RICOH Autohalf



 送料を入れても一台1000円に満たない「ジャンクまとめて6台」の隅にひっそりと隠れていたオートハーフ、当然ながら モルトべたべた、オートではシャッター動作せずの代物。


「リコーに外れなし」 ビュッカー さんのレンジファインダー掲示板とJFCの合言葉

 この評判はまさにこのオートハーフから始まった。富岡が 作ったこのレンズはまずキャディーに付けられた。ハーフ用で25o(35oカメラ換算で35o)のこのレンズは驚くほど高性能だったが、これを固定焦点とし、 1/125秒単速シャッターとセレンによる針押し式AE機能を与え、スプリングモーターによる半自動巻上げと組み合わせ、ごく小型の ボディーに組んだ。ユーザーはシャッターを押すだけであるが、その結果が実に立派なので大ヒットした。

 現代のフイルムで丁寧に写せば、スナップカメラとして不足無い結果が簡単に得られる。旅カメラには今も一級品だ。



 自分のレストア記録集を見たら、なんとこのカメラについては記載していない。記憶では数台直したはずだが忘れていた。 この歴史的大衆カメラが記載漏れとは画竜点睛を欠く。それでは報告しようと途中から記録してみた。

 

 途中割愛で前後に開いたところ。右にネジとシャッターロックボタン、中央のシャッターボタン用二本とその下の一本、左の シンクロ接点と三脚ネジ部、これだけであっさり開く。数字は製造年月日だろう。初期型としては1965年ごろまで作られたので、 最後の方のものと推定。

 

 露出計が動かない理由を探る。セレンかメーターか、配線か、障害はこれらしかありえない。セレンは少し起電しているようだ。

 

 40年使っているテスターにて計測。オリジナルは1ボルトレンジでもこの程度と少な過ぎるのか針が振れない。テスター から導通テストするとメーターはしっかり振れる。つまりセレンの起電力不足が原因なのでこれを太陽転地で置き換えることにした。 置き換えると電圧はそれ程変わらないが、負荷がかかったときの電流が違うようで、針がしっかり動く。



 交換終了、そこそこ動くようになった。全くのカンだが、一段くらいのオーバーなので、抵抗は入れずにテストして、その結果で感度 設定してコントロールしようと決めた。(テストでは感度を一段上げて設定すれば良いと判明)



 組み立てて、明るさを変えてシャッターを切り、絞りがきちんと動くのを確認。



 大量に使われているモルト。全て削り落として清掃し、新しいモルトを貼り直した。全体を磨き、ケースはタッチアップして完了。











《試写》











☆固定焦点は3メートル、そのあたりの描写は元になったキャディーと変わらない。さすがに3枚目の50センチは無理、無限は 甘いが、雨の合間の暗い中(EV11-12)なので絞り込めていない。それでこの結果は良い。ネガカラーで色が入れば十分使える画質だ。

 オリンパスペン・リコーオートハーフ・キヤノンデミがこの時代のハーフカメラを代表する機種だろう。その中で速写性は圧倒的に オートハーフ、しかも固定焦点なのに画質も負けていない。ヒットは当然だった。もちろん細かい欠点はある。シャッターが単速 なのでフラッシュ無しで使える範囲が狭く、シヤッターの押しにくさから手ぶれしやすい。この手ブレで画質が悪いと勘違いされた ことが多いのではと思う。大量のモルトを使っていて、経年変化でぼろぼろのベタベタになる。スプリングモーターは重い割りに 枚数が撮れない、など。

 いろいろ問題はある。しかし高度経済成長時代を代表するファミリーカメラ、少なくともその一つであることは間違いない。


June 2013

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