KODAK REFLEX U



 コダックの620二眼レフ、レフレックスU、620フイルム仕様のがっちりしたカメラ。

 これもS氏のもので、シャッターがまともに動作しないことなどから預かった。ワンレバーでシャッターをセットして レリーズする点ではローライコードの流れか。テイクとビューレンズをギアで直接繋ぎ、前玉回転でフォーカスする点は リコーフレックスに似ている。ただし、がっちりしたダイキャストで高級感がある。

 症状は単純だが、前玉を外すのに迷った。なんとイモネジが内側からヘリコイド部につながり固定している。しかも 4本止め。普通は120度配置の3本止めなのだが、4本は珍しい。トルクを合わせないと固定し難い。これを緩めることで 前玉は外せたのだが、中玉が緩まない。これが緩まないとシッャターにアクセスできないのだが、ゴム養生した ウォーターポンププライァーでも廻らない。これ以上力をかけると変形してヘリコイドが廻らなくなるので 外すのはあきらめた。

 レンズバレルを外して単体で処理しようと緩めた時、突然シャッターが動作した。なんとレバーが根元に挟まって いて、動きを妨げられているのがシッャター不作動の原因だった。ここを手探りで修正したらシッャターは何事も 無かったかのように動き出した。故障ではなくて誰かが間違って組んだのが主因だった。

 残る処理は「外から潤滑剤を入れる」だ。もちろんオイル類では無理なのでドライ潤滑を考える。幸いわずかに隙間が あるので、ここにボロン粉末をつけてブロアーで内部に吹き込んでみた。ドライ潤滑はオイルのような浸透性は無いから 軸受け部で隙間を埋めて金属同士の接触を避ける働きはないが、意外にすべりが良くなるし、外気温に関わらず一定の 摩擦軽減に役立つので、極低温でのオイル抜きでは便利な方法だ。数回行うと効果があり、全ての速度で滑らかに動作 するようになった。
(作業に没頭していて記録は写し忘れた)



 ファインダー周りも念のため分解。フレネルレンズも付けられていてきちんとした構造だ。試写では見え方が 良好で合わせやすかった。

《620フイルム》

 このカメラは120と似ているがそのままでは共用できない620フイルム仕様である。120フイルムを620のリールに 巻き換えるのは手間がかかり、かつ620のリールが2本必要になる。供給側は120のまま使えれば楽なので工夫 してみた。細軸の620の平面性が解決される利点もある。



 方法は単純。ニッパーか爪きりで120のつばの部分を深爪くらいに切り落とし、凸凹をヤスリで丸くする。これだけで 終わり。これでギリギリフイルムが装填できる。ただしきついので、留めを外して数回転分リーダーペーパーを引き出す。



 巻き取り側の620リールに巻き込む。この時にスムーズにするためにリーダー部を少し出した状態で巻き取りリールに 引っ掛けてからフイルムを所定の場所に入れる。



 スタートは底部の赤窓で1を出し、



 二つある小さいノブの下を廻すとスタートする。撮影後は上のノブを上に上げるとキャンセルするので巻上げられる。



 撮影後に120のリールのツバを滑らかにし、両端を薄く削ることで620のリールの代用になる。軸が太いので膜面のカールが 減るから平面性には良い。右から、620・120の改造・120のリール



 120改造リール。この通り巻上げ側でも使える。



 KODAK Anastar 80mm 3.5 ビューレンズも同じものがついている





 左側面にはシンクロターミナルと発光器を固定するネジと位置決めピン穴がある








 前玉下にあるレバーはシンクロ用。シャッターセット後、これを左に廻してからレリーズするとバルブ用の遅延が はかれる様だが、何も資料が無いので詳しい事は不明

《試写》

 コダックなのでT-Max400にて実施






 平面性なども含め問題なし。三枚目は太陽が画面外のすぐ上にあり、フードも使っていないがちゃんと出た。

☆620のカメラとは全く思えないがっしりしたもので、実にしっかりしたカメラだ。コダックのカメラは独特の構造で、 他のカメラでの経験は通用しないものが多いが、これも独特のレンズバレル周りの構造にその辺が見える。 再三書いているが、フイルムメーカーのカメラは写真がわかっている気がする。写した結果を最優先していると 思うのだ。安定したトーンときちんとしたピントがそのサイズのカメラに求められるレベルで備わっている。

 120仕様に改造して常用したくなる、そんなカメラ。


☆良いカメラです。ご愛用ください>Sさん

December 2017

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