開いた時に変形したのだろう。対策は 「逆向きに入力」つまり手加減で曲げ直し、角が膨れてきたのでちょっとハンマーで板金修正



 ミラーは交換すべきか否かギリギリと言う状態だが、先の事を考えて交換する



 ミラーが外れない。理由は「接着しているから」。なんと厚めの両面テープのようなもので貼り付けられている。ここは 裏から三叉のバネで押し、位置はロック側のネジで決めるところ。ミラーは経年変化による交換がありうる。よってズレが生じ にくいように全ての二眼レフが上側で位置を出し、下からは独特の三叉バネ(多くは上に抜けるのを防ぐリブ付)によって フローティングで止めている。それを接着とは何たる手抜きだ!



 ドライバーとハンマーで外した元ミラー



 厚めのモルトをボディー側に入れて何とか形にした。怒りながら作業したのでミラーを一枚切り出し損ねた・・・



 テイクレンズは80o、シャッターは好調なので清掃のみ。その他の作業は皮が全て浮き上がっていたので全て一度 はがして張り直し、欠けた所は適当に(写真では目立たない程度に)補充した。

 

 ごく普通の二眼レフに見える、しかし、前板が斜めに上がる。テイクレンズに遅れてビューが上がってくる(笑)これは 前板の繰出し部のズレと固定部の正確さの不足で起こる。修理は難しいし部品精度はどうにもならないのでパス。 ネームプレートのネジも馬鹿になっていたので接着で誤魔化した。シッャター清掃など定番的作業も同時に行った。












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☆RAEMOFLEX。一通りの清掃をしたのだが、大問題あり。繰出し部が壊れている。勾玉カムを駆動する軸が 完璧に固着していて、無理に廻したらしくノブが壊れて外せない。ロックネジを外しても共回りしてしまって緩められない。 仮にノブを外せても完全固着の軸が回るように治せる保障は無い。その他は正常だがこれは私には直せない。

 あまりの低レベルの障害にがっくり来て、途中の作業の写真も忘れたが、シャッターやファインダーの清掃などは 一通りしてある。フォーカシングできればその他は全て良いのだが、現状は無限遠(実際には10メートル前後)固定カメラ。

 と言うことで、六面写真のみ掲載。



 テイクレンズはVery Anastigmat「とても収差を修正したレンズ」かな、検索しても全くひっかからない。













 レンズ周りがバラバラだった。何と二重にセットネジ(イモネジ)で止めるという不思議な構造。これを直すのは手持ちに ぴったり合うイモネジが無いから無理。強度や性能に関係ないので、接着剤で一体化した。もちろん必要なら接着部は強く 捻れば外れる。二度と外す事は無いと思うが。

《試写》

 プレストにて実施。ただしRAEMOFLEXは無限遠固定だから数枚あれば十分と一本を二台で(巻き戻して)写した。従って 全く同一条件

「ELBOWFLEX」








「RAEMOFLEX」








 二台とも普通に写っている。描写はよく似ている。コントラストも特に問題ない。ピントの精度は全体に少し甘い。 密着では十分で、焼けば四つ切程度では問題ないだろう。どちらも三枚玉だが、アウトフォーカス部の暴れは少ない。

☆ELBOWFLEX

 典型的な四畳半的構造だ。ネジ類の質の悪さと直径の不足は明らかで、エンブレム固定用など片側が消えていて、 片側だけではいくら締めてもガタガタ、ウラブタ固定部は捻じ切れているし、ピントフード固定ネジは途中まで緩めても 固まって外れず、ペンチでやっと外す始末。ミラーの接着固定、前板の傾斜などありそうな欠点は全てある。

 ではそれで使えないかと言えば、試写の通り近接から無限までちゃんと出ているから面白い。ただし、近接では前ピン なので距離指標を見ながら修正、中距離は無限位置から手探りで前板をわずかに前進させる、ファインダーのルーペは質が悪くて よく見えないから使わないなど、撮影にはなかなか頭が必要だ。

☆RAEMOFLEX

 ピントグラスはどの範囲が写るかの確認だけなので、概ね10メートル以上離れた被写体のみ4カット写した。 意外に健闘している。これで前板が動けば実用できる感じだ。シャッターボタンなどが使い易く、赤窓運用なので特に 問題なく使えた。いずれも80oレンズなので、レンズを入れ替えればほとんど無調整でこのレンズの真価がわかるだろう。 そこまでして知る必要があるかは別として。



☆興味深いですね、楽しませていただきました>ひいらぎっこさん


Sept 2016


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