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現場用デジタルカメラ


 カメラを記録の道具と見れば、フイルムかデジタル素子という記録部分と、それらを扱うボディー形式に大別される。 一眼レフとかレンジファインダー、ミラーレス(モニター式)などカメラ構造の別だ。用途で考えれば、仕事や家族、社会的 記録用途と、自己表現や芸術的用途に大別されるだろう。その他にカメラそのものを自己顕示の小道具として捉える用途も ある。銀座辺りでフイルムの入っていないライカを見せびらかす用途だが、それは私の関知しないジャンルなのでここでは 無視する。

 記録用を突き詰めると、汎用カメラ(形式はさまざま)と使用目的に特化したカメラ群がある。水中、測量、航空撮影、 医療や犯罪捜査や実験記録(顕微鏡・内視鏡・高速度撮影その他)などその分野専用に発達したカメラたちで、その分野 において必要とされる機能を徹底的に追及した非汎用の単能のカメラたちである。

 現場カメラとまとめられるものはその典型の一つだ。工事を正確に記録し、瑕疵の無い工事が行われた事を証明する 道具として一般カメラの流用から専用に特化した。この分野ではコニカの「現場監督シリーズ」と富士の「HDとその 子孫」が有名で、今もデジタルに置き換えられたがしっかりと一分野を築いている。(最近は防水タイプとして工事現場や 山や海辺などの苛酷な環境での撮影を兼ねるものが多い)

ーーー現場カメラはタフな実用品だーーー

 フイルムの現場カメラは既に第一線から姿を消し、デジタルタイプに置き換えられた。デジタル初期のものは100万画素 で画質も操作性も劣り、ウエブ掲載用の写真でもほとんど使えないが、200万画素機くらいからは今も実用に足る能力が ある。タフで簡単操作できちんと記録できるので中古も相当の人気がある。



 私はフイルムカメラ一辺倒と思われているがデジタルに対して偏見は無い。記録するのが銀塩の化学反応か光を感知して 電磁的に記録するかだけだ。接写が求められるレストアの記録と、孫を写すのは枚数と接写の容易さから基本的にデジタル を使う。特に高画素や特殊効果は求めないから、安い中古のコンデジ、コンパクトデジタルカメラを使っている。 液晶モニターは老眼で見えないし、両手を伸ばした写し方が大嫌いだから光学ファインダーが必須で、800- 1000ピクセル程度の絵があれば良い。求めるのはそこそこの画質とシャッターのタイムラグが少ないことだけだ。 ついでに防水であれば文句なし。つまり工事カメラがぴったりだ。


《KONICA DIGITAL現場監督 DG-2》



 フイルムの現場監督シリーズの外観をちょっと劣化させた面構え、必要以上にごついレンズ周りと、光学ファインダーの 小ささがそんな印象をつくるのだろう。200万画素と最低限使えるデータ量がある。



 上部はシャッターボタンの他に電源スイッチと枚数表示部とフラッシュ、画質の切り替えがある。それにアクセサリシュー と現場監督シリーズのお約束、名前入れスペースが用意されている。



 背面は液晶モニターとその切り替え、メニューと十字キーのみと簡素。どのボタンも重くて反応が悪い。



 メディアはCF、画素数が少ないからごく容量が少ないもので間に合う。電源は単三タイプ4本



 反対側はUSBとAC電源アダプターの端子

☆1000万画素以上が当たり前の現在のものから見れば、全ての操作が遅い。立ち上がってから一枚目が写せる状態まで 数秒かかり、AFが遅いので動体を写すのは極めて不便。フイルムのマニュアルカメラにも遠く及ばない。画質は ともかく、今の時点でスナップでの実用は無理だろう。

 ただし、8.8o2.8のレンズは短焦点かつ単焦点なのでしっかりした絵を作るからその点ではメリットがある。


《RICOH Caplio300G》



 非常に安かったのと使い勝手がよいので二台求めた。外観はちょっと古いフイルムのコンパクトカメラと言うところ。 軽く(310g/電池別)、水深1メートルまで潜れるから防水性は高い。300万画素で用途的に十分のデータ量だ。右の予備機は ネームシール類が取れていた。間抜けなので適当に私の手作りカメラ用のシールを貼ってある。



