. Camera Restore

PEARL Tの基本的な使い方


《フォールディングカメラの使い方》


 


 蛇腹のカメラ、折りたためるのでフォールディングカメラと呼ぶ。スプリングでレンズが起き上がるので、スプリングカメラと呼ぶ人もある。(このように、前フタにあるレバーを出せば縦位置で水平に置ける。これを利用すると三脚無しでもいろいろ応用撮影が出来る)

 初期のカメラは木製で大きく重く、とても持ち運べるものではなかった。それを皮の蛇腹の伸縮性と、軽いブリキの板で作ったのがこの手のカメラだ。軽く、比較的小さい上に折りたためるからポケットに入るものさえある。従って、基本的に持ち運んで手持ちで写す道具である。

 パールTはそんなカメラの一つで、総合写真メーカーとして日本のカメラ界をリードしていた小西六(後のコニカ、コニカミノルタ)が1948年に作莉出した傑作機である。続けてTRS、U、Vが生み出され、最後はダイカストボディーのW間で作られた。戦後の日本のカメラの中で、最高の645フォールディングカメラはどれかと尋ねられたら、私はパールと答える。作りの良さと高い画質は今の時代でも通用する立派なものである。

このカメラの詳細へのリンク


――― 基本知識 ―――


 

黄色が距離調節ノブと指標、赤は絞りのノブと指標、青がシャッター速度調節リング



距離計調整部。ファインダーを見ながらこのリングを廻して二重像を合わせ、指標から被写体までの距離を読み出す



左にこれから写すフイルム、右が巻上げリールで、フイルムは一方通行で巻き戻すことは無い。リールはどちらも上方向に強く押し、手前を引き上げて取り出す。入れるときもほぼ同様




フイルムを入れるときはこの程度裏紙を引き出して行う。一回転巻き上がればフタを閉め、後は赤窓を開いて一枚目が出るまで巻く


――――― ☆では実際の操作に入る。先ずはフイルムを入れて、写せる状態まで ―――――





取っ手の下のノブを上に押すと裏フタが浮くので引き開ける



撮影後に左に残っているリールを外して右に入れる



空いた左に新しいフイルムを入れ、シールを外して引き出す



右のリールに先端を差し込んで巻きつける



少し巻いたらフタを閉める



巻き上げてゆくといろいろなサインが出て、数字の1がここに出るまで巻く



開閉ボタンを押すと前板が開きだすが、どんな蛇腹カメラも必ず手で支えて一気に飛び出さないようにするべし。軽く動くものの場合、ガチャンと音を立てて飛び出し、その衝撃で各部を痛める。タスキの引っかかりなども生じやすい。ゆっくり行うこと。




半分ほど開いたら、レンズを真っ直ぐ前に出すようにアシストする。途中で斜めになってしまったら、一度フタを閉めて再度行うこと。(この写真のパールはタスキを直しているので、少し力を入れて引くとカチンと出て定位置に止まる)


☆撮影する。シャッターを押す以外の操作の順番は無い。状況に応じる



距離計で二重像を合わせる。この写真では左手が距離計の窓(矢印)を隠しているので像が見えない。ここをカバーしないよう注意する。(距離計を廻すのはどのようにしてもかまわない。ここでは距離を読み取るだけ、その数値を距離レバーで設定しないと実際のピントは合わない。距離はフィートで示されている。1フィートが約30センチだが換算しなくてもそのまま設定できる)



読んだ距離をここで合わせる。距離合せのノブを動かし、指標に距離計で読み取った数値に合わせる。近距離(2メートル以内程度)は正確さが必要だが、それ以上はなれていれば、およそでかまわない。遠い山など(だいたい50メートル以上)は距離計を使わなくても∞にすれば良い。

咄嗟で間に合わない時の設定方法

――― 人物の上半身・4-5 全身・10 数人で写す・10-15 遠い風景・∞ ―――



シャッター速度を合わせる。昼間ならそのシャッターの最高速をおすすめする。このパールなら1/100秒を使う。1/500秒まであるタイプなら1/250秒が良い。暗いところでどうしてもでない限り、スローは使わない方が結果が良い(この説明などとっくに知っているという方にはもちろん別の話)

☆最高速をすすめる理由は二つ。まず、ほとんどの失敗は手ブレとピンボケだ。手ブレは少しでも速いシャッターほど少ない。最高速はスローガバナーが働かないので、調子が悪いシャッターでもそこそこ使えることが多い、ただしほとんどの1/500秒は補助バネで無理やり出すのでシャッターの負荷が大きいから、特別な場合を除いて使わない方が良い。(補助バネタイプはシャッターセット後にその速度にしようとしてもリングが廻らないのでわかる)



絞りを設定する。絞りは数値が少ないほど暗い場面に対応する。画面全体に来ている光の強さを基準に写す入射光式で考えれば、フイルムの箱に書いてある簡易露出表のままで先ず失敗は無い。感度が100のフイルムの場合、

 快晴・16 晴れ・11 薄曇り・8 本曇りや雨・5.6 夕方・〜4 (順光の場合)

 逆光ではこの数値より一段数値を減らす。斜めの場合は半分程度修整だが、そのままでもほぼ大丈夫

オートカメラでは針や数値がめまぐるしく変るが、これは中心部の顔や景色を細かく測っているからで、その場に来る光で考えれば、そこまで細かく動かしても意味は少ない。「晴天は11」、「曇りは8」で写真はしっかり残せる(ネガカラーを使う限り)

☆>一枚写したら、必ず巻き上げることを習慣にするべし。忘れると二重写しや空振りを作ってしまう

 

16カット写し終わったらどんどん巻上げ、窓に何も見えず手ごたえが無くなったらフイルムを取り出す



緩まないようにしながらフイルムをシールするが、裏紙の最後を下に少し折り返す(現像でここが二重になっていないと非常に面倒なので)



完了、120フイルム(ブローニーフイルム)を扱える店に出す。店によって価格や待ち日数が大きく異なるので良く調べると良い。自家現像だとその日のうちにコストは1/10以下で出来る。最初の用具は1万円未満で揃うから、挑戦されるのも良いだろう。


成功を祈る!



2011 March
戻る