LE PHOTO-REVOLVER
クラウスはフランス・パリの会社だが、ドイツに兄弟会社がある(創業者はドイツ人)。19世紀後半に創業し、フランスで
唯一ツアイスのレンズをライセンス生産して急速に大きくなった。世界恐慌で不振になり、吸収合併されたが
、戦後までクラウス名の光学製品を作っている。
フォトレボルバーは1923年に作られ始めた。時代を反映して乾板とフイルムの両用とされたようだ。製品では
絞りと多段のシャッターのテッサー付が多い。無名で単速シャッターの当機は廉価版だろうが、ほとんど
資料が無く、詳細は不明だ。レアの中でも特に珍しいものであるのは間違いない。
これはSコレクションよりテストのために預かった。特殊(20×32o・実測)なフォーマットで、構造が面倒だから
何とかして写せという難題(笑)である。
下に見えるシースにフイルムを切って入れる。構造的にこのシースはフイルム用だが、同一構造で縁を厚くすれば
乾板ホルダーにもなるのがわかる。今回付属していたのは8枚、ただし一枚は錆が多いので7枚を使ってみることにした。
関門は二つ。「フイルムを切り出す」「正しく装填する」だ。全ての作業は完全暗黒で。
最初は長めの135フイルムを切り出して、手探りでゲージに当てて切るのを考えたが、全く使い物にならない。
試行錯誤の結果、ダンボールで作ったゲージに、フイルムをつめたパトローネを接着し、切り出すことにした。
これでもフイルムの押さえ方でいろいろの幅になってしまい、半分は失敗した。
この箱ごと大きいダークバッグに入れて、その中で手早く作業するのだが、フイルムが準備できてもシースを
セットするのに苦労した。
この状態で左側にシースを入れ、押さえながら次々に入れて、済んだら上の枠をスライドすれば固定される。
下側のレバーを引くと、撮影済みは右の収納部に掻き落され、次のシースが準備できる。
ちょうどボルトアクションライフルのような動作だ。カメラ名は形態や引き金型のシャッターレリーズからつけたのだろう。
でも「レボルバー・蓮根型・回転式」じゃない。上から押さえて弾を入れるところから、ボルトアクションとするのが
正しい。まあ訴求力で考えたのだろう。フランス流のエスプリかも知れないが。
このようにして切り出し、フイルム入りシースが揃ったら手探りで本体に詰めるのだが、これが最難関、フイルムを
直接押さえるしかなく、手袋をして作業はできないから最悪だ。全て詰めたらスライドを閉じ、レンズ部をこれもスライドで
セットしてやっと撮影体制になる。感度が低いフイルムで、安全光を使える暗室作業でやっとどうにかなるレベルだが、
固定シャッターと絞りだから、使えるフイルムは限られる。なんとも厄介な代物である。
《試写》
感度を現像でコントロールしやすいので、ラッキーのSHD100にて
最初のテストで何とか画像になった一枚。光漏れはスライドが動いてほぼ全滅した中で、かろうじて出ていた
何とか絵らしくなった
フイルムのエンドで、光が入っていた。カメラに責任なし
絞り直径と感度から逆算すると、1/100秒前後、絞りは8くらいと考えられる。
☆撮影時に次のフイルムのために掻き落す時は必ず水平にしないといけない。きれいに落ちないと引っかかってそこで
撮影不能になる。シャッターはエバセットで極めて音が小さく、手の感触もほとんど無い。これで高感度フイルムを
使い、レンズに良い物を入れてピントをゾーンで変えられればスパイカメラに使えただろう。
ごく小型でポケットに入れられ、さっと写せるカメラをその時代なりに工夫したのだろう。超小型なのに真鍮の
ずっしりした質感で本物感がある。受け狙いの一台ではない。乾板とフイルムの共用というある意味で自由度が
高い工夫が見られる。ライカが台頭し、時代が135カメラに大きくシフトして行く頃の手間暇を惜しまないマニア向け
という気がした。
☆何とかしました・笑>Sさん
June 2017