TARON 35V MX
タロンのV型、MXは機械式RFの典型的機種。H氏より亡き父のカメラを使ってみたいと掲示板で相談があり、引き受けた。
MXは過去に記事にしているはずだが、詳細が紛れたのであらためてこの記事を掲載する。
症状は、シャッター開閉とタイム不良、絞り汚れ、ヘリコイド固着、距離計不動など仕舞われていたカメラに良くある
症状が揃っている。先ずは距離計周りとファインダー清掃のため軍艦部を開く。
距離計はピンクのレンズとの連動部が動いていない、また黄色のミラー駆動部も固まっている。給油しても
なかなか改善しなかったが、何とか動くようになった。しかし、白のハーフミラーが不良で、二重像が良く見えない。
これは将来にハーフミラーが手に入った時に交換(手持ちはないので)とし、目測で使うこととした。
レンズは比較的きれいなのだが、ここで作業が止った。本来は捻れば簡単に外せる前玉が極端に周りが悪く、
矢印の花形リングがはずれない。ベースに全体的変形があるので、これが原因だろう。
止むを得ずシャッターは羽根の清掃と外からのベンジン流しを行ってみた。残念ながら1/30秒以下ではシャッターが
ガバナーが働いた後に閉じなくなる。しかし、高速側はきちんと動作するようになった。推測だが1/30以下では
シャッター動作完了のところで渋りがあるようだ。暗い所の撮影は無理だが、昼間使う速度はちゃんと出るから、
無理に追うのは止めた。
これは前玉のみ取り付けたところ。取り付けが極めて重く、外側のカバー部もスムーズにつかない。カバーや鏡筒が
少しずつ変形しているようだ。これはぶつけたのかもしれない。ヘリコイドの重さもそのせいだろう。感触として
グリスの硬化ではなく、ヘリコイドのネジ山同志のこすれあいだ。これはほとんどがヘリコイドリングの変形に由来し、
直すには規格のジグが必須だから無理。今となっては給油して、何度も動かすうちに削れて軽くなるのを待つしかない。
この状態にして後玉や絞りの清掃とヘリコイドの隙間に前後から給油した。動きが多少は軽くなった。
TARONAR 4.5cm f1.9
《試写》
アクロスにて実施
広い景色から逆光の近接まで全く問題ない。アクロスで薄曇に1/250秒固定で絞りで対処したからそれ程絞り込んではいない。
明るい場面で8-11、逆光では4-5.6で写している。非常に明快な印象を受けた。
☆タロンは地味だが特にレンズの印象が良い。ネガカラーでも素直な発色を示している。色バランスはモノクロにも
色を置き換えた濃度として影響する。今回のものも正統なタロンらしさを感じる結果になった。
残念ながら距離計が見えない。内部は整備してあるので、置き換えるハーフミラーが手に入ったら交換すれば
良いだろう。ただし、重いヘリコイドとシャッターの不安は付きまとうが、使っていればより良くなるだろう。
☆報告は以上です。何とかご愛用ください>Hさん
☆追加報告
オーナーのところに戻ったら動作不調。その頃たまたま行ったSコレクションのジャンク箱にまさにこの型のレンズバレルを
発見してもらってきた。調べてみるときちんと動きそうなので、これと乗せかえることになった。
仕様は全く同じに見えるので作業開始
距離計は整備することもあり取り外す
乗せかえでは巻上げ連動部などに梃子摺ったが何とか乗せられた。距離計は改めて清掃給油と調整で見えるように
なった。
この時代のカメラは全て組立時に調整で無限遠などを調整している。つまり一台ごとに違うので、これで終わりにはならない。
フィールドで遠い被写体に合わせて先ずヘリコイドで無限位置と3メートルを出す。これで指標を使って目測が可能になる。
次に距離計で無限と3メートルで合致するように合わせるのだが、距離計は完全な無限に一致しない。その手前で止るが
これは直せないが実質的な影響は無いのでそのままにした。
以下はラッキーSHD100によるピント確認テスト。距離計で問題なく使えるので良しとした。テストでは全て距離計で
合わせ、できるだけ絞りを開いてピント位置の確認、シャッター動作などを確かめた。動作が軽くなって別のカメラの
ように仕上がった。
May+June 2017