第二東名高速道路 前編

《第二東名高速道路》



飽和状態にある東名高速道路と平行し、より高度の規格の自動車専用道路として建設中。
正式名は『高速自動車国道第二東海自動車道横浜名古屋線』と呼ぶそうだ。


この取材のことの起こりは、「先生、第二東名っていつ使えるようになるの」という生徒の一人の言葉がきっかけだ。
 そう言えば、ずいぶん前から着手され、用地買収が進んでいるようだ。工事も愛鷹山の裾に新幹線より大きな橋脚が遠望できるから、進んでいるらしい。しかし、国政の場では小泉改革で建設凍結などという声も聞かれる。一体今、どうなっているのか、想像で語りたくないのでこの目で見ようということになった。





仕事場から数百メートル北の場所。元々荒地ではない。ごく普通の家が点在する地域だったのだが、橋脚のマウンドらしきものしか見当たらない。



そこから200メートル先にこれがあった。アンダーコンストラクション・工事は続いているらしい。



元は友人の茶畑だった。ここで野良仕事する彼と良く話をしたものだ。改良品種、新品種をいち早く取り入れてがんばっていた。今は荒地になっている。



通過予定地にはこの看板が立っている。つまりまもなくこの茶畑も消えるということだ。



今はどうなっているのだろう。愛鷹山のすそに見えている橋脚を頼りに、中里地区に足を運んだ。



東名高速道路(旧)の下を抜けると、巨大な建造物が見えてくる。



近寄るにつれ、その巨大さがわかる。私がかつて愛鷹山登山の出発点とした、根方街道の中里の少し上、大棚の滝に至る道の途中、昔はみかん畑があった辺りに巨大な橋脚が並んでいる。
途中にある工事用道路伝いに、写真を撮り続けた。



須津川をまたいてゆく橋脚は向かいの峰の上まで伸び、50メートル以上の高さがある。



工事道路沿いに工事事務所がある。その側面には地元の小学生の作品が掲げられていた。建設促進を願う言葉がそこにあった。



いくつもの峰を削り、谷をまたぎ、橋脚は一直線に伸びる。工事道路をくねくね行くたびにその姿が変わる。



マウンドの下の土留めの擁壁の上には大きなひび割れがあった。まるでこの工事の行く末を暗示しているかのようで、気分が重くなった。



工事道路を進むと、やっと橋のある場所に出会った。ここでは盛んに仕上げ工事が進んでいる。



橋をかけている現場を隣の急斜面から撮影、私が立っている場所もまもなく切り開かれてここにつながるようだ。

そう言えば、西富士道路の先でも工事か続いていると思い出し、そちらに取材に向かった。



こちらにはあまり動きが無い。全体としてみれば、工事が続いているのかそれとも滞っているのか良くわからない。動きの無い現場で見ていると、ストーンヘンジか墓標のようにも見えてしまう。少なくとも今動いている感じに乏しい。


これは直接聞くのが一番と、道路公団の静岡建設局のホームページから、工事の進捗状況と、開通見通しなどをメールで質問した。
公団から即日電話が入った。当初見通しは平成19年開通だが、諸般の事情(政治的な道路行政見直しや道路公団存続問題と推測するが、もちろん立場上コメントできないとのこと)により、予算が限定され、毎年の予算が予定の半分以下なので、現状では開通見通しはなんとも言えない。静岡工区については、98%用地買収が済み、建設は順調だとのこと。
現場が、政治について意見を言えないのは良くわかるので、すばやい応答に感謝して電話を置いた。

−−−近日工事見学会があるというので申し込んでみた。−−−

《第二東名高速道路・工事見学会》



富士駅集合。何とバス12台を連ねる大見学会、見学者は600名近いということになる。もちろんその中には「お父さんの仕事場を見る」工事関係者の家族が含まれていたようだが、それにしてもすごい。希望者はすべて受け入れたとのこと、一般に理解を深めたいという公団の意欲がわかる。



富士川(フジカワ)に架かるアーチ橋、完成間近だ。近くに寄ると、265メートルの長大な橋が迫ってくる。この構造では日本一長いそうだ。



東側の基部と下から見たアーチ型の部分。50メートルを越える高さで工事が進行している。この現場はそこに至る道が無く、岩本山を越える道を専用に作ってある。スケールの大きい工事だ。