 上部には基本設定ダイヤルと電源スイッチとシャッターボタン以外は無い。標準的なアクセサリーシューはこの手の カメラらしくちゃんと装備している。(非連動)



 背面は一般的なコンデジと変わらないから操作に迷う事は少ない。液晶モニターは室内や接写以外には使いにくい。 輝度が高くないので明るいところは見えにくいし、手ぶれなどの確認には拡大して見ないとわからない。低倍率だが ズーム(換算で35-105o)するから一般的な撮影では重宝する。



 メディアはSD(2Gまで最高画質で1100カット程度)で電源は専用リチウム充電式と臨時用に単三タイプが使える



 USBと電源アダプター端子



 今回テストした二台とも底部のセンターに近いところに三脚穴がある。コンデジでは形だけついているものが多いが、 三脚固定などを考えた実用的配置で好もしい。

☆立ち上がりはDG-2と大差無いが、シャッターボタンの反応速度や数枚ながら連写が設定でき、操作性は格段に進化 している。スナップに実用的に使う事ができる。コンデジは200-300万画素機の頃に実用品に進化した。その時代のもの は今もきちんと使えるが、これもその一台と言える。音声は入らないが動画が写せたりシーンによる撮影モードが あるなどソフト機能が充実している。

《試写》

 両機ともそれぞれの最高画質で写し、取り込み後にサイズのみ変換した。色調整やシャープ化などは一切行っていない。 どちらもモード設定や露出補正などはしていない。

DG-2










Caplio300G











☆カプリオの1,4枚目はフラッシュが勝手に出ている。コンデジを使うほとんどの人が、フラッシュはオートに任せている のであえてそのままにした結果。

 色で評価するとコニカDG-2の彩度が高い。ヘキサノンの系譜を感じる。リコー300Gは露出が控え気味で色が渋い。現場の 記録で派手な色出しは必要ないと見ているのかもしれない。リコーのレンズらしいとも言える。

《現場監督 DG-2》

 上記の通りタイムラグが大きく、ボタン類の操作性が悪い。経年変化でゴム類が硬くなっているのも一因だろう。 近いところは良いが無限遠はちょっと甘い。得意距離は5m前後、工事で良く使うところだから納得できる。 よって一般的な人物スナップでも画質的には問題ない。シャッターのタイムラグが大きく、少し暗いとすぐにフラッシュが 出る。以上からスナップで常用はストレスが多いのでちょっとつらい。家のどこかに転がしておいて、非常用のバックアップ とするのが現在の持ち場か

《RICOH 300G》

 300万画素なので、最高画質でも2ギガのSDに1000カット以上写せる。節電モードにすれば相当枚数が写せ、シーン別の 撮影モードがあり、ズーミング可能なので多くの場面に適応できる。欲を言えばもう少し広角側が欲しい。撮影はライブ ビュー併用で、光学ファインダーはあまり使いやすくは無い。ピントが見えるわけではないから写る範囲がだいたい 押さえられる程度か。ただし、ライブビューはモニターが一昔前のものなので、明るい場所では確認はできない。オート フォーカスを信じてモニターは使わず写す、つまり一昔前のフイルムコンパクトカメラの使い方そのものが現実的だろう。

☆撮影後に質はともかく写っているか確認できる。このデジタル的特性が絶対確実に画像を残さねばならない現場では 大きなアドバンテージだ。フイルム時代と違ってこの点は頼もしいだろう。

 個人的には、撮影後にいろいろ改変できるデジタル処理を工事の記録として使うのは不安がある。最近の提出用は 撮影後の改変を防ぐ工夫がされているとのことだが、デジタル処理の改変防止に絶対はない。研究資料の改竄で問題に なっている昨今、フイルムでなくて良いのかなという気はする。スナップで使う私には関係ないことだが。



March 2014


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