CANON CANONET(再)

ジャンク6台シリーズ五番手、キヤノネット初代。画期的な機能と価格で多くのライバルを蹴落としたカメラ。こちらは過去の例



 ケースは汚いが、本体は汚れを落とせばそこそこきれいで、動作している。ファインダーの汚れ取りで開いてみた。シャッターボタンと ネジ3本だけで簡単に開く。実に整備性が良い。

 キヤノネットのEE機構の詳細は特許になっている。 (ペトリの巨人、恐竜さんの資料)

 この特許の内容から、キヤノネットの合理性の一端が推測できた。当時の技術としてはごく小さな露出計は無理で、軍艦部にスペースを とらねばならない。光の量はセレンから得られるが、それに対応して露出をコントロールする場合、シャッター速度とフイルム感度を 露出計に伝えねばならない。この時代にはこれを抵抗体をシャッターリングなどに塗布し、シューで抵抗値の変化として取り出して、 露出計に与える電圧を変化させ、手動で追針又は段カムでオート(コニカオートS系、ヤシカなど)か、露出計を回転させて針位置を相対的に 変える(フジカなど)かなどだが、キヤノネットは機械的リンクで伝えている。

 製造コストと信頼性においてマイナスが多い方法を避け、 組立や整備作業で工程や調整の面倒を減らしている。(絞り優先でシャッターを電気的にコントロールする画期的なエレクトロ 35シリーズはまだ生まれていない(キヤノネットは1961年、エレクトロ35は1966年新発売)

 キヤノネットでは全て機械的リンクで行っているのだ。絞りを設定する段付カム位置をシャッター速度とフイルム感度で機械的に 変化させ、露出計の針を抑えた位置に対応する絞り位置を設定している。素子や露出計の精度が飛躍的に向上する前の時代の見事に アナログ的合理化である。なお、このためには軍艦部にスペースが必要になり、デザイン的インパクトという理由だけでなく、 スペースファクターから巻上げが底部のトリガー式にされたと推測する。

 上記の条件(露出計や素子の小型化と信頼度の向上)が満たされた後続のキヤノネットが、一般的な巻上げスタイルになったのは そんな理由ではないだろうか。また、露出計がマニュアル時に作動しないのは上記の構造なので致し方ないだろう。



 メーターの動き良好、ファインダーはすっきりした。



 前玉が汚いので外す。



 ゴムに固定して前玉分解。この時代のカメラは前群・後群がそれぞれ組み立て式で、分解清掃できるものが多い。窒素封入でも 長い間にはカビ発生が皆無とは言えないからこの構造は好ましい。少なくともネジ止めリングも無くプラスチック枠を接着している 現代レンズ(全てではないが多く見られる)から見たら、メンテナンスを前提にした構造は「もったいない」精神に合う。











《試写》

 この個体は露出計が振れ過ぎる。大体だがカンより1−2絞りアンダーになるので、フイルム感度を一段落として撮影した。

フイルムはコニカのセンチュリア400を200として使った。よって色は参考程度。







 近距離から遠距離まできちんとしている。周辺も問題ない。キヤノンの中庸を行く描写と軟調なトーン、リバーサルでちょうど良い 発色など一貫性がある。

☆キヤノネットはほぼ10年ぶりにまともに手にした。改めて見ると実にしっかり出来ている。今も元気なセレン露出計、立派な ケース、意外に使いやすくリズムよく写せるトリガー巻上げ。多くのメーカーを蹴散らしたのは単に価格政策だけではなく、 この合理精神と品質の高さが決めてだったと確信した。


July 2013

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