ZEISS IKOFLEX 1後期


 イコフレックスは数台目だが、これは初期に近いものだ。S氏の修理依頼で分解した。

 不調はシャッターで、低速がまったく出ない。バルブとタイムはちゃんと動くので、スロー ガバナーが動作していないという症状。



 典型的な旧コンパー、錆びてはいない。油切れとはいえこの状態でもガバナーがまったく動かないのは珍しい。 ガバナーのストッパーを解除して、強制的にまわそうとしたが動かないのでどこか引っかかっているか ギアの軸はずれだ。



 ギアの軸はずれは無いが軽い清掃と給油でも調速部が出てこない。何かゴミがギアに挟まっているようだ。

 やむを得ずガバナーを外す。作業は簡単だが、ガバナーは位置の設定が面倒だ。固定位置によっては速度が 大きくずれる。シャッター速度の測定器が必要で、しかも組んではテストするという面倒な調整が待っているから 安易に外すべきではない。 



 やっと回復。赤い部分がストッパーで、ここを押すと黄色の部分が飛び出すのが正しい。組み込むと シャッターセット時にこの部分が調速カムにぶつかり、その深さに応じて羽根の閉じ信号が遅延するので 規定の速度になる。ちなみに、中間速度もこの構造だから使えるのだが、カムの段を細かく設定するのは 難しいので便宜的に良く知られた速度の刻みになる。この構造はこのシャッターの特徴であり、 速度制御を何段かに分けるタイプでは中間スピードはあてにならない。



 

 ガバナーの固定ネジはセットリングのバネを引っ掛ける役割もある。単純だが面倒な作業を経て シャッターは回復した。



 ファインダーを開く。ミラーは年式の割りにきれいなので清掃のみ



 ピントグラスはしっかり固定されている。きちんと精度が管理されているようだ。



 トリオター75mm3.5 典型的な三枚玉でローライコードにも採用されている。





 フイルムのカウンターは独特で、入れたら底の赤窓で1を出し、矢印のレバーを押すとカウンターが 1に復帰する。ここからは自動ストップではないので、ブリラントなどと同様に窓に数字がきちんと 入ったら巻くのを止める。つまり赤窓を上で見やすくしているような構造だ。これで意外にきちんと コマ間隔は揃う。各部を清掃して作業完了。













《試写》

 アクロスにて実施。期限切れでちょっと粒が荒れている







 遠景・近景とも問題なし。三枚玉特有のぐるぐるもこの明るさではまったく問題にならなかった。 全て1/100秒で絞りで明るさに合わせた。現像結果は安定していたが、一部に光漏れがあった。周辺落ちは 多少あるが、このカメラが現役当時は密着焼付けか印画紙に合わせてトリミングしたので問題ない。 現状でも全画面のスクエアで使える。

☆非常にいろいろな種類があるイコフレックスの中で、トリオター付きは珍しい。本来は廉価版カメラに 多く採用されているが、決してレベルが低くは無い。ノバーなどにも共通するが、しっかりした合焦と 被写界深度の深さは非常に使いやすい。レバー式フォーカシングは一般的なノブをレバーに変えた だけだが、位置で距離を感じられるので良い。

 イコフレックスにはシャッターがファインダーを開け無いと押せず、半端に押しかけるとシャッターが 切れていないのに巻かない限りシャッターが押せなくなる謎のタイプがある。二重写しは防げるが、テスト するには不便で使いにくく整備しにくい。このカメラにはそのようなものは無く、かえって使いやすい。 ローライコードなどに慣れていればこれで十分だ。

☆当機は錆のためオーナーによって一部の鍍金が剥がされている。(前面のエッジ部)


☆三枚でもちゃんとしていますね>Sさん


Dec 2017


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