MINOLTAFLEX UB

山の中の日曜日だけ開く骨董屋で発見した。最近この店はカメラが異様に高く、「見てるだけ」だったのだが、これは外観がぼろいので安かった。買ったと言うより救出したと言うのが正しいだろう。



前からはそれほどでもないが、後はこの状態、カビで皮が見えないほどだ。
「エタノール、除菌剤・塩化ベンザルコニウム入り不織布」、早く言えばウエットティッシュ(笑)で何度も拭いて見た。結果はカビのほとんどが取れたが皮の表面も傷んだので、水性ウレタン塗料を塗って、ボロ布で拭き上げた。こうすると痛んで凸凹のところだけ艶が乗り、全体としてきれいになる。同時に表面の強化にもなるのでお勧めだ。



「チヨコ」



たまたま付属していたレンズキャップは簡素なつくりだが、十分に役目を果たす良い作りの物で、四畳半的カメラではないことを如実に示している。このキャップをお手本になったローライコードU型に当てて見ると、サイズ的にはぴったりだが、わずか1ミリほどテイクとビューの間隔が異なり使えない。コピーと言っても独自に設計されている。

このカメラの作られた昭和20−30年代には、ミノルタはブランド名で、社名は「千代田光学」だった。略称は「Chiyoko」である。35年ほど前にオートコードを手に入れた時に、「この会社の社長は千代子なのかな?」と思った。今考えるとお馬鹿であった(反省)



レンズはロッコール75o3.5で、初期型とは異なる。見た感じはオートコードのものに似ているが、コーティングは明らかに異なり、薄い感じがする。おそらくシングルコートだ。
シャッターはS-KONAN RAPID 1-1/500だが、倍数系列ではなくて、1−2−5−10−25-50-100-250-500という構成だ。100と250の間が飛ぶが、私にはなじんだもので、むしろわかりやすい。



コンパーラピッドをよくまねたシャッターである。ガバナーはしっかりしたつくりで、清掃注油でしっかり動く。それほど酷使されていないのは調速リングのスレの具合でわかった。

☆この手のコンパータイプは、分解で調速リングを外すと再組立が意外にやりにくい。無理をして組むとシャッターがセットできなかったり、開きっぱなしになってしまい、故障と勘違いしやすい。
この理由はセット時にかかるレリーズ部分が、シャッターセットリングとの連携から浮いて外れるからである。また、ガバナーのスリッパも外れやすいからだ。これを防ぐには、調速リング(スリットのあるリング)を外す前に押さえたままカバー(目盛りのあるドーナツ板)のみ外し、連携がどうなっているか良く観察すると良い。(もちろん、ベテランの方は良くご承知のことです)



反射鏡などは特に傷んでいないが、すりガラスのみで中央以外は見えにくい。外で常用するにはフレネルレンズを入れるべきだろう。



ケースは後のオートコードのものより良い皮を使っている。前フタが外せないのが惜しいが。

*その後、ほぼ同形機種が手に入ったので、こちらに追加で報告しています(2010/09)

《試写》

オートコードと比較するためにプロビア100Fを使った。



平均的な解像力で、明るさも周辺まで揃っていて、しっかりした画像である。



右にある光漏れはウラ蓋ロックが一瞬はずれたときのもの。非常に湿度が高くて見えにくい遠景だが、ほぼ見たとおりに再現された。



この距離では実に精密である。拡大すると人物の表情まではっきりわかる。



画面のすぐ上に太陽があるのだが、どこも破綻していない。暗い部分にも調子が残っている。

☆このカメラの機能をより洗練させて、レバー巻上げ・セルフコッキング・フイルムの平面性改善(上から下に巻き取る)をしたのが弟分のオートコードだが、このカメラも描写の点では遜色は無い。また、古いカメラにありがちなコマのダブリなどは無く、安定して巻き上げ機構だ。軽くて使いやすく、良いカメラである。さすがはロッコールと言えよう。


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