セコニック・スタジオデラックス 2014 改訂

 JFCの仲間から「スタジオデラックスの使い方」というテーマで質問された。

 そう言われてみれば、30年近く使っているがあまり考えたことがない。信頼して使っているので気にしていなかった というのが本音だ。この辺でまとめてみるのは自分にも良いと思ったので記事にしてみよう。

 露出決定方法を知らないカメラマンが増えるのは当然だ。今時のカメラではカメラが全てを行い、 ユーザーは露出決定にほとんど(あえて設定しない限り)参加しないのだから。



 左がL−28Cで右がL−398である。まったく同型に見えるが、指標の違いと中央のスイッチの形状や 機能が少し異なる。旧型の28Cはスイッチが固定できず、押したときには針が振れ、離せば止まる。新型は押して左に回す と離しても針が常に触れた状態になる。それ以外には大きな差はないし、感度も同じだ。(新型では指標の数値配列が異なる)


@露出を測る方法論

 露出を測るには光の強さを測るわけだが、ここでの考え方に二通りある。一つは反射光を測るもので、多くのスポットメー ターがこれにあたる。文字通り、物体に反射している光の強さを測定して露出を決定するものだ。長所は離れたところから 測れることと、細かく輝度を調べてより正確な値を得られることだ。ただし、この長所には同時に被写体の構成や 輝度に対する豊富な知識が必要である。明度や彩度による適正露光についての知識が必要になる。

 現代の多くのカメラは画面を細かく多数の点に分けて測る。コンパクトデジタルカメラなどは被写体の中から顔を探し出し、 その顔が適した輝度になるように露出を決めている。また、一眼レフではミノルタ・SRT101から始まった手法で、多くの 場所の輝度を測り、フイルム・受光素子のラティテュードを勘案して露出を決めている。ユーザーの設定または輝度などで 場面を分析し、ハイキー、ローキー、逆光補正などを行うのが普通になってきている。

 現代のデジタルカメラは望遠撮影や、接写、夜景に特に有効で、撮影レンズを通して測るTTL(Through the Lense)方式が画期的な露出方式であることは間違いない。反射光式として正しい値を出すという意味だが。


 対する入射光方式は、その場に入ってくる光の強さを調べる。基本的に被写体がどのような反射をしているかは関係ない。 その場に来ている光の強さを基準にして撮影する。どのように結果に反映するかはフイルムのラティテュード(再現できる 輝度の範囲)に依存する。したがって、被写体位置でカメラ方向に向けて測るのが最も望ましい。この時に示す値は、18 パーセントの反射率の被写体、つまり平均的な人間の皮膚の明るさが適正になるような値を示している。

 このような使い方が基本だから、スタジオでのモデルや物を撮るのに最も適している。「スタジオデラックス」という名前 はここから来ている。しかし、実は風景にも十分使える。その場に入ってくる光を測るということは、明るいものは 明るく、暗いものは暗く写るというごく当たり前を示している。カメラマンは自分が写そうとしている被写体の状況に応じて 修正すれば良いので、実際の撮影において不便なことは少ない。最近のフイルムのラティチュードの広さを考えれば、その 場の雰囲気を写すのに適した測り方ともいえよう。ただし、その修正については多少の経験が必要なのは言うまでも無い。

Aスタジオデラックスの構造と機能



 指標やボタンなどはほぼこのとおりだ。「−メモリ」とあるのは「−目盛り」と読み替えていただきたい。

《使い方》

 上部の白い半球が標準の受光窓。この他に付属する平面板は一方向の光だけ感じるので、入射光を方向別に見るときや、 照度形として使う時などに向いている。また、ルミグリッドという直読式のアタッチメントが存在し、反射光を測ることが できたのだが、これの性能は低く、スポットメーターやTTLとは比較にならないのでメリットは無い。



 ボタンを押せば針が動くが、注意ポイントは、「白い半球を被写体と同じ方向に向ける」である。光が来る方向ではなく、 被写体から見たカメラ方向に受光球を向ける。ヘッドが回転するのでこれを利用すると便利だ。自分の影が入らない ように注意することは言うまでも無い。



 標準で「HIGH」と書かれたスライドが付属している。高輝度ではこれを入れたまま使い、低輝度では抜く。 抜いたときにはスライドの紛失を避けるため、裏側のポケットに入れて置く。



 感度を設定し、針の外側の指標の数字を読んで、高輝度なら赤マーク(H)に、低輝度なら白マーク(L)に合わせる。 薄暗くてどちらのレンジを使うか迷う時は低輝度側にする。高輝度側は低照度に対する反応が弱いからだ。

 指標にあわせれば、絞りとシャッターの組み合わせがいろいろ並ぶ。それらから都合の良いものを選ぶ。


 一般的に、太陽に向けたときに、快晴の海辺などでは320−640(感度100設定でEV15前後)を示し、晴れで32 0(EV14前後)、曇りで80−160(EV12-13)程度を示していればまず間違いなく作動していると考えて良い。 ただし、室内などの低照度はあまりあてにならないので、日ごろのカンを動員して修正しなければならない。



 近寄れるものはその場所で測る。受光部は基本的にカメラに向ける。写真のピント面を意識したい。



 近寄れなくて暗い部分を調べたい場合は、受光部を陰にして測る。



近寄って測ったものとほぼ同じ値が得られる


Bアクセサリー



 オプションの直読用のスライド。現在もあるかどうか知らないが、ISO感度にあわせてこれを入れた場合、針が示した値 を直接絞り値として読み取れる。持っている人は少ないので詳しい説明は割愛する。私も持ってはいるが、ほとんど使った ことが無い。

C補正

 遠くの景色や影の中など、いろいろ補正が必要になる場合がある。昔は試し焼きなどで試行錯誤して覚えたが、現代なら もっと楽な方法がある。それは「まともな露出計つきデジタル一眼レフ」の示す値を調べて、自分の補正データを作ることだ。 いろいろ測って比較し、自分の補正値をつかむ作業はぜひやっておきたい。そうすれば、ほとんどの露出データに困ることは 無くなる。

 リバーサルフイルムの場合、この方法で露光し現像すると見た感じに近い結果になる。もちろん主な被写体が影の 中ならそれに合わせて補正するのだが、広い景色などはこの方法で露出を決めると自然なものになりやすい。

 逆光の被写体に対しては、手の影で受光球のいくらかを覆うと、補正データが楽に得られる。全部覆えば完全逆光のデータ だが、手が近すぎると間違いの元なので注意したい。目盛りの読みから+1-2絞りとしてもほとんど問題ない。



☆写さなくてもいつも露出計を持ち歩き、いろいろな被写体を測って見ると、自分のカンが磨ける。今時露出計を使って 写すのは「自分で決める」ためだ。経験とカンはその際に大きな助けになる。それが面倒ならカメラ任せにすべきで あえて露出計を持ち出す必要など無い。

《注意》

 この露出計のメーター部には強力な磁石が入っている。自動車のボンネットにくっつけたまましばらく走行し、紐に気づい て止まるまで落ちないほどだ。時代的に防磁処理はされていないので十分注意したい。また、多少の雨など平気なぐらい タフだが、受光球とスライドはロックが甘く落としやすいので、注意しよう。


December 2014 改訂


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