ZEISS Super Semi IKONTA 531



 当方貧乏につき、こういうお宝級のカメラを自力で手に入れる力は無い。ところが、世の中には奇特というか、酔狂と言うか、 どこも壊れていなくて美品のスーパーセミイコンタを「使ってみなさい」と飛ばして来る人がいる。プー博士とも言うけど(笑)

 このタイプでは祖父のセミネッターしか経験していない。 645の代表的機種として有難くテストしてみた。名称の531は645の距離計つきで1937年以後の改良型を意味する。



 たたんだところはセミネッターと大差は無い。



 開くとドレーカイル(距離計)の招き猫(光楔式対物プリズム)や測距窓などいかにも精密機器といった顔が出てくる。



 前板の開閉ボタンを押すとファインダーも立ち上がる。ただしプリズムは自動起立ではないので忘れると二重像が見えなくて焦る。



 ピント合わせにはプリズムとヘリコイドをつなぐギアを廻す。二重像と前玉ヘリコイドが連動する。作動は確実で軽い。



 手前の巻上げノブには折りたたみ式の取っ手がセットされていて使いやすい。シャッターレリーズは左手用だ。

 左レリーズを採用した理由を私なりに考察した。しかし良くわからない。巻上げは右手で右廻しなら左上になるが、右下と言う タイプもある。事実ネッターは右下についている。いずれにせよ、位置が固定されるのは巻上げノブだけだ。それ以外のデバイスは 距離計などを他機種と共用する都合があっても配置は自由だ。ツアイスの技術力なら、右レリーズにするのは容易いはずだ。



 左が距離計、中央がファインダーでアクセサリーシューは無い。



 テッサー75o3.5、ツアイスの代表選手



 右手でピントとシャッターセットなどを受け持つ



 ファインダーは逆ガリレオ式で、アルバダフレームが入っている。青系の色がついていて高級感があり見やすいが、逆光だと 反射でちょっと見難い時がある。

《試写》

 試写はアクロスにて









 遠景から近景まで、明るい所から室内の開放まで、破綻が無い。ネッターのノバーの図太い描写とは対照的に、 あくまできりっときめる。戦後の一流レンズと比べれば少し甘いが、実用上は開放まで画質が整っているから、開放・近接でも しっかり使える。さすがテッサーと言うところか。

☆645-66の距離計連動フォールディングカメラと比較して考えると、質感は良い部類だ。操作性も悪くない。自動巻き止めは 付いていないが、1930年代製造を考えれば特に不満は無い。あえて言うならファインダーと距離計が暗い。実用上は ほとんど問題ではないが、暗い室内ではちょっと合わせにくい。自動巻き止めではないが、裏紙が薄くなった現代フイルムでも 確実に巻き上げられるので、ずれやすい機種と比較すればむしろ使いやすい。

 66のフォールディングカメラと比べて、コンパクトで持ち運びしやすく、135oカメラが一般に普及する前の時代に、 このタイプに人気があった事は十分納得できる。国産ではほぼ同等機能のパールUがライバルだろうが、質感では一枚上、 使い勝手は同等で、レンズは好みで分かれるというところか。いずれも今でも十分魅力的なセミ判カメラだ。


☆素晴しいカメラですね、愛用します>プー博士

Agust 2013

トップに戻る