. Camera Restore

携帯ガスストーブ

レストアの記録というより改造による機能不全の解消報告だ。ただし、カメラには全く関係ない。キャンプや登山などに使われる小型のガスストーブの話である。今の物づくりという観点で見れば面白いかもと取り上げてみた。

私は若い頃には登山をしていた。本格的な山登りに移行し始めた頃、椎間板ヘルニアで手術となり、激しい登山や水泳、バイクなどは医者に禁じられた。それでもバイクは捨てなかったが、本格登山はあきらめ、キャンプにハイキング程度と成り下がって今に到る。

登山でもキャンプでも大きな要素は食事で、焚き火ができなければ、また重量を制限したい時には灯油やガソリン系のストーブを使う。懐かしのホエーブス、スベア、オプチマス、プリマスなどが山用に、重いが操作性が良いコールマンはキャンプ用に使っている。

より簡単で軽量化を目指すとガスストーブと言うことになる。かつてはストーブヘッド(ランプヘッド)がとても高かったが、イワタニなどが比較的安いものを出し、手が届くようになった。そこへ韓国や中国の無茶苦茶安い物が出回り、一つ手に入れようかと買ってみた。



こんなタイプだ。本来は左側のキャンプ用ボンベを使う。しかし、家庭用のカセットガスが使えるなら、圧倒的に安く、中身はLPG=液化石油ガスではなく、より火力が強いブタンなのでわざわざ断らなくても低温時や高所でも使えるから経済的だ。
そんな痒い所に届くアタッチメントが三脚のような部品で、ストーブヘッドを捻じ込めば、カセットガスがあっさり使えるようになる優れものだ。

今回手に入れたものもそんなタイプだが、カセットガスを接続してもガスが来ない!



理由はすぐに判明した。青矢印はストーブヘッドで、このピンでボンベの中央を押してガスバルブを開き、ガス供給するのだが、赤矢印のアタッチメントのバルブ位置が低く、カセットのガスが流れないと言う症状だ。

返品交換の手続きは面倒だし、こういうアウトドアのものは家庭用と異なり、正確な規格や安全基準は実質的に存在しないから、自力更生と相成った。



アタッチメントのバルブはこんな構造で、下からバネで押されていてロックされる。取り去れば直結になるが、カセットガスをつけたままストーブヘッドを外すとガスがストレートに洩れてしまう。それは安全性で問題ありなので、押しピンの頭に径の合うネジを接着(シリコンゴム系接着剤にて)し、ネジ部は削り落として対処してみた。



成功した。外してもガス洩れはもちろんない。これなら地上での災害時やキャンプでは安いカセットガスが使える。(登山では本来のガスボンベで使えば軽く小さくなる)

このストーブは玩具のようだが、これでちゃんとお湯が沸かせるし、注意すれば料理もできる。高価な「高級」製品と大きな隔たりはない。精度や信頼性はまだまだと言う部分もあるが、圧倒的な価格差は「壊れたら次に替えれば良い」という使い方ができる。使えるから本物だ。

☆かつてアメリカに輸出された日本の車は、巨大なアメリカ車とぶつけられ、簡単に壊れるから危険だとされた。メイドインジャパンは「安かろう悪かろう」と揶揄された。それからほぼ半世紀でどう変化したかは、私があえて書くまでもなかろう。

既に液晶パネルの世界シェアなどでは新興国に大きく負け、その他の分野でも追い上げられている。日本はかつての米国の傲慢さを受け継いではならない。謙虚に現状を考察し、日本製品の大きな特徴、高性能・高信頼性とまねのできない新機軸でリードしようと努めなければ、イギリス病の国になってしまうだろう。時既に遅しの感もあるが、工業・生産に関わる方々の奮起を願うものだ。

(ストーブの話が、工業そのものの話になってしまった。カメラ業界の来し方にだぶるからだろう。カメラの場合、アメリカをドイツと見立てれば見事に符合する)

2010/09



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