まさに工事中だ。上を見ていると首が痛くなるほど高い。



工事用に架設の吊橋がある。4階くらいの高さまで登って対岸に渡る。



吊橋からは見晴らし抜群で、これほど長い吊橋はこのあたりには無い。出来たら工事完了後も残して欲しい。けっこう貴重な観光資源になると思うのだがどうだろうか。



対岸にて。行く先々で公団や工事関係者の丁重な出迎えがあり、無料見学者としては申し訳ない感じだ。子供たちにはポラロイドの記念写真まで写してくれていた。私も写されてしまった。写すのは得意だが、写されるのはなんとも照れくさいものだ。
見ているのはこの見学会の案内をしてくれた道路公団職員諸氏。



バスの中でも、ビデオで第二東名の効用についてのレクチャーだった。



芝川のトンネルを見学して食事。それにしても、深い山の中をトンネルと高架で一気に抜けてゆく工事のスケールには驚いた。建設用に工事トンネルも掘る大掛かりなもので、目立たないところの工事が意外に大変だとわかる。



芝川町側のトンネルにて。トンネルのスケールは大きい。私たちが乗るバスが、切り返し一回でUターンできるほどだ。トンネル内でも工事についての丁寧な説明があった。



約600mのトンネルを歩いて富士市鷹岡側に出る。



向かい側には見慣れた風景が逆向きに広がっていた。晴れていればこの正面左側に富士山が見える。この日は曇っていた(この夏には富士山はほとんど姿を見せていない)



プロの広報班が見学会の様子をビデオ撮りしていた。



出口でいろいろな作業用の特殊車両が展示されていた。そのうちの高所作業車に乗ってみた。



わずか5メートルでも視界が広がる。この子の目には、この景色がどう写っていたのだろうか。



見学会はこれにて終了、公団職員のお見送りを受けて現場を去った。



もらったパンフレットと種々のお土産・・・


現状での私なりの結論


この道路は作るべきである。理由は、東名高速道路が既に飽和していること、日本の大動脈を補完する道は絶対に必要なこと、国家セキュリティという観点で見ると、静岡県の由比付近に主要幹線が集中しているので、災害やテロに弱いことなどが主な判断根拠だ。
 もちろん、道路建設と道路公団を巡る様々な論議は重要である。自然保護に対する配慮も当然だ。しかし、こと静岡県においては、県外車の通過が極めて多く、通過して行く車を捌ききれずに難儀しているのだ。第二東名に反対する人は、現在の東名高速道路を走らないで欲しい。
 これは感情論かもしれないが、公共の福祉のために、大切に育てていた畑を売った人たちに、”中止します”は聞こえない。

 匿名と言う事で現場の何人かと話をした。政治家の思惑とは異なり、現場は純粋に難しい工事をやり遂げ、みんなに利用されたいと願っていた。本当の建設サイトには政治など無縁、むしろ迷惑千万と聞いた。
 物作りの本能かもしれないが、私も造ることが好きなので、彼らの気持ちが良くわかる。せっかく作っても利用されていない道とは違うのだから。

 高速道路料金が世界一高いなどについての論議は、建設とは無関係だ。国家として必要なら作るのが当然だ。建設費の財源を何に求めるか、料金をどうするかなどは政治の仕事だ。高福祉高負担で料金無しにするか、受益者負担で高料金にするかは、国民投票でもして選ばせればよい。少なくとも無能な総理大臣をめぐる政争の道具にすのはやめていただきたい。冗費削減なら国会議員の人数や歳費を減らしたり、既得権益を守るのしか興味の無い役人を減らすことから始めよ。



《写真屋としてのおまけ》

 今回の取材は写真を写すことも目的の一部だった。そのほとんどはここに掲載したが、使わなかったカットは膨大なので、ここに一部追加しておく。

クリックすると重いのでご注意を










2003 6-9月撮影《使用機器》

モノクロ=45クラウングラフィック・ミノルタオートコード・ベビーローライ・ニコンF
カラー=ペンタックスMV-1・オリンパスペンD・メオプタフレクサレット

そして後編に続く

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