ロモのソ連時代のハーフカメラ、チャイカ(カモメ)の1型である。ベロモ=ロモの製品で、ハーフカメラは世にいろいろあるが、
ソ連カメラ御得意の御手本にしたカメラは思い当たらない。ベロモのオリジナルでAFAT18シリーズなどの元になった。
これはKzさんのもので、特に不具合は無いので試写させて貰った。
インダスター69の28o2.8を積む。2型以降はレンズが外れるが、初期型は固定式だ。ただし、その他のスペックは
2型とまったく同じで、前から見てもシャッターボタンと鏡筒周りがわずかに異なっているだけ。
まさに兄弟である。オーナーは2型と勘違いし、無理やりレンズを外そうとして危うく壊すところだったそうだ。私もKzさんに聞くまで
2型だと思い込んでいた。
ソ連のカメラ・レンズには当たり外れがある。計画経済でコストや品質管理意識が薄かったのか、組み立てに問題があるものが見られ
るのだ。鏡筒の指標がずれて無限遠が出ていないレンズがある。また、中古品のシャッターを見掛けだけ動かすために、CRCなどを
羽根に吹きつけてあり、後で激しく粘って完全分解清掃以外に治せない、コスト的にほぼ致命傷などとんでもない整備状態のものも
存在する。
従って、きちんと整備してから使うのががっかりしないための心得だろう。その点さえクリアーすれば、ブラインドテストで
プラナー、ゾナーなどと見分けられない良い物がソ連のレンズにある。ソ連は第二次大戦後に旧ツアイスの技術者や材料をごっそり
奪ってコピーを作っているから不思議は無い。リスクはあるが、遥かに安価で素晴しい性能を楽しめるのがソ連カメラだ。
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ひどい周辺落ちを「トンネル効果」、つくりの悪さによる光漏れを「味」などと呼んでいる一群の”ロシアカメラ”(必ずしも
製造したのはロシアとは限らない)がある。これらを使って、写っているものが何か定かではない写真を量産させ、「芸術」と錯覚
させる商法がブログブームとともに流行った。今も少しはあるが、ブーム当時はピンが悪かったりハイキーに飛ばした写真を掲載した
ブログがあちこちに見られた。それらはソ連カメラに対する偏見を助長しただけ。あれは写真というより写真を素材として扱う現代美術
の一部というか、おしゃれ錯覚の一種だろう。
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簡素な軍艦部。右は枚数表示、左の上が速度表示、下は速度変更リング。全くクリックは無いので、指標を見ないとどこに合わせて
いるか全くわからない。内部的には最高速に遅延を与えるのは鶴巻バネで、その程度を設定するから、バルブ以外は中間でも使える。
使えるだけで正確な設定は出来ないが、もともとそれ程正確な動作では無いから細かく気にする必要はない。
ちょっと変わった形の巻き上げレバー
巻き戻しはボタンを押しながら行う。内部でギアで接続している。右から二つ目は使用フイルムのリマインダー
《試写》
イルフォードFP4+にて
ピンは少し甘いのはスキャニングが余りよく無いからで、ハーフとしては特に問題なし。見られる程度に遠景も近景も出ている。逆光
には強く、暗部が潰れない。当然ながらU型、V型などと同系統の
結果だ。今回は実施していないがカラーで彩度の高い鮮やかな発色が期待できる。
☆ソ連のカメラは質実剛健。見かけの無骨さで判断してはいけない。材質はしっかりしたものだし、レンズは一級品だ。ただし、
製造にムラがあるから、ちょっとリスクはある。しかし、意外なほど良く写るので止められない。
☆崩壊から既に25年、まさにソ連遥かなりですね>Kzさん
November 2015