MAMIYAPRESS Super23 (再)with 75mm F=5.6



 マミヤユニバーサルプレス用75o 1:5.6、Spさんにスーパー23のボディーとともにいただいた。それに100oとホルダーまで いただいた。

 75oはユニバーサルプレスでポラロイド判撮影可能なので、69より一回り大きいイメージサークルを持つ。69としては準広角で 遠近感を強く強調しないが周辺まで入るから重宝だ。きれいでシャッターもしっかり動作しているから、いただいたボディーを整備 して使って見よう。



 このプレスはファインダーの採光用窓のガラスが割れている。また、接眼レンズが激しく曇っていて良く見えない。その他の機能は 問題なさそうだ。そもそもこのボディーはダイカストを車で轢く位の事をしないと壊れようが無い。スピゴットマウントは大口径で これも強力そのもの。弱いのはファインダーと距離計のみ。職業カメラマンの飯の種とはよく言ったものだ。



 先ずは軍艦部のカバーを外す。ネジ四本であっさり開く。通常のメンテナンスでのファインダー清掃は容易い。



 接眼レンズは締め付けリングが全く緩まないので、周りのボード部から分解。三枚構成のレンズを分解できた。この部分は分解後に 廻そうとしたが全く回らない。完全に腐食して絡み合っていた。分解後にCRCをつけたら回るようになった。



 撮影レンズでは無いから気楽に研磨して視野を回復した。まだちょっと曇っているが距離計が使えるから良しとした。試写後、 再々研磨して使いやすくなった。



 採光窓のガラスを外すには前部分を外さねばならない。これが極めて面倒だ。



 見えている6本のネジが前板を固定している。ひどく硬く締まっているのを油を差してドライバーで叩くなど苦労して外したが、 上手く前板が外れない。まだ蛇腹のために組み合っている部分がある。そのネジも全て固まっている。面倒なので全分解はあきらめ、 別の方法を探った。



 結局、割れたガラスをより細かく割って外した・オリジナルは透明ガラスの下に乳白シート挟む方式だが適当なものが無いから、 手持ちのスリガラスからサイズぎりぎりに切り出して、接着剤で全周を固定して対処した。



 軍艦部の角にちょっと凹みがあるので、鉄筋から作った角用ツールで叩き出す。ツールは鉄筋の先端を平均的な角のアールに してある。両端は逃げを作ってコーナー部にも使えるようにしてある。機種ごとにアールは異なるからその都度ヤスリで修正する。



 下にゴムマットを置いて、内側から叩き出す。本来の板金で中から叩くのはあまり良い方法ではない。裏側に型や金床を当てて 外から据える用に叩く。しかしカメラレストアでは塗装を極力生かしたいので裏側から叩く。(言うほど簡単ではないので、 大事なカメラをいきなり叩くのは厳禁、練習必須!)



 光の加減で背後にあるフレーム表示のメカが一部透けて見えるが、機能に問題ないので良しとした。フレームの切り替え時に複雑な 動きが見られて面白い。



 100o、沈胴するレンズで標準的にスーパー23に付随している。ちょっとシャッターやヘリコイドが渋かったので給油して整備。 本記事ではこのレンズについては試写等に触れていない。私は長い間使っていて良くも悪くもこのカメラの標準レンズと 思うので触れる気は無かった。しかし、このレンズのベストはF11で、それ以外の絞り値では画質に期待できないという話をSp さんから聞いたので、時間が出来たらじっくり比較テストしてみる予定。



 スーパー23はマミヤプレスの標準だろう。バック部の蛇腹で接写(全レンズ)やスイング(沈胴レンズのみ)が出来る。



 矢印のあるつまみ(反対側にもある)はバック部のロックで、これを緩めるとバックが引き出せてアオリなどを行える。



 右側にも三脚穴があるがこのままでは雲台に乗せられないので、高さを稼ぐアダプターがある。また、カメラが回転して縦位置 切り替えを三脚に据えたまま可能にするユニークなアダプターもある。ピントグラスを使えば接写やスイングが出来る。出来れば ライズが欲しいところだが、構造上無理な注文だ。もちろん本来の手持ちスナップでは必須ではない。



 距離計の基線長は十分長く、精度が高い。



 3種のフォーマットに使えるホルダー。赤窓式だがこのカメラで連射はしないから問題ない。ホルダーにはこの他に69、67専用 タイプ、3型は二重露出防止とホルダー側でのレリーズ可能など各種ある。スーパー23とともに代表的なユニバーサルプレスは 73×95mmのポラロイドが使えるが、オリジナルプレス系は120ロールフイルムと一枚撮りの名刺判のみ対応。ポラロイドがほぼ消えた 今となっては接写が簡単なこちらの方が用途は広いか。

《試写》

 75oをアクロスにて写した。フォーマットは69にて







 一枚目はほぼ最短距離(1メートル)絞りは16-22。二、三枚目は絞り8にて撮影。フードやフィルターは使用せず。シヤッターは 全て1/250秒とし、手ブレの影響を避けた。(ディテールを出すため、たっぷり露光のあっさり現像とした。現像はSPDウナギタレ 方式の低温現像13℃15分)

☆遠距離も近距離もセコールらしい確実な描写。69より一回り大きいポラ対応なので周辺光量に余裕がある。フードなしだが逆光にも 強い。
☆マミヤプレスは画質と機動性を両立させるべく作られた。蛇腹プレスタイプの収納性を捨て、その代わりに強いボディーと ヘリコイドの正確さを持つ。そのために大きさや重さは手持ちで写すことをぎりぎりで可能にしている。しかし、これが世に出た頃 (初期型は1960年)にはMライカなど35oカメラが報道で主に使われ、ついで35o一眼レフが台頭してプレス、つまり報道用途 ではほとんど使われなかった。その代わりに各種アダプターを駆使して、証明写真や出張集合写真(学校の記念写真)などに活路を 開いた。距離計は複雑な機構のマスクを併用することで十分の精度を持っている。今も信頼性と69の圧倒的な情報量でフイルム カメラの良さを味わうにふさわしい。それを支えるのがセコールの優しく精密な描写だろう。

(詳細情報はマミヤプレスファンクラブを参照されたし)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

注・「SPDウナギノタレ低温現像」は私独自の手法で、 概ね次の通り

 現像液は常に少し疲労した状態で平衡状態を保つ。一本につき30-50mlを捨てて新液追加(数本ごとまとめて行う)これは 軟調かと先鋭度を狙うため。

 現像温度は13℃を基準にする。これは注入時の空のムラなどを避けられ、より先鋭になるのを狙う。また、低温では 現像温度や現像時間に鈍くなるので、時間管理が楽になる。一例として13℃では14-20分の間であればそれ程大きな濃度変化は 見られない。(少なくとも焼ける)
 120、127、4×5、8×10などは予備水浴を1分ほど実施(バックコートを取り去り、液に馴染ませるため)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


☆ありがとう、楽しめます。立派なレンズですね>Spさん


November 2015


トップに戻る