BALDA BALDI



バルダの127で3×4フォーマットのバルディーは1930年代後半に作られ始めた。これもナースマンさんから 「127は常用し難い。活用できるなら使え」ということで、喜んで拝領した。



 127フイルムの3×4は小型なので持ち歩きやすく、特にこの時代に作られた。日本ではベスト半裁判としていろいろ 作られている。多くはフォールディングタイプまたは沈胴式である。母の初代愛機「ツアイス」はノモンハン事件で 大叔父とともに消え、母無き今となっては機種名不明だが、この手のものであったようだ。

 バルディーはメイヤーのトリオプラン50oF2.9-4.5付が知られているが、今回頂いたものは焦点距離は同じ50o F=3.5だが、ツアイス・イエナのテッサー3.5がついている。トリオプランは三枚玉の傑作だが廉価版。テッサー付は カメラペディアには記載が無いから特別な仕様だろう。バルダはレンズメーカーではないので、塔載するレンズは ドイツ各社のものを自由に乗せている。テッサー仕様が存在しても不思議ではない。



 時代的にはきれいな個体だが、問題点はいろいろある。フタがノッチががたがたでしまらない。畳めないカメラは フォールディング(畳める)カメラとは言えない。

 フイルム室側から通ったネジが受け金具を止めているが、これが緩んでいる。苦労して締めて接着剤で二度と緩まない ように固めたが、まだしっかり固定できない。



 過去に何とか止めようとして受け側を変形させていたようだが、それでも届かないほど金具の先が磨耗している ので、追加金具を接着した。



 位置の関係で少し浮くが使えるレベルになった。フォールディングカメラに戻った。開閉を静かに手を 添えて行うのはこの手のカメラの常識。このカメラの場合は、開閉ボタンを押したまま閉めて、その後にボタンから 手を離す。できる限り接着した金具に力をかけないための配慮も必要だ



 内部は再塗装されていて、光漏れなどの心配は無い。赤窓周りはしっかりしている。特徴的な手動パララックス 調整はきちんと動く。レンズはきれいでシャッターもきちんと動作しているので、ここでテスト撮影してみた。





 とんでもない画像になった。どこにもピントが無い。どう考えてもレンズがおかしい。



 ピントグラスで無限が出ないので、前玉を外して見た。



 廻っていたのはヘリコイドではなく中玉の根元のネジだった。矢印のところで前玉と中玉がヘリコイド によって回転するのだが、手では全く廻らない。傷が怖いが道具で廻すしかない。



 ビニールテープで養生して、プライヤーを二本使って何とか分解成功。ただし、中玉固定のネジにプライヤーの 刃が食い込んで少し傷がついた。滑るとひどい傷になるが力を入れすぎると変形して元も子も無くなる。難しい。



 ヘリコイド掃除に使った綿棒。ガソリンに漬けて洗うのが一番だが、根気よくやれば何とかなる。ジッポーオイルで 徹底的に拭いて、プライヤーでついてしまったネジの傷を直し(ネジ山のバリを強い針などで取り去る。絶対にヤスリ でやってはいけない。再起不能になる)、レンズを掃除して組み付ける。



 この状態でピントグラスで確認すると、一応改善したがどうもすっきりしない。特に無限遠が出ない。テッサーで そんな事はありえない。前玉回転式では一番捻じ込んでごく少し戻したあたりに無限が出るタイプが ほとんどだから、指標リングを外して一杯締め込み、少し戻してピントグラスで見ると全くピント範囲に無い。 かといって、近距離側に廻してもしゃっきりしない。いろいろ調べてみると、ピントグラスを1ミリ弱浮かすとピリッ として、近距離まできちんとピントが合うとわかった

 これは後玉の位置、すなわちバックフォーカスが合っていないのではないかと考え、試行的に厚めのリングを入れて みた。これだとピントグラスでピントの山が見える。やはり後玉の位置がおかしい。

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FERCA代表のFERDIさんにこの現象について教えを請うと、一般的な前玉 回転式の場合、バックフォーカスは後玉に設定されていて、これを外すといくら前玉を動かしても合焦しなくなる。 フランジバックからずれたら前玉では修正できない、というお話だった。

 つまり、先ずは正しいバックフォーカスに後玉を設定し、その上で前玉でピント位置を出さねばならない。

 前玉回転式のレンズをバックフォーカスの異なるボディーに乗せ、本体側のヘリコイドで使ったところ、全く 絵にならない経験をしているが、今回で再認識した。

 素人には触れないバックフォーカスがなぜ狂ったのか想像してみた。50oテッサーは多くのカメラで実績が あり、人気のレンズなので換装した。その際にバックフォーカスが異なるのでスペーサーを入れたが その厚みが不足で、ピントが甘くなった。しかしユーザーは127だからこんなものと考えた・・・

 今となっては知る由も無いが・・・

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 ということで、仮に入れたリングをそのまま使うことにして組んだ。幸い、前玉がカバーに干渉したりせず、 折りたたみの問題は無い。









《試写》

 プレストにて実施









 曇り時々雨のあいにくの空模様だったが、きちんと出た。近景から遠景まで安心して使える。ちょっと 後ピンなので調整すればもう少しピントが出るだろう。

☆光が悪い条件でもコントラストが高く、きりっと出た。小型カメラ用テッサーの切れ味とトーンが 出たのでレストア成功。

 バルダは自社製品の他、OEMを多くこなしている。これは自社ブランドだが、上手いまとめで各部に無理が無い。 ネジなどの材質が良くて確実に整備できる。この個体の不具合について、開閉部が磨耗したのは扱いが下手 だったのだろう。ただし、固まってしまったヘリコイドグリスはツアイスやF&Hと比較すると低質か。

 造りがしっかりしていて、材質が良いから、整備さえすれば80年経過して今もちゃんと使える。ドイツ工業製品 が世界中で信頼されるのはそういう特質からだろう。

☆今回続けて127をレストアしたのを期に、127カッターを作り直し、 スキャナ用の専用ホルダーを作った。 より127の扱いが楽になった。


☆頭の体操になりました。大事にします。>ナースマンさん


June 2014


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