MINOLTA Autocord 1 (セレン露出計付)

 このカメラは先日のもの(以下@と略す)のリベンジで、hi gemajinさんからのレストア依頼に応えた。

 このカメラにいたる顛末はこちらにあり。写せるようにはできなかったので 本リストには掲載していない。ジャンクでもひどい話の例としてTipsに掲載している。



 到着したものはそこそこきれいだ。ちょっと手を入れれば良いだろうと早速確認。リンクの 「二眼里程標」氏のデータから、1型のセレン露出計付と見た。二眼レフについて、「二眼里程標」ほど体系的、技術的に きちんとまとめられているサイトは他に例を見ない。二眼レフについて知りたければ先ず見るべきサイトだ。

 幸い、露出計はきれいで作動している。



 露出計カバーを兼ねるネームプーレートの位置決めがおかしいのは、テンション用のバネ折れと判明。@より移植。確実を期して バネは接着した。





 ファインダーはぶつけた跡があり、へこんでいる。ここは二重になっていて溶接されているから、叩き出せない。@より外して いたものをタッチアップして使う。幸い、どちらも「CHIYOKOマーク」があるタイプなので、オリジナルは崩さないで済む。



 シャッターが動かないので前板の皮を剥がす。この通り、本来は一つながりの人工皮で、切り出したくないからゆっくり慎重に 作業して上手く剥がせた。(後々のためにスキャナーに乗せて型を写して置いた)


 ここで様子を見る。見た感じや巻上げの感触から、シャッターは壊れていない、どこか作動を邪魔していると判断した。巻上げが チャージされたままだろうという軽さで大体はわかるものだ。なお、ここまで分解して素人修理の痕跡はない。



 レンズバレルを外す。特に大きな問題はなさそうで、この段階でシャッターは作動すると確認できた。リンクが渋いのだろうと 給油して組みなおしかけたが、どうもおかしい。レンズバレルを締め付けるとシャッターが押せなくなる。



 判明。真鍮リング(フランジバック微調整用)がシャッターの二重写し防止用リンクの下になっていた。これが災い してリンクが戻れない。

 リンクはシャッターボタンに連動して二重写しを防ぎ、シャッターが押されると巻上げをフリーにする。巻き上げると一度 右に回り、巻き上げクランクとともに元に戻る。この間はリンクが邪魔してフイルム巻上げ途中にシャッターを押せないように なっているが、これが巻き上げが完了しても戻れないからシャッターが押せないのだ。

 リングを本来の位置に移動して機能を回復した。

☆このカメラに素人分解の跡は見られないと先に書いた。それではこの組間違いは誰がやったのか。まさかミノルタがオーバー ホールの時に間違えるはずがない。前オーナーがやったとすると、ネジなどに廻した痕跡が無く、前板の皮をきれいにしっかり 張ってあるのも素人的ではない。私の想像は、「街の業者が組み間違えた」である。犯人が誰だとしても、本来の動きをしない時は 油でごまかしたりせず、なぜそうなるかよく観察するのが鉄則で、無理な組み方は必ず故障の元と心すべきだ。

 まあそのおかげで「動かないジャンク」として出されたから、手に入れるには美味しい物ではあるが、これが一般価値が低い機種 ならそのまま廃棄されていただろう。安く手に入れて幸運とは言い難い。



 きちんと動作しているが、念のためシャッターを開く。典型的なコンパータイプで、少し汚れていた。(追・このカメラは 北海道で活躍するので、低温対策で給油はさらさらの油をごくごく少しにした。)また、だるまカバー内のギア類にも忘れず 給油した。冷えるとここのグリスの硬さで動きが重くなる。



 整備完了。どの秒時もすっきり動く。追加バネで無理に初速を稼ぐ最高速(1/500)は非常用とし、実質最高速を1/250秒で使うのが 望ましいタイプだ。その点ではシチズンMXVの方が1/400まで気兼ねなく使えるから良い。



 「CHIYOKO ROKKOR 75mm F=3.5」鋭さとコントラストとニュアンスを持つレンズ(私的評価)

 露出計は感度を設定してEVを読み、このダルマカバー前面に書かれたシャッターと絞りに対応する数の合計で合わせる。 たとえばEV14なら、シャッター1/250、絞りを11に設定すれば良い。使いやすいものではなく、目安と思った方が良いだろう。 ただし、セレン露出計は耐久力が高く、今もきちんと使えるものが多い。戸外で昼間ならなかなか良い値を出す。









《試写》

 よくわかっている機種なので、ピント確認優先でプレストにて







 一枚目は海辺の完全逆光、太陽は画面上にある。それでもきちんと手前も雲の調子も出る。二枚目はほぼ最至近距離だが、 きちんとあわせたところにピントが来ていて、ハイライトが潰れない。

☆私がこのカメラを二眼レフの基準とするのはまさにこういう写真が写せるからだ。現代レンズと正面から戦えるし、それでいて どこかゆったりした雰囲気が大好きだ。40年以上使い続ける理由である。最高の二眼レフの一角を占めると思う。



  ☆higemajinさん、じっくり写して楽しんでください。


December 2012

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