笑撃のチャイカU改造
峠月さんにお願いしてウクライナから直行してきたチャイカU、発泡スチロールにくるまれて飛んできた。
「完動美品」ということで、外観はロシア物としてはきれいだった。シャッターも快調にパシャパシャ来る。どの速度もそれらしい音がする・・・何とよく見たら開いたままだ。正確に言うと巻き上げると閉じ、シャッターを切ると開いたままになる。どの速度でも変わらない。
そこで当然分解と言うことになった。
平面展開シャッターは正常である。2のピンを動かすと羽根は軽く動く。これは巻き上げた時の状態だが、4のシャッターを押すと、1のレバーが下がり、羽根が開く。その後3のスローガバナーによってタイムを決め、シャッターとを閉じてこの状態になるはずである。
1がシャッター開閉アーム、2はスローガバナーのバネで、シャッターを押すと3のアームを叩き、アームは設定位置からガバナーを押してタイムを取る。その後4が開放されて周り、1が戻るので羽根がしまる構造だ。ところが4が廻らず羽根は開いたままというわけだ。ちなみに5が巻き上げによってチャージされる軸である。
どうも4がこのドライバーの先辺りに当っている。
原因判明。4(緑の部分)が黄色の下にあるネジの頭に当って廻れないのだ。
矢印の下のネジは正規のサイズではなく、明らかに頭が大きいものが無理やり入っている。これを外してみたところ、シャッターが直ってしまった。つまり間違った修理で使えなくなっていたのだ。思わず笑ってしまった。おそらく調子が悪くなったので分解し、直したつもりだったが直らないのでそのまま売りに出してしまったのだろうと思った。
黄色の輪の中にあるのがスローガバナー用のバネである。スローシャッターにするとこれがくるくる廻って面白い。この構造だとシャッター羽根戻しバネを強化し、ガバナーのバネを強くするとシャッター速度が全体に早くすることが出来る。もちろんそんなことをしたらシャッター羽根のピンが飛んでしまうのでご法度ではあるが。
これで良しと思って点検すると、巻き戻しがやけに軽い。内部を見ると巻き戻しの部分が廻っていない。要するに空回りしている。そこで下回りを分解したらびっくり。
巻き戻しノブは巻き戻し軸に差し込まれ、ピンで連動しているのだがこのピンが無い!
どんな力で引けばこうなるのかわからないが、巻き戻し軸に刺さっていたピンの足だけ残っている。その先は折れてどこかに消えている。
本来は巻き戻しノブを引き出すと、アームによって巻き上げのスプロケット解除ボタンを押して巻き戻しできる構造だが、ピンがとても刺しなおせる構造ではないので、強硬措置することにした。
巻き戻しノブはエポキシで固定、スプロケット解除ボタン(赤いボタン)を新設してみた。当然底板に穴を開けてしまったのでオリジナルではなくなったが、使えれば勝ちである。
出来上がり。ボタンのガードは精密ドライバーの根元にあるリングである。実際に操作してみたが特に問題なく使えるから大成功だろう・爆
《総括》
ロシアらしい完動品だった。このくらいで驚いていてはロシアカメラは使えない。笑って楽しむのがロシアカメラとのお付き合いの仕方だと思う。このレンズは素晴らしいので何はともあれインチキレストアに乾杯だ!
このカメラの作例はこちらにある。