FUJI GX680 VS



富士のGX680シリーズは巻上げからシャッター、ミラーの動作まで徹底した電動一眼レフで、本来的には写真館などのスタジオ用カメラとして知られている。これはそのV型で現行のカタログに載る機種だ。スーパードレッドノートクラス・超ド級カメラと言えよう。私のサイトでは最も高価な現行機種の登場だ。

もとより私のような貧乏人がそんなものを買えるはずもない。これは「キリ番景品」なのである。仲間の「一里塚」主宰のMADAM師からキリ番景品として拝領してしまった!

135oレンズ付で頂いた本機はタイプSである。フロントのアオリを省略した廉価版ということだが、ブツ撮りに縁が無く、フィールドで手持ち撮影するのが私の写真なので、三脚に乗せない限りどのカメラもアオリを使うことはない。従ってこのカメラには何の不足もない。



68というフォーマットは非常に魅力的である。66スクエアが好きだが、そうでなければ68か69の横長は収まりが良い。ペンタ67などの素晴らしい画質は認めるが縦横比は極めて使いにくい。縦位置も横位置も大差ないからメリハリのつけようがないからだ。67で10枚、68で9枚とカット数はほとんど差がないからほぼ69として使えるのはありがたい。

電動で一枚目が出るし自動的にフイルム感度が表示される。シャッターは極めて軽く、三脚でもレリーズ無しで十分使える。ただし、超高価なAEファインダーを使わないと露出関係はオートにはならないらしい。ピントは手動である。この設定はピント位置が重要な中判では美点だ。ピントを画面中央に採るとは限らないし、近接ではどこにピンを合わすかで大きく結果が異なるからきちんとニーズにこたえていると思う。





電池がいろいろ必要だ。本体にはCR123Aが三本、フイルムホルダーにはCR2が二本入る。据え置きならAC電源があり、電池は不要だから本来はそうして使うものだろう。
ファインダーは素晴らしくよく見える。私のいい加減な視力でも戸外でルーペ無しで使える。重さはともかくピン合わせが素早くできるので、意外にもスナップしやすいのだ。ただし腕力と首の強さは必須だが(笑)



蛇腹は延長レールやロング蛇腹、袋蛇腹が用意されていて、ブツ撮りにも完全に対応している。バックはレボルビングする。同時にファインダーのマークが動いて画角を示す。わかりやすい構造だ



接点だらけのレンズ。シャッターも全て電気制御である。この接点が曲者で、ちょっとでも接触不良だと全く作動しなくなる。レンズ固定ならともかく、もう少し安定的な仕様(接点の二重化など)が欲しい。このカメラ唯一の機構的不満である。



実は、あまりの写りの良さに他のレンズも欲しくなり、65oと210oを手に入れてしまった。
左が210mm、右は65oである。必要ならトリミングも盛大に出来るから、これでレンズは十分だ(笑)

《試写》

現行カメラに作動確認の試写は不要なので、最初から作品として写した。ネガカラーはこの一枚で十分だろう(フジ・100)



モノクロはプレストにて





ここまでは135o



これは210mm開放(孫)



210oを絞り込んでいる



65oを陽壁の上に置いて近距離に合わせた



遠くに合わせた


☆私は今までに300台以上のカメラを使って写してきた。年間200本近いフイルムを消費して写し続けているから少しは結論的なことを書いても許されると思う。今回の結論「このカメラはすばらしい写真が写せる。One of The Best Cameraである!」

もちろん完璧なカメラというのはまず存在しない。このカメラにも難点はある。まずその重量だ。ほぼ4キロに達するので特にスナップでは大変だ。ストラップを太いものにしないと首に食い込んでチョークされてしまう。手ブレしにくいというのは美点ともいえるが。
フェイルセーフのためかやたらに警告が点滅して作動が停止する。レンズの連動のための端子の接触だったり、フイルムの感度が自動で読めないなど大事なことではあるが、気分が落ち着かない。数が出るカメラではないから仕方ないといえばそれまでだが、パーツ類が高い。特に必須の電源周りが高いのはありがたくない。バックの液晶が電池が入っている限り切れないのはカメラの状態(onとoff)が直感的にわかりにくい。

いろいろ上げたが結果に比べれば瑣末なことだ。絞れば4×5に迫る画質という評価は間違いない。特にMADAMさんの仰るとおり、135oの画質は素晴らしい。ほぼ35oカメラの35oに相当する65oはスナップでは全体の雰囲気をつかみやすい。望遠に210oを選んだのは、絞りを開けば浅いピントで距離感を稼げ、絞ればそこそこ広いピントが得られる二面性を考慮したからだ。3本とも開放で5.6と暗いところで手持ちは苦しいが、しっかり構えれば重さと軽いシャッターで意外なほど使える。現代レンズの威力と言えよう。

このカメラをスタジオで使っているあるプロは、「素人と同じカメラでは金が取れないからこれを使う・・・」という趣旨のことを書いているが、納得の言葉である。誰が見ても普通の人が(外で)使うとは思えない大きさだから。

《謝辞》

MADAMさんありがとうございました。これほどのものとは思っていませんでした。体が許す限り愛用させていただきます。私がもう肉体的に無理だと感じたら、次の若い力に託して継承してもらいます。

December 2/2009 kan

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☆☆少し追加事項あり。あまりに結果が良いので、私にも手が出る初期型680を確保してしまった。電源以外はほぼ共通でアオリがついているタイプである。
好きなものは最低でもダブル、本来は数十台持つべしという尊敬するebatomプロのポリシーが感染したらしい・・・まあ自分は直せない電気カメラだから仕方ないか・・・良い訳だなと反省・・・しない!

《追加》



アオリはよほど必要が無ければ使いたくないが、必要ならできるというのはちょっとうれしい。V型には機能で劣るが、レンズは共用だしフイルムバックはV型で使うこともできるから条件が悪い(雨の日など)場合のスナップに良さそうだ。
多少背が高く、バックや電源、ストラップなどが共用できない。レンズ・バック・ヒキブタ・ウエストレベルファインダーは共用できる。形は違うがフロントスタンダードも共用可能(小改造で)と見た。ただし、二台同時に手持ちで使うのは自殺行為だろう
写りは同じレンズなのでこちらには掲載しない。アオリを使った例などはRestore Tipsに後日掲載する(予定)

(独り言)

ファイルナンバー296、複数報告があるから既にテストしたカメラは300台を越えたか。レストアするにはつらい視力だし、使う目的がはっきりしなければ手作りする気もないし・・・レポートの終わりも近いな

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