FUJICA GL690 (2)
前回のG690+150oの記事で予告した通り、180oをFUJICA GL 690と共に暖さんからお借りし
テストした。
カメラ自体は前の記事の通り経験している。しかしこのレンズは見た事が無い。何とも派手な外観で、このセットだと相手が
警戒する。まあこんなに大きくて派手だと無理もない。実用的には塗装では無いから外観がきれいに保たれやすい。
最近は使われずに寝ていたらしく、シャッターが押してからしばらくしないと切れない。点検・整備の時期ということ。
構造的には65oや100oと同じだ。前枠を外すと前玉がアセンブリーで取り出せる。このアセンブリーは分解可能で、レンズの
全ての面が磨ける。シャッターはリンクとシンクロ用の配線があり、本格的整備の場合は0番シャッターを後から外し、単体に
して作業が必要になる。今回は面倒を避け、この状態から整備した。
羽根に油は無く、スタートする部分が油切れで引っかかっていただけなので給油で解決。ついでに羽根を清掃した。コンパー
改良タイプで、セットリングをギアで巻くタイプ。セルフタイマーは組まれていないのでシンプルで整備しやすい。マミヤプレス用
などもほぼ同一形式で、中判用の典型だろう。
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☆経験的薀蓄 レンズシャッターの作動状況は音でわかる。気持ちよく切れた場合、音の最後にセクターリングの音が小さく「チーン」
と響く。「チッ」という音だけだとリングは動きたいが羽根が開かない時や、羽根が途中まで開いてスタックしてしまう。この場合は
一番多いのがシャッター羽根に油が付いて張り付いている場合が多い。他に、セクタリングの動きが油切れで悪いとも考えられる。
「チッ・ジジ・ジ・チャッ」などはスローガバナーが悪いことが疑われる。低速で「ジジジ」という音はスローガバナーの音だが、
これが短く気持ちよく聞こえないのはガバナーの動きが悪いのを示唆する。多くのスローガバナーはセクタリングに続くアーム類が
レリーズでシャッターを開いた後にその動きを止めるように割り込み、バネのトルクは2または3段のギアで増速されてガンギの動き
を作り、これが回転速度を規制することで低速を得る。スムーズでないと回転トルクが少ないので遅くなったり止まる。この原因の
ほとんどは油切れだ。最高速はガバナーが関係しないので低速のみ不調という場合はここだろう。
レンズシャッターが渋いとスローガバナー不調と即断して外す人があるが、これはあまりお勧めしない。外さずにベンジンなどで
洗浄とごくわずかの給油で復活する事が多い。ガバナーとセクタリングなどとの関係は非常に微妙で、古いものは公差が大きい。
ベストポジションを見つけるのは非常に面倒だ。先ずは良く観察し、「必要ないところは緩めない」のがコツだろう。
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特に作動に異常はないが、ファインダー清掃と上下像の修正のために軍艦部を開く。構造的には前の型と変わらない。
プリズム組み込みの二重像ファインダー。像の調整は赤矢印のミラー後で上下、黄色のネジで左右を調整する。この
作業だけならアクセサリーシューを外せば軍艦部はそのままで作業できる。
ファインダー内のフレームは100oと150o用で、180o用はない。画角確認のためピントグラスで覗いて見た。ついでに距離計と
実画面の確認も行った。
結果として、180oは150o枠のすぐ内側までとわかった。150o用で一回り小さく写ると読めば良い。
試写風景。たまには三脚に乗せる。もっとも、この時は結局写さずだった。
《試写》
プレストにて
三枚目は暗い高架下なので絞り開放(5.6)で1/60秒、最後はほぼ最短距離でF8.0の1/125秒だが見事なピント。距離計が
しっかりしていて開放で近接でも大丈夫だ。予想よりずっとコントラストが高く、ピントが良い。周辺落ちは認められなかった。
被写体の光の状況にリニアに反応する優秀なレンズだ。
☆暖さんから使いにくいと伺っていたが、ほとんどストレス無しで使えた。明るい昼間の一本目で距離計が信用できると
わかったので、二本目は雨の中で暗いところで写してみた・結果は予想を上回るしっかりした画像だ。シャッターの
ばらつきは無く、慎重を期してスタデラで露出確認したので、画質的に使えないカットは無かった。
望遠は不得意なのと、2.5mという近接限界から使いにくいが、画質と安定度、表現力はさすがである。手ぶれしにくく
それ程狭い画角では無いからクローズアップレンズなどで接近して使うのも一つの方法かと思う。
☆ありがとうございました。さすがフジノン、興味深いレンズですね>暖さん
April 2015