FUJICA GL690
フジカのG690シリーズの改良型、GL690を手に入れた。ネットの仲間で同県人のkotoさんから、65o・100oと共に廻してもらったのだ。kotoさんは完成度が高い手作りカメラを作られる人で、素晴らしいスキルの持ち主だ。
このカメラの65oはなかなか見ない。JFCのHIROA会長は、「玉が少ないですよ、大体は本体とセットになっていますが、本体はおまけみたいなものですね。レンズだけでも本体つきでも価格は変わりませんから」と話されていた。
数年か探してきたが、望遠は見るが広角は少ない。たまにあってもとんでもない値段がついている。もともとジャンクを直すのが好きな私としては、まったく対象外の価格だった。
今回は見つけるのが難しい専用ファインダーやフードがセットになっていて、仲間で無ければ考えられない値段で手に入り、とてもうれしい。
このカットはテスト撮影の時の記念撮影で、G690BLと並べて写してみた。
外観は年式相応で、おそらく観光地で使われ続けただろう擦り切れたものだが、機能はきちんとしていてレンズもきれいだ。テストしていると65oがわずかにシャッターにムラがあり、清掃を兼ねて開いた。
分解は前からが都合が良い。ネームプレートを外すとすぐに前玉が取り出せる。いずれもゴムのフリクションを利用した。径が大きいので廻しにくいが、後からだと面倒になるのでこの方法が良い。
次のリングを3本のセットネジで外すと、絞り・シャッターリングが外れてくる。特に難しい点は無いが、矢印の位置に絞りのクリック用のバネと先端部品があり、注意しないと飛ばしてしまう。また、独立した二本のシンクロコードのうちホット側は、ハンダを外す必要がある。
黒いプレートがシャッター速度の変更用である。確実な組み合わせなので、組付けは楽だ。
シャッターはセイコーの0番で、ほぼコンパー・プロンター折衷タイプだが、シャッターセットリングは確実にホールドされていて、上を外すと外れるような事は無い。セルフタイマーが無い分、中は広々としている。リング周りとスローガバナーに少し給油して動きが軽くなった。
後玉もアセンブリーで外れ、分解可能で全ての面が清掃できた。酷使を前提に、メンテナンスを考慮した構造である。
ストラップの取り付けにはアイレットは無く、中判のカメラに多い形式だが、元のセットに不足していたようで、kotoさんが応急に作られたものが付いて来た。これを少し角を落としてバリ取りなどを行った。
塗装よりきれいなので手持ちの厚手の人工皮革を貼った。中を少しきつめにして、万一にも抜け出さないように工夫してみた。
貴重な65o専用ファインダーは、長年の酷使で縁が歪んでいる。ある程度整形し、それでも傷が多い部分はレンズつきのままヤスリで削り落とした。
100o用のフードは凸凹だったので形を直して研磨し、艶消しブラックで塗装した。65o用は清掃のみ
スレで下の真鍮が見えるのはかまわないが、ちょっと錆もあったので少し研いでタッチアップした。時間が出来たら軍艦部と底ブタを再塗装する予定だ。
少しデザインの違いはあるが、ほぼG690と同じである。
120−220フイルムの切り替えはフイルムプレートの裏返しと、カウンターの切り替えで出来る。フイルム交換用の遮光幕も用意されいるので、撮影中にレンズ交換も簡単だ。フイルムバックは交換できないが、その分シンプルで軽いと言えよう。
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《試写》
モノクロはプレスト・D-76にて
65oのF5.6開放・1/205秒での描写、中心部まで約2メートル
中心部の拡大、距離計はこのタンクの口元で合わせた
F8で1/125秒、ピントはベンチの手前の手すり
カラーはコニカのネガカラー160にて
自家現像が下手なので色は参考にならない
☆観光地の集合写真などを写すのに良く使われてきたカメラだから、性能に不満があるはずも無い。今回はなかなか手に入らない65oが専用ファインダーつきで手に入ったのでうれしい。
テストでは100oをつけたG690と二台をぶら下げて贅沢なスナップをしてみた。100oはF3.5だが65oはF5.6だから、プレストを常用することになると思うが、十分以上の画像で満足している。こういうカメラでスナップするのはなかなか楽しい。重さと大きさは120フイルムの69としては苦にならないレベルだ。35o距離計式と大差ない使い心地である。
ただし、8カットで一本終了は写すものを考えさせられる。フイルム交換はスムーズなので、あまり苦にならないが、リズム良く写すのにはちょっときついか。二台で使い分けが良いかもしれない。
《謝辞》kotoさん、良いものをありがとうございました。大事にかつ大いに使わせていただきます。