FUJICA G690 (2)
フジカG690を久しぶりに取り上げる。暖さんのセットに本体とヘリコイドスタックの150oが入っていたからだ。
この機種というか、富士の69はいろいろ取り上げている。理由は何よりその画質に惚れ込んだから。
(左・GL690+65mm、右G690+150mmと100mm)
G690 GL690 GSW690V
最初のGL690は友人K(元中学校長)に譲っている。一度何かの記録に使ってその画質に驚き、ぜひ欲しい
ということだったのでしっかり整備して渡したのだ。
150oはヘリコイドが廻らない。全力でも全く駄目。普通はちょっときっかけがあれば動く。ところがこれは動く気配も無い。
全てのレンズを外し、レンズユニットを外せばヘリコイドの一部が見えるからと、レンズを外したがユニットはハンマーで軽く叩いても
全く動く気配が無い。
レンズ部をティッシュで保護して、CRCを隙間からたっぷり掛け、持久戦とした。しかし、一週間しても全く動かない。止む無く
フォーカシングリングのギザをタガネとハンマーで叩くとわずかに動いた。
当然傷だらけになるのだが、大きいヘリコイドにはこの方法しかない。養生してバイスに挟み、強力なモーターレンチなどで廻す
のが一般的なネジ緩めだが、 挟める幅が狭い上、そこにはスピゴットマウントのネジがある。万一バイスでネジやヘリコイドを変形
させたら、二度とまともに動かなくなってしまう。タガネで接線方向に叩けば、本体の変形は無く、タガネがあたった部分に傷がつく
だけで、本質的な機能は損なわれない。とにかく少し動けば後は何とかなるはず。
最後は「フリクションを増やして廻す。グリップ部はできるだけ広くする」ということで、ガムテープを厚く巻いて全力で廻すと
ついに動いた。一度動き出すと重いがスムーズだ。グリスが固くなって全ての接点の摩擦が増えたのだろう。
レンズは感性、いや、完成した。
ファインダー枠部が腐食でザラザラなのでファインダー廻りの清掃も兼ねて分解。この部分は非常にわかりやすくメンテナンスを
前提にした構造だから分解は簡単だ。枠部はサンディングしてウレタン塗料を重ね塗りしてタッチアップ。もちろん傷ついた
ヘリコイドなども徹底タッチアップした。
フジカの証、プリズムを使った贅沢な二重像合成部。軍艦部を乗せる時には、R-S切り替え部の受けと、軍艦部側のピンの勘合を
きちんと合わせないとカウンターが作動しなくなる。簡単だが要注意ポイントだ。
レンズ交換用の遮光幕セットノブとリリースレバー、ウラブタ開閉兼用のリール受け
R(ロールフイルム用)とS(一枚撮り)の切り替えがある。一枚撮りシートフイルムはもはや意味がないが、こちらに切り替えると
空シャッターが切れるので意外に便利
《試写》
試写は二度に亘った。一度写したら遠景がボケている。理由は後玉の最後のレンズのロック不良で、レンズがずれていた。この
影響で遠景でボケたカットが何枚かあった。遠景が評価できないのでは意味が無いので、改めて撮影した。
使ったのは今回もプレスト(1.2)とT-MAX100(3.4)。プレストはそろそろ最後の在庫だが、過去の試写ではプレストが多いから
外せない
上二枚はレンズがずれていた時のもので、一応使えそうなものを選んだが、すっきりしない。下二枚は対策後で、ぐっと締まった
感じになった。もっと被写界深度が浅くきりきりしたピントを予想していたが、良い意味で違っていた。大判の流れを感じさせる
ゆったりとした描写で、合焦部とアウトフォーカス部の境界が溶け合っている。
至近距離が2mなのがちょっと残念だが、ポートレートなど接近戦で効果的な武器という気がした。遠景は現代レンズとしては
意外に甘い(レストアした個体なのでこれだけかもしれない)からしっかり絞る必要を感じた。もちろん普通の用途で困る
レベルではない。
☆このカメラとマミヤプレス・RBは観光地の集合写真で活躍した。操作性が良くて高画質で画像に癖がないという記録カメラ
に求められる性能と、高耐久力という信頼性がこのカメラの武器だった。カメラ屋の宣伝用デコイに見えかねないベタなデザインも、
今となってはいとおしいものだ。
内部のレンズ周りに大量のモルトを使うとか、塗装が悪く、遮光幕が劣化して使いにくくなるなど弱い部分があるが、それらは
本質的な故障に結びつかない。シャッター周りのメンテナンスさえしていれば、100年後にもちゃんと使えるカメラだ。驚く程の
タフさと、ゆったりとした余裕の描写、フイルムカメラの頂点の一つである。
「予告」
近日、このレンズよりもう一つ長い180oがこれも暖さんから届く。これもテストして追加記載する。
ただ、なかなか難物ということなので、ちょっと時間を取ってテストしたい。改訂には時間が必要だから150oについて先にアップ
する。
☆元々好きなカメラですが、改めて楽しめます。ありがとうございます>暖さん
April 2015