. Camera Restore

シャッターテスターの製作(モニター報告)

レストアしていて一番修理するのはシャッターだ。シャッターが動けば大体はレストア可能なので、当然だが、常に一つ問題と言うか、心配な点がある。それは「このシャッターは正確に動いているだろうか」と言う点だ。

今まではカンに頼ってきた。調子の良いシャッターで雰囲気をつかみ、それに近ければほぼ良しとしてきたが、できるものなら数値としてつかみたい。電子回路に強い先輩方は、フォトダイオードとパソコン利用の波形観察でタイムを割り出されているが、電気シロウトとしてはもっと使いやすく簡便なものは無いかと思っていた。

ビュッカーさんの掲示板にkinaさんのサイト、Nankaandeにシャッターテスター製作報告があった。拝見すると完成度が高い作品の詳細な報告があった。
この記事への感想に、「キットとして売っていただけないか」と書き込んでみたところ、kinaさんより「モニターとして作ってみないか」とお誘いがあった。ありがたいお話なのでお願いしてみた。



送っていただいたのはパーツと詳細な説明書だ。カウンターのみ手に入れろという指示で、カウンターを手配して製作に入った(実は、仕事都合と体調不良で一ヶ月以上開いてしまったのだが)

最初の作業は用意されたプリント基板の穴あけで、ボール盤では0.8ミリのドリルは絶対に無理なので、ひたすらピンバイスで開ける。これがなかなか大変だった。細いので力を入れにくく、なかなか正確な位置に開けにくい



指示書どおりICを配置して先ずはこれをハンダで固定する。何とも下手なハンダだが、大きい半田ごてとルーペ片手の作業なのでご容赦願いたい。



抵抗、コンデンサ、発振子、LEDなどもハンダ上げする。全てルーペでコードや容量・極性を確認して慎重に作業する必要がある。間違った時の用心に余ったリードはすぐに切らない。
ハンダのイモやテンプラが無いか、ブリッジしているところは無いか、電源を入れる前の点検は絶対に欠かせない。実体配線図と、回路図でしっかり確認した。幸い、間違いはなさそうだ。



上から見たところ。矢印のジャンパーを忘れると作動しない。ここの仕様は次のモデルで変更されているようで、kinaさんの掲載されているものとは微妙に配置が異なるが、基本はほぼ同じのようだ。



受光部は独立させることにした。計測する時に本体は別途で受光部のみカメラ内に残る方が、セッティングが楽だと考えたことと、カメラによってはウラブタを取り外すことになるので、固定の面倒を避けるためだ。

プローブに太い線は困るので、ジャンクボックスから昔のプリンターコードを見つけて分解した。これなら細くて色々な色が自由に使える。プリンターコードは露出計の再配線等で便利にしている隠れた逸材(笑)



バラック状態だが完成した。



通電テスト・・・・・・作動した!



ケースは冷蔵庫用の密閉容器を選んだ。プローブにはシリコンチューブを使うことにし、基盤は加工が簡単なのでベニヤ板にシリコン系のセメダインXで貼り付けた(いつでもはがせる)



組み込んだところ



電池ボックスは板の裏側に接着、電源スイッチも同様



光を当ててテスト中。カウンターが急速にカウントアップしているので、残像が写った。作動良好



まさにパッケージ、35mm仕様では全てこの中に納まり、保管に便利。ブローニーカメラではアタッチメントを追加するようにした



コニカトマトでテストしているところ。本体でウラブタを軽く押さえれば固定は簡単で、この状態でテストできる。懐中電灯だけでなく、白熱灯の光ならちゃんと反応するので、計測は簡単だ。

《使い方》

プローブをフイルムゲートの中心部にセンサーが来るように仮止めする
スイッチを入れる・0表示とLED点灯
LED消灯・計測準備完了
懐中電灯か白熱灯をレンズに照射
シャッターを切る
表示を写し取る

数秒ホールドされ、自動的にゼロに戻り、以下繰り返し計測できる

☆6桁で表示される。最低は0.1ミリセカンドなので99秒−1/1000秒は確実に計測できる。
☆エクセルにすぐ打ち込めるようにし、逆数で表示させれば一般的な速度表示ができる。

《まとめ》

1/1000秒が計測できるので性能に不足は無い。計測が簡単で使いやすい。PCやオシロ併用ではなく、数値で表示されるのでわかりやすい。電源が電池でコンパクトだから可搬性が高く、何時でもどこでも使える。

コンパクトカメラ(コニカ・トマト)の機械式単速シャッターでは、平均すればほぼ名目速度だったが、数値のバラツキが20パーセント以上あった。また、ブリラントのコンパーでは低めながらバラツキが極めて小さく、安定した作動であることがわかった。

まだテストしたものが少ないのであくまで推測だが、粘り気味のシャッターでは極端に数値がブレる。簡単な清掃ではなかなか満足な値にならず、これが結果の「当たり・外れ」として認識されているのではないか。汚れたシャッターは確実な清掃をしないと、カメラの評価に大きな影響を及ぼすだろう。きちんとしたレストアの必要性を再認識する試用結果であった。

《改良希望点》

これだけ完成度が高いと大きな提案は無い。提案するとすれば、まったく電子回路や回路図を読めない人でも、実写真に従って部品を配置し、注意事項を守ったハンダ付けのみで組み立てられれば完璧なキットと言えよう。もちろんケースとその中への配置の指示なども必要になろう。

私の場合は一応回路図・基盤と部品の対応、極性の判別はでき、作動原理もおぼろげながらわかるので、無事に対応できたが、まったく知らない人にはお手上げの点もあろうと思う。ただし、レストアする人でこれを作りたい場合は、ほとんどの方がある程度機械工作に慣れている。従って、商品化するので無い限り、そこまで面倒を見る必要は無いだろう。

) 当然と思えるミリセカンド表示だが、一般的にシャッター速度は分数で見ている。もちろん手計算で対応すれば良いのだが、できるものならこの分母を表示したい。
エクセルでそのように表示させるのは、数学とエクセルの関数がわかっていないと無理だろう。回路技術でそのようなことが可能か私にはまったくわからないので、これは単なる無いものねだりと解釈いただきたい。

《謝辞》

kinaさんには素晴らしい作品をご提供いただき、詳細なフォローまでいただけたことを感謝いたします。
掲示板を通じてこのチャンスをいただけたことを、ビュッカーさんに感謝いたします。

Jan 2007 kan



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