. Camera Restore

フォーカルプレーン幕交換

 今まで35o一眼レフについてはほとんど記事を出してこなかった。実用品としか見られず、メーカーが対応する限り 触らないと決めているので報告事項があまりない。ただし、全くやっていないかというと、意外とそうでもない。

 今回のテーマはゴム引き絹幕の交換。ただし、練習と作業方法研究のため、ジャンクを選んだ。



 患者はペンタックスS2、部品不足とペンタプリズム腐食で使えない。シャッターは幕が伸びて歪み、使い物に ならないので、これを研究することにした。前板を外し、ミラーボックスも外す。



 ミラーボックス部は緑の印、上2本、下から2本のネジで止っている。シャッターはミラーからの信号でスタートするので、 この状態ではシャッター(黄)を押したままレバー(ピンク)を払うと起動する。



 外した後幕。伸びた部分と凸凹の癖、全体として硬化している。これでは周りに干渉して動き難い。外したものはちょっと 引くと簡単にちぎれた。ペンタックスは独立したリボンは使わず、幕の一部をそのままリボンにしている。 強度的には劣るが加工性が良く、巻きついた時に薄くなるので、硬化しない限り動きは良い。



 今回はテストなので暗室用の遮光幕を利用した。本来のものよりちょっと厚いが、機能的には問題ない。大型シャッターの 幕交換は今までもこれで行ってきた。強度は相当ある。



 切り出したシッャター幕。後幕の方が少し長い。これはシャッターを切った位置でアパーチャーに晒されるので、 一番傷み易い。先幕は巻かれた状態なので晒される時間が短く、痛みが少ないのが通例だ。



 右が先幕、左が後幕、シンクロ速度以上ではこの状態で走る。このスリットをきれいに作れないと上下左右での露出差が 発生する。スリット形成と幕の形を保つために竿をつけている。アルミ缶の黒い印刷があるものを利用した。光るものだと エナメルなどで塗装する必要があるから、この方法は手間要らずだ。



 後幕の取り付け。この方法は間違いで、先ずは竿を正しい位置に決め、幕を軸に固定してからリボンを固定する。 後幕は右に見えている二本のローラーとその奥の細いローラーを通すので、薄い紙を差し込んでそれにリボンを軽く接着し、 紙をガイドに引き出して固定する。この時、ローラーはテンションが抜けているので接着時に回転してずれ易い。これは 厚紙などでローラーの回転を規制して行うと良い。(後で気がついたので少し斜めになってしまった)固定したら 後幕だけできちんと走行するのを確認する。この時にローラーのテンションを仮に設定する。



 先幕も固定した状態。テストなので少し斜めになっているのを直していないが、完全な平行を保たないとスリットの形成が 不十分になり、上下の違いが出る。先幕はリボン側の位置を優先して設定するべし。

 この状態で走行テストすると一応シャッターとして機能するようになった。一応というのは「均一でない」から。巻きあげた 時点で竿が重なりすぎかつ平行度が悪いのでまだ実用レベルではない。実用なら先幕を外して正しい位置に固定し直しが必要だ。 また、スリットの幅が問題で、光が漏れないぎりぎりに設定しないと高速が使えなくなる。古いシャッターを外す前にどの 程度のスリット配置かをしっかり確認するのが大事だろう。(この間隔は幕を固定した時に決まり、以後の調整は一切できない から幕の位置がもっとも大事と留意すること)シンクロ速度以下は幕が走行すれば幕の責任はなく、規制するスローガバナーが どのように動くかで決まる。

《おまけ、ミラーボックス》





 ペンタックスが先鞭をつけたクイックリターンミラー。基本は指で押しているレバーを動かすとアップ、離すとダウン するかを見る。油切れだと戻りが悪く、ミラーアップのまま止ってしまうことがある。ここまで分解すれば他に影響しないから しっかり給油して単体で軽く動くようにすると良い。なお、ガバナーは単体でこの下に組み込まれている。これも外して しっかり給油すると低速がきちんと動くようになる。



 完成。この時点でシャッターボタン周りにもトラブルがあると判明。このカメラは部品取りとして保管されることとなった。


☆あくまで個人のデータなので、実施は自己責任にてされたい。


Apr 2017


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