SAKAI TOYOFIELD 45A



 プー博士が手に入れたトヨフィールド。しばらく放置されていろいろ問題があるようなので、整備を引き受けた。 早速、りり(♀)がチェックしている。寝るには狭いと判断したようだ。



 放置カメラに共通の問題は、レンズのカビや曇りとシャッタースタック、蛇腹などのカビや張り付き、各部の 動きが悪くなるなど。これら(90o、400o)にもシャッタースタックとカビや曇りがある。



 ついでに最初からの組間違いを発見。フジノンの回転防止のピン穴が明けられていない。これでは不安定だし フイルム面に対して斜めになってしまうので、固定位置になるようにピン穴(正確には溝)を開く。



 90oと400oはどちらも内部にカビがある。大判フジノンは性能が良いレンズだしレンズの分解が完全にできるから良い。 しかし、ガラス押さえプレートとセットリングが一体なので、フリクションが大きいから古くなると分解が極めて 固くなるのが困った点だ。



 手持ちのカニメ回しなどでは全く歯が立たない。結局、CRCを注入してしばらく置き、代用タガネとハンマーの 出番となった。これは最終手段、養生してもレンズを傷つけやすいので普通には使わない。レンズに養生をし、 ゴムカップで下部を浮かして実行。90、400oともに緩められたが、400oの後玉の表面に傷をつけてしまった。 黒インクを傷にスポットで塗ったから悪影響は出ないだろう。セットしたときには見えない後玉だったのは 不幸中の幸。冷や汗が出た。





 90oのシャッターは完全にスタックしている。羽根を見るとずれが生じている。開いてみると駆動部は大丈夫だが 羽根部がひどく固くなっている。これはヒマなときに挑戦するがおそらく完全にはならないだろう。おそらくピンが飛んだか ピン穴が傷んでいる。

 偶然、手持ちに同等のコパルがあったのでこれと組み替えた。幸いにも絞りの指標も同じだ。コパルは シャッターセットに関わらずプレスレバーで開閉できるから使いやすいから怪我の功名か。



 フジノンSWD90o。包括画角が大きく、アオリの範囲が広い。スーパーアンギュロンに対抗できるレンズ



 フジノンW150o、おそらく日本にある4×5で一番使われているレンズだ。普通の用途ならトリミングと組み合わせれば ほとんど万能のレンズ。安くてよく写る。私はこれを45クラウングラフイック に付けっぱなしにしている。今回のテストではこれは省略した。今更確認するまでも無い銘玉なり。

 このレンズはリンホフボードアダプターで接続している。リンホフ系だと共用性が高いから便利だ。



フジノンT400o。テレタイプなので、リアスタンダードを引き出し、レールを伸ばせば実用範囲になる。



 ということで、この3本の組み合わせ。35o換算だと、25o・42o・113oという組み合わせだ。正確な倍数系列では 無いが、この三本があればほとんどの場面で困らないだろう。重さを考えれば納得の組み合わせである。



 蛇腹はカビがあるのでウエットティッシュで徹底清掃し、ウレタン処理を施した。



 ピントグラスはゴミと汚れがあるので分解し、超音波洗浄した。この方法はこすると傷になるフレネルレンズには 最も適している。処理数分ですっきり抜けて見やすくなった。(これは洗浄前)

 その他の部分は磨いて潤滑したので動きが滑らかになった。三脚上で操作する時、動きが悪いと非常に使いにくい。 軽く動いて楽にロックするのがこの手のカメラでは必要だ。









《試写》

 4×5はアクロス、69アダプターではプレストを使って90oと400oにて実施



 操作ミスで被らせたので、4×5の1/4ほどを切り出した



 69にて



 69にて



 69にて



 90o・4×5にて  このカットの1200dpiのもの

 レンズの傷の影響確認が主なので、69を中心にテストした。4×5は数カットのみ。結果としては期待に違わぬ結果に なった。逆光でもしっかりコントラストがあり、傷の影響は感じなかった。ピントは言うまでもないだろう。


☆操作性が良い。セットが簡単なので野外撮影に強い。機能を割り切った構造なので、アオリを多用するような ブツ撮りには向かないが、一般撮影ではフォーマットの威力で圧倒的だ。なお、トヨビューと部品の互換性があり、 フイルムバック部などアダプター類がいろいろ共通に使える。

 スイングやティルト、シフトは使いにくい。フロントはロックレバーを緩めて行うのだが、センターのクリックが 強過ぎ、中間に合わせにくい。リアはティルト以外はスライドを緩めて引き出さないと扱いにくい。そのスライドは 節度が無いのでちょっと厄介だ。

 木製暗箱に準じた使い勝手でよくできている。経験豊富なトヨの実用カメラである。

同格のウイスタとの比較

 何より重量が軽いこと、基本操作のわかりやすさでトヨが勝り、細かい操作性とアオリの自由でウイスタが勝る。 材質、特に蛇腹の耐久性ではウイスタが勝る。

 システムカメラとしての展開はどちらも充実していて甲乙付け難いが、独自路線が見え隠れするウイスタより、他の大判 カメラとの部品の共通性(トヨの69ホルダーはグラフレックス規格で、RBやホースマンのものが使える、など)では トヨが勝る。どちらも基本は独自マウントだが、リンホフボードアダプターが用意されているので問題ない。

 大判は古典的バレルレンズなどを自力でマウントできる汎用性・加工性が求められるが、それぞれ一般的なサイズを 取り付けられるので問題ない。トヨは後部がスライドし、ウイスタは前部のレンズボードレールが2段の繰り出しで テレタイプなら400o程度まで実用になる。もちろん基本ボディーのままでは長焦点は無理で、それぞれ発表され ているアダプターを用意する必要がある。どちらもフォールディング時にタスキなしなので開閉が比較的簡単にできる。 目立たないが木製組立暗箱との比較で言うと遥かに固定しやすくアオリは高機能で使いやすい。

 これ一台だけでの比較は、どちらもフィールドでの実用に十分耐える良くできたカメラだ。甲乙付け難い。好みで 選んでも問題ない。最後はレンズと腕で決まるのだから。



☆楽しめました。質実剛健ですね、御愛用を>プー博士


December 2014


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