. Camera Restore

改造軍用リリー>

 先日ツアイスの改造プレートカメラを報告したところ、pettanconさんから下記の投稿があった。

《この紹介が載った直後、「家にもこんな改造カメラが有ったな。」と思い、探したのですが見つけられませんでした。 昨日、荷崩れを起こしかけたカメラの山を整理、と言うか、積み直していたら、下から新聞紙に包まれたそれが出てきました。 数日中に、写真をメールします。誰が頑張ったのか判りませんが、殆んど原型をとどめていない執念の改造を見てやってください。」》


 早速送っていただいた写真と説明を報告する。なお、並んでいる写真は左がオリジナル、右が改造版



ベッド上の金属板が特徴ある軍用リリーと同じものである事がわかります。



ベッドの下を膨らませた事がわかります。準望遠系のレンズを付けたまま畳め、ボディーシャッターのからくりを 設置する為の改造だと考えます。



連動距離計の作動部分です。実にしっかりした部品と工作です。距離計自体は、無限遠から90cm位まで測れますが、 ピント面を見てみると無限遠〜2m位まででしょうか。2m以内だと誤差が大きくて実用になりません。

またこのカメラは、8x10.5cm(手札)ですが、120用6x9ロールフィルムホルダーが付属していました。このホルダーは、 ハンザの大名刺判用の改造品で、その構造上、実際のピント面より2mm近く後方にフィルムが来ます。 どうもこの距離計は、それに合わせている可能性が有ります。







交換レンズの固定用バーや削りだしの鳥居とその基部(シャッター連動部品内蔵)は、とても素人の作った部品ではなさそうです。



ボディーシャッターのボタンを押し下げるとベッド左側のレールにそって設置された板状の部品が右側に倒れます。すると鳥居の 根元から突き出している真鍮棒を押す形になります。右(画面によっては下)が作動後の状態です。 真鍮棒が押し込まれるとシャッターレバーの根元にある金属プレートが左に動き、シャッターが切れます。



ボディシャッターのボタンが写っています。位置はベッドの下側に膨らませた部分のボディ側で、左手をベッドに添えて、 左の親指で押し下げると切りやすいです。



グリップとそれに付けられたシューです。



中央寄りがビューファインダー、右側が距離計用ファインダー。どちらも押し込んでコンパクトにでき、また視度調整も 兼ねています。ただビューファインダーは、ふたまわり以上広い視野です。



正面から。





斜め上から。グリップが前側に突き出していて、持ちやすく安定します。

☆形状からいって、距離計を上にした横倒し状態で使った方がスムースに使えます。

 戦後すぐの頃の改造品かと思いますが、当時、人件費が安かった事は事実ですが、それでもこれほど手を掛けたら 相当な金額になったと思われます。
 米軍関係者横流しのスピグラが、闇市場で高額に売買されていたそうですが、初期の頃は半端な金額ではなく新聞社や 成金位しか買えなかったとも聞いています。

 手持ちのカメラを、何とかそれに近い性能にしたいと頑張ったのだと思いますが、どんな人が高額な改造費用を払い、 何を撮る為に使用したのでしょうか?今となっては調べようも有りませんが、大変興味がわきます。

 現状は、距離計のアーム部分の一部が蛇腹と触れる為に、その部分の蛇腹に穴あきが有り、ホルダーのスライドの欠品 ・ホルダー取り付け部の遮光布の抜け落ち等で、すぐには使用できない状態ですが、 時間を作って修理をしてみようと思います。



○これだけ手の込んだ加工は専門業者によるのは間違いないだろう。執念か、必要があったのかは定かではないが、 実に興味深い。近いうちお借りして試写して報告の予定


July 2017


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