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Arduino Skettch Shutter Tester Rev 1.51


 @tri_chromeさんから前回報告したシャッターテスターの改良版が届いたので、追加報告をする。 真面目に改良に取り組まれ、より完成度が高いものになったようだ。初期テスターとしていろいろ報告しているので この第二モデルも試用した感想を述べたい。



 基本仕様は赤外線を照射しながらシャッターを切り、フォトダイオードで光を捉えて露光時間を算出する。算出根拠はJISに 準じている。一般にシャッター開閉による光は時間をX軸、光量をY軸にしたグラフでは等脚台形になる(厳密には立ち上がり、 立下りの光量はレンズシャッターでは二次変化、フォーカルプレーンでは0-1変化)。最大光量の1/2以上になった時間を計測している。





 演算・表示・操作部 外形的には初期型と変わらないが、動作プログラムが改良されている。





 本機を特徴付けるセンサー部。斜めに5個のピンホールが並び、フォーカルプレーンシャッターの先幕・後幕の動きを計測できる。

 レンズシャッターでは中央の穴にどれだけ光が当たったかで計測できるが、フォーカルプレーンシャッターでは、シンクロ速度以上 では先幕と後幕が正しいスリットを作り、かつ均一な速度で走るかを知る事が大事だ。

 現実には初速と終速が一致するものはほとんど無く、それが甚だしくなると露光ムラが目立つようになる。各速度での動きを知る事が できれば、傾向に応じてテンションなどを調整することが出来る。

 このセンサーは24o×36oのライカサイズに対応していて、アパーチャーグリルへの合わせマークが新設されたので、セットが とても楽になった。地味だが実測では大きな改善点だ。

 ライカサイズだが、より大きいフォーマットでも固定を工夫すれば使える。135の対角線のサイズだから、凡そのシャッター動作が 推測できるので使える。もちろんレンズシャッターならフォーマットに制限は無い。

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《テスト・レンズシャッター》



 レンズシャッターは単体のコパルNo.3で行ってみた。大判用シャッターは単独計測できるので計測には最適。



 しばらく整備しなかったので、高速側が遅くなっているが、低速は大きな影響は無いなどがわかった。レンズシャッターについては 初期型と有意な違いは無かったので詳述は前回を参照されたい。


《テスト・フォーカルプレーンシャッター》



 FPシャッターのテストには、前回に幕速度が上手く取れなかった MINOLTA SRT Super を使ってみた。



 計測はレンズを外し、シャッター単体として行った。このセッティングで指標の切り欠きが役に立った。カメラ側にも アパチャーグリルの指標があるので、これと合わせれば位置は簡単に決まる。



 全体としての速度計測。マイクロセカンドと換算速度表示、ズレの+−から、1/1000秒がほぼ出ている事を示している。 機械式絹幕シャッターとしては優秀な結果だ。他の速度も計測してみたが概ね良好とわかった。



 先幕・後幕の部分速度の検証。これはシンクロ速度の1/60秒を使った。基本的な速度は出ている。



 部分速度測定。5つのセンサーの間の先幕、後幕の速度がボタンを押すごとに順次表示される。この数値を並べればシャッターの動きが わかる。例えば後幕が次第に速くなるなら、後幕が先幕に追いつく状態だ。先が速いか、先幕速度が遅い事を示す。これを 先幕のテンションを上げるか後幕を落として調整するという手順で正確なシッャター調整ができる。テストカメラでは比較的均一で 良好な結果だった。


《総評》

 前回測定不能だったSRTできちんとした計測が出来た。FPシャッターには幕のテンションと言う調整点がある。幕を交換した場合、 必須の作業だが、これには、カンとブラウン管式テレビを利用した簡易計測程度しかアマチュアには手立てが無かった。この テスターはその点を客観的に見られるので、正確な調整が可能になる。

 正確なシャッターは露出や画面の均一性、手プレ防止に必須なのは言うまでも無い。設定速度と異なる動作では露出の根拠に なりえないし、設定より遅いのは手ブレの元にもなる。一度に全体を露光するレンズシャッターと異なり、FPシャッターは 1/60〜1/250秒でアパーチャーをグリル通る二枚の幕に間隔・スリットを作って、部分ごとに露光することで高速を得る。 よって露光の均一性が非常に重要だから、このテスターで計測・調整できるのは極めてありがたい。

☆今回はバラックでテストしたが、実用にするのでカメラ・発光部・センサー部をセットしやすくなるよう工夫する。 完成したら本稿に追加掲載する予定。


《作者の言葉・ツイッターより》

 うむ。自分が興味本位で製作した品物が誰かの作業の可能性を拡大したり、先人の仕事を顧みる事に役立つなら大いに結構な話だ。 要するにマニアな道にもう一歩引きずり込ませた訳でウヒヒである。(ぉ


☆ありがとうございます。いよいよ実用品、完璧ですね>tri-crome さん


January 2016


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