MINOLTA α7xi



『MINOLTA α7xi』(1991年発売)播磨屋市蔵さんから拝領。 

 ゼロタイムオートと呼ばれ、カメラを構えるだけでAF、AE、オートズームが瞬時に起動するフルオートカメラ。 最高シャッタースピードは1/8000秒。機械式カメラの”ほぼ”頂点だ。”ほぼ”は9Xiという最上級機が控えているから。

 この機種に限らず、フイルムカメラのαシリーズにはグリップ部の加水分解による崩壊と、廉価版ではペンタミラー部の 黄変という持病がある。グリップ部は表面だけでなく、内部機構を保護する機能もあるが、この通り中まで見えてくる 損傷(ベタツキからボロボロになって崩落)があり、他の機能が生きていてもとても使えない。ゴム系のグリップ素材は 空気中などの水分によって加水分解を起こし、ぬらぬら(ベタツキ)から全体の崩壊に進む。従って一定期間で張り替える のが必須だ。また、強度は劣化とともに落ちるので、粘着テープなどで貼り付け、交換部品が無くてもその部分のみ剥がせば 一先ず使える構造が望ましい。カメラからミノルタが撤退した今となっては空しい話だが。



 この個体は損傷が少ないと言うことで播磨屋さんが選んでくれたので、現状でも使えなくはないが、このままでは早晩 電池ボックス部をぶつけて痛んでしまう。補修して強化するしかない。

 補修には粘着性が強く、乾いたら十分固いゴム系素材で完全に覆い、これ以上の崩壊を防ぎ、欠けた部分を補う必要がある。 似た素材としてセメダインのシューズドクターNのブラックを使ってみた。靴底補修用だから固く、ある程度の整形も 可能なので今回の用途に合うだろう。どのくらいの耐久力があるかは未知数だが。



 補修後。テープを電池ボックス内側に張り、ざっと接着し、一日置いて肉盛りした後、グリップ全体に塗布、ある程度 乾燥したところで点状に接着剤を乗せ、半乾きの時に板で荒く押して凸凹がある表面に仕上げた。滑らかな表面にするのは 極めて難しいから、積極的に凹凸をつけて誤魔化した(笑)



 あまりきれいとは言えないが、強度的には電池ボックスの強化が出来た。凹凸のおかげで滑りにくく、撮影時には 全く問題なし。少なくとも「使える」



 本体側はAF-MF切り替えやレンズ交換ボタン、フラッシュのポップアップスイッチなどがあり、上部には電源と P(プログラム)モードスイッチ、右側にはシャッター、前後の機能切り替えダイアル、AEL、ファンクション切り替え ボタンやミノルタ独特のプログラムカードやセルフタイマーなどの機能部がカバー内にある。

 専用のXiレンズにはパワーズームなどの切り替えがある。とにかく機能が多すぎて書ききれないから、気になる方は 説明書をご覧いただきたい(まだ公開されている



 何はともあれ臨戦態勢になった。各機能は完全なので撮影の問題は無い。









 専用の Zoom Xi 28-105 1:3.5-4.5 (105o状態)

《試写》

 全く使ってこなかったジャンルなので、ネガカラー(富士業務用400)とモノクロ(プレスト)の両方で使ってみた。

ネガカラーでは全て何らかの意図があるテスト撮影に徹した。フイルムの感度落ちがあるので全てEI100設定で撮影



 明け方の漁港。絞り開放1/30秒で50o前後。ゆっくり動いている船は被写体ブレあり



 新東名の疾走中を流す。きちんと追尾して合焦。105o



 夜のコンビニ店頭。データ不明だが低速なのは間違いない。105oなので少し手ブレ



 雨の早朝で暗い。1/20秒開放手持ち、28o



105o、軽く追っている



 105o、無補正



 28o、曇りの工場内。開放・1/40秒



 50o前後


☆7Xiと専用レンズでは当時のミノルタが特徴とし、コンパクトカメラにまで採用された「ゼロタイムオート」と 適当に画角を決めるズーミングが併用されていて、カメラを向ければ勝手にピントを合わせるコンティニュアスAFが 動作する。設定でシャッター優先、絞り優先やマニュアル設定などに変更は出来るが、設定が面倒だ。 この解決のためか、ミノルタ独特の専用設定をワンタッチで行うために、データカードを入れる事ができる。

 今回はカードが無いし素の状態を知りたいので全てカメラ任せ、手動はズーミングだけにして使ってみた。

 慣れれば意外に素早く、ストレスは感じないが、ピント位置については前後にいろいろあると悩むようだ。簡易的には ダイアルで被写界深度の変更=シャッターと絞りの変更ができ、ファインダー内に目安のサインが出るが、表示は わかり易いとは言い難い。

 ズーミングもマニュアルフォーカスも電動で行う。ズームはまあまあ使えるがピント合わせはマニュアルでは極めて 使いにくい。止まっているものはともかく、スナップでは全く使い物にならない。

 大きい、重い。撮影中には手ブレが極めて少なく安定しているのはこの重さのおかげだ。400を入れればほとんどの 場面でこの焦点距離内ならぶれにくい。ただし、これを二台同時運用は機動的とはいえないだろう。

 ミノルタαシリーズはコニカと合併し、ソニーに身売りした後も一つのブランド名として使われ続けている。本機は 際もの的な機能が目立つが、レンズ性能が高く、もっと高く評価されて良いと感じる。

 ただし、ここまでの高評価を根本的に覆すのがグリップ部だ。この時代のこのタイプ共通だが、ベタツキ、崩壊してしまう。 プラスチックの加水分解が原因だが、痛み出したらとても使えない。これほど耐久性が低い素材を選んだのは何故だろうか。 α普及機ではこの他にファインダーの黄変があり、動いてもとても使う気にならなくなるという持病がある。これらの現象は 他メーカーの同時代の機種にも見られるから時代のアダ花か。ミノルタは他メーカーにも採用されたアキュートマット ファインダーなど、素晴しい技術力がある会社だが。

 多くの金属カメラは手入れさえすれば次の世紀にも動くだろうが、これら加水分解する外装を持つカメラはこのままでは あと数年でほとんどが使えなくなるだろう。ジャンク数十台に値がつかず1円だったとか、悲しいレポートさえある。 惜しい、あまりにも惜しい・・・



☆重い、わかりにくい、でも写る、「もったいない」ですね>播磨屋さん


Oct 2016


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