RICOH RICOMATIC44

 リコーの比較的レアな44二眼レフ。これはずいぶん前にSコレクションで、「ジャンクだから遊んでみなさい」と貰ったもの。二眼レフの棚に乗せた後・・・忘れていた。{4月4日は44の日=127の44カメラを使う日}で思い出し、整備した見た。



 リコーの44、127フイルム仕様はごく一般的な二眼レフ式と、この時代を先取りしようとしたリコマティック44がある。

 何かに似ていると思ったが、ローライマジックに外観が似ているのだ。ただし、似ているのは外観だけで、中身は追針式のフルマニュアルカメラである。でも、巻上げでちゃんとセルフコッキングする優れものなのだ。(エバセットのシャッターではない)





 作動不良というか、シャッター切れず、露出計作動せず、外観傷あり状態だったので、先ずは前を分解する。普通の構造と違って、前のカバーを外すと、前板に多くのシステムが組み込まれたまま外れてくる。

 シャッターダイアルは本体側に残る。これにはASAと表記されている。つまり、シャッターはフイルム感度で一種類に決めてしまい。光に応じて露出計の定点に合わせ、つまり絞りを変化させると適正露出が得られるというシャッター優先システムだ。ピント合わせと絞りのみという簡単操作だが、実性能を使い切らないから、もったいないと思うかもしれない。

 私にはこのシステムが実用的だと感じる。私は手持ち試写では基本的に1/250秒以上を使う。これはレンズなどを評価するのに手ブレが大敵だからだ。手ブレのある写真で「このレンズはなかなか良い描写をする」なんて笑い話にもならない。



 前カバーと前板(裏側)の様子。カバーの前には半透明のフタがある。カメラ名はこの裏に書かれていて、半透明なので前から見えると言う凝ったもの。必要に応じて簡単に外せる。



 シャッターは裏向きにセットされていて、簡単に開いて整備できる。構造は典型的なリコーのシャッターで、極めて作動が重い。多少の羽根油と、リンクやスローガバナー周りの油切れなので清掃注油でシャッターは復活した。



 露光決定システムが面白い。左に見えている丸い部分が絞りダイアルで、ギアで絞りを変更するが、同時に可変抵抗が組み込まれていて、これが露出計のアース側につながり、セレンで発生した電流に対して直列に繋がれて本体に落ちるので、露出計が反応する仕組みだ。

 残念ながらセレンは発電せず、露出計の単体作動も怪しいので、これを直すのはやめた。セレンを光電池に交換し、露出計を移植(中で針が動くのが見えれば良い)すれば使える。技術的には私レベルでも簡単な作業だ。しかし、案外レアなカメラだし、露出計が無くても撮影機能はちゃんとしているので、交換は避けた。





 ミラーはほとんど見えないほど曇っていて割れがあるので、新しいミラーを切り出した。ピントグラスも清掃したので、とてもわかりやすくなった。





 底にぶつけた跡があるので、得意の「ハンマーレストア」







 アイレットは専用があるのだが、ついていないので4mmの真鍮パイプから切り出して作った。すっきり出来たから違和感は無いと思う。



 理研・リコーというレンズ名。三枚玉のようだ。前玉回転式で上下レンズはリンクでシンクロする。

 このカメラにはシャッター速度と絞りの表示は無いから、シャッターテスターで調べたら、最高速が1/150秒、次が1/50秒と言う所なので、この二速を使うことにした。その下に1/30秒程度が微妙に2段あり、最後はバルブだから、実用には問題ない。また、絞りにも値の表記が無いので、実直径から割り出した。











《試写》
 
切り出したプレストで試してみた。







桜の開花を写す日、「44カメラを使う日」だったので、明るい広い景色ばかりだったが、しっかりした画像になった。ビューレンズがずれていたので、ほぼ目測だが問題なし。三枚目は激しいコントラストだったが、鈍くならずにきちんと暗いところが出ている。優秀なレンズだ。


☆外観から簡易カメラに見えるが、シャッターも絞りも可変で、セルフコッキングの本格的カメラだ。露出計に連動した絞りでシャッター優先プログラムという珍しいシステムを持つ。それでいてオートマットではなく赤窓式の巻上げは時代を反映したものだろう。決して際物ではなく、立派な実用機だ。

楽しく使わせていただきます>Sさん


April 2012

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