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超長巻フイルム・LUCHY SHD 100 new 1000ft

富士フイルムが、2007年3月で長巻フイルムの販売を中止した。それでなくとも絞られている銀塩フイルムの代表が、ネガカラーフイルムより高価な特殊素材として扱われだしたということだろう。
対策として在庫を冷凍保存で出来るだけ使えるようにしたが、コストとスペースでなかなか思い通りにはならない。せめて10年は自由に使える時間をもたせたい。そこに仲間のSCRさんから「ラッキー(中国製)の超長巻・1000フィートを買う」というお話があり、私も一本お願いした。



到着したのがこれ。比較に置いたのは普通の100フィート長巻とネガカラーだが、1000フィートはまったく別次元の大きさだ。映画館で扱うリールに巻かれたフイルムに等しい!



使用期限が一年以上あるから古いものでもないだろう。これはどう考えても普通のカメラ好きを対象にしたものではない。エッジには一切製品名やフイルムナンバーが書き込まれていないので、二次的に巻き替えて売る(アジアでは良く見られる、ヨーロッパではOEMとしていろいろある)というのも考えにくい。DPでフイルムナンバーが無いと非常にわかりにくい。
以上から、デジタル機器に押されて消えつつある銀塩映画の、黒白映画撮影用と考えた。一部は非常に進んでいる中国だが、格差の大きい内陸部では、コストでまだモノクロ映画もありえる?

これでコストは30フィート10本分の1/3程度(約14K)だから、人民元のレートの安さのおかげだろう。もちろん一本だけ個人輸入しようとしたら高いものにつく。売ってくれるかどうかは別として、運賃と関税、その他経費もあるから現実にはとても手が出なかっただろう。

巻き込みの方法がまた大変だ。全て暗室内の作業なので紹介できないが、平らにおいて100フィートの使用済みリールにひたすら巻く。質の悪いがさがさの遮光紙に入っていて、最初の一周は曲がりと傷があるから捨てた(MADAMさんの情報から処理)。100フィートを3本作るのに完全暗黒の中で1時間弱かかった。次からは直径が小さくなったので少しは楽だろう。早めに全て巻き込んで、冷凍したい(大きすぎて専用冷凍庫が無いと無理)が、何時のことやら。



ラッキーの特徴はベースが抜けることである。最近のフイルムはハレーション防止層があり、ベースにバイアスがかかっているので、昔ながらのラッキーはむしろ新鮮だ。ほぼ透明になるので、切れ端はフイルムカウンター用のアクリルパーツの代わりに使える(ロシアものカメラに実例あり)









[撮影条件]使用カメラは RICOH R1s、1−2枚目は本曇りで時に雨がぱらつくが、時々は太陽が覗く。3枚目は快晴で非常に光が強かった。現像はD-76(自家調合、ウナギタレ方式・感度100設定)
スキャン(MINOLTA Dimage Scan Multi U)時には全てオート任せで、スキャン後にフォトショップにてサイズを落とし、jpg30パーセント圧縮とした。デジタルスポッティングあり(ごくわずか)

予想よりずっと軟調で輝度分布が広く、解像は良好。過去のラッキーSHD100特有のハイライトにフレアが付きまとうのはこの撮影ではあまり出ず、三枚目の帽子部分のフレアーが唯一だった。非常に輝度差があったので、この表現なら使えると判断した。なお、3枚目はR1sのパノラマモード(遮光板は外してある)なので、画質については不問。

4枚目は1枚目とほぼ同じ場所で写したチャイカU+トライXによるもの。フイルムサイズが違うので一概には言えないが、輝度範囲はラッキーが広く、先鋭度はわずかにトライかと感じた。これらのフイルムは同時に同一タンクで現像しているので、現像時間はラッキーにやや長く、トライにやや少ないが、どちらも正常に引伸ばし・スキャンできる濃度であった。

☆ほぼ同時にテストしたMADAMさんたちとの検討で、感度は標準現像で200程度が良いという結論に達した。現像時間を控えれば100、押せば400設定でも使えるという巾があるものだ。
根拠は薄いが、ラッキーが100と400で出しているフイルムは同一のもので、現像条件で使い分けさせているのではないかという仮説を実感する結果だった。(まったくの憶測で、根拠は無い)

《結論》扱いは厄介だが、安くて良い買物だった。記録用途でもフレアが少なくなったので問題ない。感度200の標準フイルムとして立派に使える良いフイルムである。



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