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ROLLEI Supergrafhic-120 ATO 2.1(中間報告)



 ローライATO、オルソのフイルムだ。オルソとはモノクロフイルムの進化の中の中間的存在で、長波長には感ぜず、 短波長にのみ感度を持つ。昔のフイルムではこれを人物にも使っていたが、赤に感度が無いので顔が黒くなると言う 欠点がある。また、全般的に感度が低い。

 これを改良したのがパンクロ、パンクロマティックで、ほぼ全ての色に感じる(完全に人間の感度分布と同一とは 言えない)。昔のフイルムに「〜〜パン」という名前が付けられているのはパンクロを売りにしたからだ。

 さて、色感度に欠陥のあるオルソフイルムは消えたかと言うと、別の用途で生き残った。それがリスフイルムである。 線画の撮影やデュープ(ネガ・ポジ変換、ポジ・ポジ複製)に使われてきた。線画に色の問題は無いし、明快なコントラスト はむしろ好ましい。また、ネガになったモノクロフイルムには色が無いので、複製する時には撮影光がフイルム特性に 合うものを使えば問題ない。低感度の代わりに粒状製が良い物が多いので使われ続けた。もちろんリスフイルム全てが オルソとは限らないが、本来が線画用で普通撮影に向かないというのは変わらない。

 最近ではたとえフイルムでも、デジタルスキャンによりデジタル化され、複製も加工も容易なのでリスフイルムは 過去のものになっている。リスフイルムの印刷用など実質的用途はほぼ終わった。

 しかし、モノクロではリスの低感度とハイコントラストを利用して楽しむというジャンルがある。普通なら平凡な 光景も、ハイコントラストで象徴的に整理できて、結果として印象的になるのを楽しむのだ。このフイルムはそのような 意図で売られていた。もちろんローライにはフイルム製造能力が無い。製造元はアグファだ。



 さて、これをどう使うかだがなかなか悩ましい。リス現像で線画的ハイコントラスト、普通現像で戦前的オルソ写真、 超軟調現像(場合によってはフィルター併用)で全体のトーンを出すなど遊び方はいろいろだ。

 いろいろ考えて、軟調現像は捨てた。「普通」の微粒子なら珍しくは無い。珍しいフイルムだから珍しいトーンが好もしい。 スキャンはハイライト基準にて。ラティテュードが極めて低いので、トーンカーブで感度が無い上下は切った。

@ということで、一本目はスーパーセミイコンタに詰め、オルソフイルムの雰囲気を追求してみた。設定感度はまったく データが無いのでISO25にした。露出の参考に露出計(ルナ6V・入射光、反射光兼用)併用。逆光狙いのハイライト 基準にて撮影し、SPDの低温現像(13℃)で多少の軟調を期した。







☆イコンタのテッサーの絞りに応じてピント感が変わる点がはっきり出た。入射光で測って写すと、暗いところは数段 暗くなる感じだ。ネガはきわめて薄く、後のスポッティングを考えると、引伸ばしではやる気にならない。わずかの スクラッチなどが出てしまう。象徴的な写し方には使えるが、もう一段は露出をかけたい。ただし、富士山については 雪の反射を生かせばどんなフイルムでもこの感じに近くなる。平均測光的にすると雪のトーンが飛ぶ。引き伸ばしでは 散光式を使い、(スキャンでも)焼き落しが必要だろう。


A次に試したのはFUJICA 645 Wideだ。現代レンズだから絞り開放でもそこそこ出ると期待した。イコンタの教訓から より露出を掛けるように努めた。EI12に設定、現像時間は押してみた。







☆逆光ばかりで評価しにくいが、中間が大分出るようになった。現代レンズだけに開放(と言っても5.6だが)でもきちんと でる。ただ、最低でも開放値は2.8は欲しい。EI 12 に設定だと非常に明るい海辺順光でも1/125秒で5.6から8、普通の順光で は4以上必要なので、手ブレを防ぐ意味で2.8は欲しい。2枚目は暗部にわずかにトーンが残っていたので、明るめにした。 露出不足なのでコントラストを高めている。引き伸ばしだと3号相等に覆い焼きが必須だろう。


B三本目はパールVを使ってみた。オルソフイルムからパンクロに変わる時代のものだから良いのではと期待した。ここまで の感じで現像は相当に押すべしと思い、SPD13.5℃、ほぼ無攪拌で20分(いつもはアクロスで17分、プレストで16分 程度で処理している)だがまだ足りないカットもあった。







☆一枚目は背中からの光で芝生の明るさが十分ある。これだとほぼ普通のトーンになった。二枚目は完全逆光だが、スタデラ で測定した順光より4段近く開いたら何とか出た。三枚目は屋根下で光の強弱が強いところだが、ハイライト基準にしたら 少しでも暗いところは完全に潰れた。こういうものはハイライトが飛ぶのは覚悟して開けるしか無い。


《まとめ》

 たった3本で語るのはデータ不足かもしれないが、それ程多用するものではないので、ここまでの私的な感想を述べよう。 諸氏の参考になるかならないかはなはだ怪しいのは御容赦を。以下の総括はリスらしく使うと言う前提である。軟調で 一般フイルムに近づける意図は無い。それなら普通のフイルムの方が粒状性以外は全て勝り、120だとその粒状性も問題に なら無いから、リスがリスらしくなければ意味が無い。せいぜい露出などで極端すぎるのを避けるだけだ。

A. とにかく光を与えよ。ハイライトは膜面が薄いのである程度以上の濃度にはなりにくい。白とび覚悟で入射光で測った 値を使うのがコツか。反射光ではスポットではなく平均測光が望ましい。それでも逆光は3段は開くべし。現像は軟調を 狙うなら一般フイルムの2倍程度が必要と推定。ただし、現像を押しても”無い光は出ない”

B. 手持ちでは開放を多用せざるを得ないので、必然的に深度が浅い上に収差でボケっぽく、順光でも戦前、戦中の雰囲気 がある。逆光はよほど絞りを開けない限り日陰がドンと落ち、象徴的な雰囲気になる。モノクロらしいとも言え、画面整理は 楽だがほとんど素抜けのダーケストはホコリが盛大に目立つ。レタッチは必須。

C. 人物はここまでほとんど写していないので何も言えない。オルソだから顔色が黒っぽくなるのは間違いないだろう。 撮影したらここに追加する予定。


January 2015


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