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距離計の話

レストアの名人と言うだけでなく、物事に真摯に取り組まれるビッュカーさんのサイト名、Range Finder という名前は、「測距装置つき画角確認窓」という意味になろう。
左右の目のパララックス(視差)を脳が検出して距離を知るのを模して、二つの窓から入る光を合成して、同一画像のズレとして検出し、レンズの動きに連動させる装置である。(したがって、目測カメラはレンジファインダーとは論理的には呼べないが、形態が近く、簡易型ということで同一ジャンルとみなされている)

これが無い時代には、ピントグラスを持たないカメラは目測するか、メジャーで測るなどしかなかった。
その不便さを解消するために、組み込み単独距離計・連動距離計と進化したわけだが、何らかの都合で距離計を組み込まれないものも数多く存在した。安くするためと、被写界深度である程度解決できるからだ。
しかし、近接時や暗い場面では目測はなかなか難しい。それを解決するためのデバイスが「単体距離計」である。

《単体距離計》


これはロモのもの。80年代に新宿の中古カメラ屋で500円なり。



内部は基本どおり反射鏡とハーフミラーを組み合わせているが、珍しいことにハーフミラーを動かすことでピントを検出している。基線長(二つの画像を見る窓どうしの距離、長いほど小さな角度変化が検出できるから精度が高い)は50oでファインダーには倍率が掛かっていないからせいぜい100o程度のレンズまでが許容範囲か。しかし、実際にはこれでほとんどのレンズに問題なく使える。



これは見えにくくなったし元々使いにくいから飾りと言うことでDukeさんから頂いたドイツ製らしきもの。



右の大きいネジが左右、左は上下を修整するネジで、機能としては十分だが、曇っていてピントはほとんど見えない。



前のネジだけでは外れず、力技に出ようとした時にピンはカシメられてい無いことが判明、ニッパーではさんで引き抜いたら、この通り。



ガラスとプリズムを清掃したが二重像が薄いので、現像済みのフイルムのわずかに粒子がある部分を切って嵌めてみた。結果は上々でしっかり見える。目盛りがフィートなので蛇腹の外国カメラなどには便利だ。
これも倍率は掛かっていないし、基線長は40oなので長い玉には無理だが、目測の望遠レンズなど元々存在しないから、実用価値は十分ある。



これはいつから、どうして我が家にあるのか不明だが、少なくとも30年以上前から存在する。国産らしいが詳しいことはまったくわからない。縦型の上、ファインダーが極端に小さく、画像も薄いので実用性は無い。歴史的小道具と言うところか。

☆単体距離計はアクセサリーシューにつけて、ダイアルで二重像を合わせて目盛りの数値読み、レンズにセットするといういささかのんびりした使い方をする。このタイプがカメラに組み込まれたものも多く存在する。(パールTなど)当然ながら速写には不向きであり、あまり普及しないうちに以下の連動距離計組み込みが主流になったわけだ。

《連動距離計》



古いポラロイドカメラの連動距離計一式。非常に多くのパーツから構成されているのがわかる。基線長は55oで、127oのレンズに不足無い動作をする。



レンズボードの動きをレバーとカムで伝えて距離計窓で合わせる。まだファインダーとは一体になっていない時代の形式(バルナック・ライカなどが代表例)



コニカC35に組み込まれている連動距離計。基線長はごく短いが、目測でも仕える短いレンズ用なので問題ない。さすがに画角用のフレームが動く仕掛けは無いが、構造はきちんとしていて手抜きは無い。このタイプでは動くのは反射鏡である。その他として、リレーレンズが動くタイプもある。



二段になったレバーとカムでレンズの動きを伝えている。短い基線長のものは長いものよりわずかな角度変化を捉えなければならず、実は構造的に難しいのだ。したがって、これらのカムなどが磨耗したり動きが悪くなると距離が簡単に狂ってしまう。(動きが大きいものは精度が出しやすい、整備も簡単=グラフレックスなどのカラート距離計が好例)



この大きさで距離計連動まで組み込んだことは画期的だった。コンパクトタイプは目測が普通だったのだから。(ローライ35など)

《おまけ》


距離計ではなくズームするファインダーである。今時のコンパクトカメラの中に組み込まれている。



矢印のところがタケノコレンズと一緒に駆動されて画角を変える。まさにプラスチック細工。ファインダーは大体の画角を見るだけの道具になった。

☆レンジファインダーは、赤外線による測距(コンパクトカメラ)、画像のコントラストによる測距(一眼レフ)が主流になって、過去のデバイスではあるが、光学的・機械的な構造なのでメンテナンスが比較的簡単である。電池がなくとも動作するし、慣れれば素早く合わせられ、暗いところのスナップなどにはいまだに実用性が高い。古い方式=遅れている、というのは当たらない。



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