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4×5(シートフイルム)の現像


シートフイルムの現像について考証する。


 シートフイルムはこのような箱入りで売られている。中は二重の箱でその中に遮光シートの袋に入っている。ほとんどが フイルム群の上下に紙のシートが入れられていて、シートとの張り付を防止している。もちろん開封は暗室専用。


 4×5、8×10などのシートフイルムはこのようなシースに入っている。国際規格のシースで、リスコやホースマン などのものが良く使われている


 グラフレックスと富士から出ていた6カットをワンタッチで切り替えるグラフマチックホルダー、通称「ガチャガチャ」。 これは一枚ずつシースに入れて装填するタイプ。距離計で使う場合は6枚までだがそこそこ速写できる。その他に富士の クイックロードなどの専用タイプでフイルム交換が楽なタイプがあるが、ほとんどディスコンになった。

 しかし、規格によりフイルムサイズは同じなので、良し悪しはヒキブタの動きや遮光の信頼度などと、操作性や精度の 違いだけであり、現像では同一だ。これらを暗室かダークバッグなどで装填して撮影し現像する。(クイックロードの装填は 暗室不要)


 「ポラを切る」と言えばこれ。ポラロイドだから現像の必要が無いので、失敗が許されない場合のテスト用に良く使われて 来た。ポジと同時に引き伸ばしに使えるネガが取れるタイプがかつては存在し、これだとテスト結果が良ければそのまま 作品になるので便利だった。ディスコンになった今では昔語りになってしまった。4×5のインスタントフイルムはおそらく 近い将来供給が途絶えてしまうだろう。

 元々、4×5の現像は敷居が高い。DP店での処理は無く、全て外注だから価格も時間もかかり、1カットあたりのコスト はロールフイルムとは比較にならない。もちろん結果は圧倒的だから、これを自家現像できれば実に魅力的だ。 私は4×5を始めて以来いろいろトライしてきた

《現像での問題点》

 135や120フイルムのようなベルト状のフイルムは、長く柔らかいので、軸に巻きつけることで簡単かつコンパクトに収納 出来る。LPL、パターソン(と互換タイプ)、マスコ、キング(ベルト式)などさまざまなタンクがあり。多少の違いは あるが比較的簡単に巻き込め、薬液の注入や排出が容易で、慣れれば失敗は少ない。

 しかし、4×5などのシートフイルムでは事情が異なる。もともとシートフイルムは皿現像されていた。これは完全な 暗黒を保てる暗室が必須で、手探りでフイルムを扱うから熟練が必要だった。注意していても擦り傷が着き易いし、 複数枚を同時現像はまさに芸術的な手技を必要とする。


 私の場合は専用タンク現像をしている。これはコンピプランのもので、一度に6枚現像できる。その割には小型で、液量は 1リットルあれば良い。

 
 青矢印のところにつけてあるガイドに従って、両側に3枚ずつ入れる。これを両側6枚入れた後、ガイドを外してストッパー で押さえ、タンクに入れた後は明るい所で現像する。最低でも大型のダークバッグを何らかの方法で広げた程度の広さが 必要である。

 ガイドがあってもフイルムを装填するのは極めて難しい。かつて存在した23(≒69)のシートフイルムはそれ程でもないが、 4×5でも実サイズが102×127oある。フイルムを装填入れる場合、シースからフイルムを出すために少なくともフイルムの 長辺サイズの二倍以上のワークスペースが必要だ。4×5シースは裏表二枚だから、普通の最低単位は二枚(1シース)、 一般的には3シースで6枚同時現像する。そのための上下サイズやタンクのためのスペースを考えると、 ダークバッグは最大級でも使いにくい。完全暗黒の暗室(わずかの光漏れも致命傷)は敷居が高いから、ダークボックスが 使いやすいだろう。無い場合はダークバッグに形を保つ箱(枠)をいれる方法が有効だ。

 この作業は全くの手探りだけなので、正しい溝に揃えて入れるのが難しい。シースのヒキブタを抜く・フイルムを溝から 出す・正しい溝を探して入れる、の繰り返しだが、ガイドがあっても違う溝に入れたり片側が二重になったりしやすい (ガイドを使った場合は二重にはなりにくい)。夏場など6枚を入れる間に手から出る汗で作業が極めて面倒なことになる。 一秒でも速く完了するのが大事だが、極めて面倒な暗室作業だ。

以下は仲間の亜哉さんの方法

 このタンクでの問題点は、液量が多く口が狭いので、注入・排出に時間がかかり、タンク内での上下で現像時間が異なって ムラになりやすい事である。遮光のために大きい注入口は望みにくいが、うっかりするとムラを作ってしまう。

 私はこれを低温現像でカバーしてきた。低温現像だと現像に要する時間が長く(13度で14分程度)、多少の 注入時間の差はほとんど影響ししないからだ。しかし低温現像は意外に温度管理が面倒で、標準温度の現像の方が管理が 楽だ。




 最近こういうものを仕入れた。イギリスの個人が開発したMOD54というもので、 パターソンのタンクにに入れるアタッチメントだが良く出来ている。これだとロールフイルムと全く同様に扱うことが出来る。 タンクに入れるのが簡単で液量も比較的少なくて済む。円安でちょっとお高いが、専用タンクに比べればはるかに 安い優れものだ。

 似たものを作ろうかと思っていたが、買う方が安いと納得した。もう少し使ってから改良点を考えてみたい。どこかのメーカー が造ってくれるとありがたいが、数が出るはずも無いから望み薄だ。3Dプリンターの出番かもしれない。

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《現像例》




 先ずはテスト撮影を済ましてきた。カメラは45クラウングラフイック(アオリは不得意だが速写性が良いから)

 私はバックアップ・比較用で同じ場面を写している(今回はセミスーパーイコンタ)。見ているのは立会人(りり)



 タンクはパターソン・システム4のマルチリール3。135で3本、120が2本同時現像できるタイプ。前のタイプから 改良されていて、ロート部が大きくなり、非常に素早く注入できる(ムラ防止に効果的)また、フタなども改良されて 倒立攪拌がしやすくなった(ただし多少は漏れる)



 ダークバッグにてフイルムを入れる。キャップとリール廻しは邪魔なので入れない。内部空間を大きくするために、 中を広く膨らませて置くと良い。特に夏にはダンボールなどを入れて出来る限り広くすること。



 温度を調整した現像薬をトオカップに移し、4×5や120では予洗のために水を入れる。バックコートがあるので 1ー2分水に漬けて洗った方が精神衛生と馴染みに良いから。

 液の色は私が行っている準ウナギのタレ方式(継ぎ足し式で、常に少し疲労させた液で安定と軟調を狙う)のため、 ボトル全量を使おうとすると下に溜まった汚れがカップに入るから。当然ながらこれは継ぎ足し時に漉している。



 水を排出している。富士だと青い。この色は先に洗わなくても現像すると消える。



 手早く薬を入れ、転倒攪拌と軽くタンクを叩いて泡を切り、現像・停止・定着を行う。





 定着が終わったらロート部を外して確認と水洗(私は水洗促進剤を使って水洗タイムを短縮している)



 薄くした界面活性剤にて水を切り、吊り下げ乾燥。クリップは大判専用の先をちょんと挟むタイプが望ましい。 135用などのものは傷がつくので使えない。専用が無ければ洗濯バサミに突起をつける等で対処できる。

☆作例


--DATA-- Graphlex 45CROWNGRAPHIC Fujinon 150mm f5.6 NEOPAN Acros 45 Fstop=11 1/250sec


November 2013


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