Shinano opt. PIGEONFLEX

 ピジョンフレックス、富岡のトリローザを積んだ二眼レフだ。シャッターテスターでお世話になっているk_h_inaさんから整備を依頼されたので、初めて触った。



 今さら言うまでも無いが、信濃光機銘のボディーに富岡の三枚玉、トリローザは信州代表のような組み合わせだ。製造はおそらくヤシマ、後のヤシカだろう。ヤシマフレックス初期型と違うのはネームだけと思われる。このカメラが作られた頃の信州は聖地と言えるほど光学機器のメーカーが集中し、製品は世界に羽ばたいていた。



 ジャンクボディーつきで到着したので、ジャンクを先ず開いて、シャッターの構造を確認。久しぶりのNSKシャッターとご対面した。





 症状は動作不安定、特に低速の秒時が怪しい。一応清掃しボロン粉末ですべりを良くした。しかし羽根の油は少なかったので、スローガバナーの油切れと判断して給油した。ジャンクの方はセルフタイマーがバネ外れで外れていたのと、スローガバナーがまともに動作していない。ギアのかみ合わせもあるが、各部が磨耗していてバルブ動作もまともに行かない。使うとすれば最高速のみの単速シャッターとして使うしかないだろう。したがって、整備は両者からの良い部品を集中させて行った。



 整備後にシャッターテスターで速度をチェック、全体に遅めだが、低速は安定した。1/200秒はこのリストではばらついているが、しばらく動かしているうちに快調になり、実質で1/125秒程度になった。それでも遅いのはバネが弱っていると思うが、このシャッターはあまり材質が良くない。磨耗しやすく、バネを強化すると別の問題を生じそうなのでこのまま使うのが良いと判断した。

 シャッターを固定するリングにカニ目が無く、フリクションでは固定しにくいので、リング(乱反射防止のリングを兼ねる)にカニ目を切ってしっかり固定した。(しっかり固定されていないと、シャッターの切れが悪くなったりセルフタイマーが起動しなくなる)



 ファインダーが暗いので開いてみた。汚れと劣化でぼやけている。これは新しいミラーと交換する。

 

 ファインダーの皮が無いので紙で型を取って似た模様の皮を貼り付ける。その他各部を磨いて貼り皮は塗装し、全体にすっきりさせた。











《試写》

モノクロはプレスト、ネガカラーは富士の160Sにて行った。













☆先にモノクロを写したが、私の目がルーペと視度が合わないので、前ピン気味にしてしまうのに気がつき、ネガカラーはほとんどが距離指標による目測で、ファインダーは全体の構図確認だけにして行った。

 作りはごく標準的なローライコードコピー、材質的には四畳半的で質感はそれほどのものではない。しかしトリローザは非凡だ。三枚玉によくあるバックのグルグルはしっかり押さえ込まれていて、絞りに反応していろいろな表情を見せる。

 もちろんコントラストが低めで、逆光ではフレアーっぽい所など弱い部分もあるが、しっとりとした写りで場の雰囲気を良く伝えてくれる良いカメラであると結論した。

《謝辞》

 とても興味深いカメラです。整備を楽しめました、ありがとうございます>k_h_inaさん

続編あり、こちらから

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