AGFA ISOLETTE4.5



アグファ・イゾレッテはK.I.Mさんからの整備依頼で届いた。蛇腹のピンホールが解決できないとのこと。コニカは ついでにシャッター清掃のため。先ずはイゾレッテから作業開始。

 イゾレッテは66の目測機で以前に紹介したものと基本はほとんど同一だ。距離計を持たない 簡易タイプだが、基本のつくりは手抜き無く、実用として多くの家族の肖像を写してきたのだろう。



 さて、ピンホールだが、オーナーは濃い色のカーフイルムを貼りこむ事で対処している。しかし作業が難しい奥の部分で 重ね合わせ点(矢印)にピンホールが存在している。それぞれはごく弱いが、全体としてコントラストの低下、異常な 光が入ってしまう。用意していた代替用の蛇腹はちょっとサイズが合わない。構造的にいためずに交換するのは面倒 なので、現況で残りの穴を潰すことにする。

 外からの補修は厚くなりすぎて困難なので、内側から黒い毛糸と蛇腹用の革の切れ端を貼り付けた。 ただしそのままだと張り付いてしまうので、シッカロールで針張り付きを防止している。

 無傷に見える左上は、大きな穴なのでここだけは外から蛇腹用薄皮を貼り付けた。これで一先ず光漏れは無くなった なんて呑気な事はいえない。こういう光漏れではテスト撮影中にまた穴が開くなどがありうる。実際にまだ見落としがあったが 場所が特定しやすかったのでテスト後に追加で遮光した。これで実用に足りるだろう。



 ついでにレンズ・シャッター清掃とということで、前玉を外してみたら、中玉と癒着している。前玉回転式ではよく あるが面倒な症状。力技ではレンズが傷むし、中玉のヘリコイドベースが変形したらそれまで。回転できなくなるから 慎重な作業が必要だ。この状態で数回ベンジンを指して、ゴムで養生して、ウオーターポンププライア+プライアで 廻すと何とか外せた。少しネジ溝が傷んだが、カッターナイフで溝を整形して上手く行った。



 古いグリスを取り除いてシリコングリスを入れた。玉を清掃して距離とヘリコイドのズレをピントグラスで見ながら 調整して一件落着。



 アグファのAPOTAR 85oF=4.5 シャッターはコンパーラピッド















《試写》

 コダックのTMY400にて









 一枚目は前板を開いて直射日光下で10分以上晒した。弱い穴からの光が総合して特に空に出ていた。二枚目以降は 間隔が短いので上部の一点が主になり、トリミングで使えるレベルになった。四枚目は絞り開放ノーファインダー 1/50秒(椅子に固定)

☆  当初の目的、蛇腹補修以外に前玉の問題があったからピントの点でも改善した。光漏れがゼロになれば立派な 結果が出るのは想像に難くない。毎度の事ながら、フイルムメーカーのカメラは「写真がわかっている」ので、 必要十分な性能がある。携帯性が良いから今後も活躍できるだろう。

 ただし、蛇腹は現況では厚くなって収納が限界だから、次に傷んだら交換しかない。その場合、挟み込みを外して 新しい蛇腹を入れるのはお勧めしにくい。なぜなら、本来は交換を前提にしていないので、無理に外すとフイルムゲートが 変形してしまうから。従って、古いものは切り取って、短めな蛇腹を作って接着するのが良いと思う。

☆楽しんでください>K.I.Mさん


《追加記事・蛇腹交換》

 お返しして試写したらまた光りが入った。動くたびに大きくなるのでもう交換しかない。ということでもう一度送ってもらい 新しい蛇腹を作成した。



 試作したベースになる部分。これにヤンピーを被せて製作する。



 古い蛇腹を根元で切り取る。本来はアパーチャー周りの金具で挟むのだが、これをやると板が薄いので確実にベコベコに なってしまう。



 左がこれまでのもの、右が今回製作するベース



 位置や大きさの確認。いけそうなのでヤンピーを被せる(意外に面倒)



 後を貼り付けた。この状態で内部を墨汁で反射防止して乾かす



 完成。オーナーによってしっかり使える事が確認できたので一件落着。


Apr 2017


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