. Camera Restore

カメラケースの補修

皮で作られたケースは、保管方法にもよるが、概ね30−40年で糸の寿命に達する。一箇所ほつれたらほとんど全てが弱っていて、ひどい時にはバラバラになってしまう。



写真についていろいろ教えていただいている絵プロから、大量のジャンクカメラと共にミノルタ・オートコードのケースが届いた。

典型的な痛んだ二眼レフのケースの状態で、ほとんどの縫い目が弱っていて、半分は外れている。
前フラップはそれほど力がかからず、例え切れてもカメラを落とす心配が無いのでセメダインXの透明で先ずは仮接着した。この部分は裏打ちがなく、裏皮同士なので、接着剤が有効だ。仮止めのテープは塗装面がまだ強度がある場合に限る。弱っていると剥がれてしまうので注意が必要だ。



本体の方は片サイドがほとんど切れ、もう一方もとても当てに出来る状態ではないが、皮はまだ生きているので縫い付ける。

工業ミシンで掬い縫いされていて、横は糸目が見えるが前は断面から斜めに縫われている。太い針や糸は作業できないので、絹糸の二重で細い針を使って目を拾う。元々の糸が通された穴を頼りにするが、慣れないと大変だろう。針の先端が鋭いと引っかかるので、オイルストーンで丸くしておく。

☆穴位置を決してずらしてはいけない。どうしても通しにくい時は細めの目打ちで穴を広げる。力のかかるところは返し縫いすることが必要だ。糸のエンドは角にしないで、角から数センチ下に内部で縛り、そこから角まで縫ったらそのまま返して縫い進める。糸の通りが悪い時はロウを糸に刷り込むと良い。



使えなくなって放り出され、何かの下にあったらしく形が歪んでいたので、その部分の裏から水分を与えて柔らかくし、ティッシュと板で挟んで軽くプレスする。何回かティッシュを交換しながらプレスしたまま乾かし、その後陰干しして表面のみ艶と防水をかねてレザー用のオイルをつける。
この時点で皮用の塗料を塗れば新品同様になるが、本体とのマッチングがおかしくなるので、「使い込まれた美しさ」という視点で軽いオイルフィニッシュとした。



ほぼ完成図(実際は磨き上げ前)結局、全ての縫い目を補修縫いし、皮が弱っているところとほつれかかった端面はセメダインXで強化した。切れ掛かっているストラップを新品に換えれば、また10年は使えるだろう。



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