Konishiroku PEARL
小西六のパールは昭和8年に生まれた69フォールディングカメラ。日本式に言うとスプリングカメラである。
ツアイスのイコンタを参考にして作られたと考えて良いだろう。人気が高い645のパール(TTRS U V Wなど)は
セミイコンタを範としながらも独特の工夫でヒットしたが、こちらはその元となった69バージョンだ。
当機は特徴から11年型(昭和11年モデル)と見られる。原始的な反射ファインダー、エバセットのギロチンタイプの
シャッターがいかにも古そうなカメラだ。ただし、シャッターの動きは良い。一通りの清掃などでしっかり作動している。
分解研究用で頂いたのだが、フレームファインダーが無いことと蛇腹のちょっとした傷以外はしっかりしている。
もったいないので欠けていた皮を張り、645用のファインダーを90度倒すことで69に合わせて簡易ファインダーとして
作成した。蛇腹はウレタンで軽く塗り、穴があるところはシッカロールで押さえながら内側からも塞いで見た。
このカメラはレンズやシャッターで価格を変えていて、一番高いのはヘキサノン+コンパーの組み合わせだった。
当機はオプターだから旭光学のOEMレンズの廉価版のようだ。シャッターは1/100秒までしかないApusという組み合わせ。
それでもシンクロターミナルはついている。後には外付けの距離計などが出ていたようだ。
蛇腹のタスキはツアイスのイコンタと同じ形式(アクセサリーシューは臨時の後付け)
目立たないところだが、レンズの繰出しは全群ヘリコイドだ。パール共通の美点
簡易露出表かと思ったら、レンズの被写界深度表だった
《試写》
古いプレストにて実施。一部に膜面剥がれが出たのでスポットしている。もちろんカメラに責任は無い。
露出など問題なし。頼りない感触のシャッターだがきちんと仕事をしている。
☆オプターにいかにも古めかしいシャッターで、画質はおまけくらいにしか考えていなかったのだが、予想以上に
健闘している。目測ながら400のフイルムなので1/100では絞り込んでいる。深度に不足は無くピントがしっかり
している。エバセットは手ブレし易いのだが、動いている車以外はぶれていない。正確なタイムだ。
ハーフである645・セミ版のパールに中心が移ったのはなぜか、69の半分でも十分使えると判断できるし、
使い易い大きさで二倍の枚数が撮れるセミに移行したのは自然の流れだ。当時のカメラユーザーだった母は、
バルダの69が大き過ぎ、叔父に頼んでゲルツのセミに変えたというから、この推測はありうると思う。
☆意外に実力ありです、驚きました>Sさん
January 2018