MINOLTA REPO S

ミノルタ・レポは以前にみやっちのものを整備していてテスト済みだが、先日S氏の所にレポとレポS(分解状態)が転がっていて、ハーフは好きなので両方とも貰った。レポは露出計不良、レポSは全体に激しく汚いと言うものだった。

 レポの整備はこちらに追加している

《REPO S》



手前が清掃後、本体側は清掃前。腐食が始まっていてそれに汚れでとても使う気にならない汚さだった。





底部の中。簡素だがしっかりした作り。給油したら動きが軽くなった。





前周りも分解して清掃。シャッターは1/15から1/500まで、絞りは1.8から16までと本格的だ。



作業が完了したのだが、これらのネジが余った。分解された状態で頂いたので、他の部品が混じっていたのだろうと解釈、深く追求しないことにした。動いているから良いだろう(笑)











《追記・レンズバレル脱着の注意》



後玉は前板を外せばアクセスできる。ただし、レンズバレルを外さないとアクセスしにくい。あまり進められないが、レンズバレルを外す時の注意は、露出計連動用のカムリングを適当な位置に上手く固定し、ヘリコイドとの嵌め合わせを良く確認し、@の部分がこうなるようにしたい。個々を間違えるとシャッターセットが出来なかったり、ヘリコイドがまともに動作しなくなる。

Aは絞り側の連動部、Bは実絞りの、Cはシャッター速度変更部だ。Dは、ヘリコイドが作動する時にレンズバレルの回転を防ぐ部分で、組立にはこれら全てが確実な位置にある事を確認するべし。もちろん一行程ごとに記録して確認すること(私は一気に分解して一度組立に失敗した)



シャッター内部。意外なほど簡素なシャッターで、この構造から作動トルクが小さく、羽根の油に非常に弱い。従って、潤滑はボロン粉末などドライが望ましい。


《REPO》



シャッターはそこそこ動いている。





実に簡単に開く。後玉全面にカビがあったので清掃した。バルブがあるので作業しやすい。



随分簡単な作りだが、これでちゃんと動くのだから文句は無い。経年変化で油切れなので給油した。



問題は露出計不動だ。追針式だから使えるが、目安になるのはEV表示だけなので、露出計が動かないと面倒だ。幸い露出計自体は壊れていないので、セレンの交換で直せる。



軍艦部。鏡筒の設定リングと追針が連動するから、露出計の針に追針を合わせれば手動プログラムでシャッターが決まる。



以前に手に入れた小型の太陽電池



+側のリード線が多少傷んでいたが、何とかハンダ付けする



半固定抵抗を入れるつもりだったが、直結でほぼ規定どおりに動くとわかったのでそのまま組んだ。オリジナルより巾は1/4以下だが、上下が2ミリほど長いので、オリジナルの止め方は出来ない。パーマセルテープで貼り付けた。











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《追加・みやっちの黒レポ》

みやっちが「逆光で補正してもちゃんと写りません」と持ち込んできた。調べるとシャッターはきちんと作動しているが、絞りの口径が変わらないとわかった。どんな速度でも11-16程度に絞り込まれたままである。



実にきれいな個体で、黒は極めて珍しい。



以前開いた時に無限遠はマークしてある。ここから約4回転で外れる。



青はスローガバナー、黄色は中間のへこみのところでバルブのコントロール、赤が問題の絞り調整部で、左側がプログラム対応、右がフラッシュ用手動絞り位置を決めるキリカキ


矢印のところが絞りの調整部、ここのピンが外れていればもちろん絞りは調整されない。特に問題ないように見えた。しかしベンジンで洗い、ボロン粉末をつけても動きが軽いのに絞りがデフォルトの開放状態にならない。これはリターンスプリングの外れと見当がついたが、どこにどのように掛かっているのか良くわからない。入院処置ということで一先ず預かった。



幸い、シャッターなどは正常だがピントリングが欠損していて露出計が壊れたジャンクがあるので、これを開いて確認してみようということになった。
前板を外せば、レンズバレルはあっさり外れる。引っかかっているのは露出計の連動指標テンションを与えるバネのみ。



露出計が一体になってこのように外れる。整備性は極めて良い。





後ろ玉を外すと絞りのピンが見える。3本で美味くコントロールしている。良く洗ったので軽く動くが、ここにはリターンバネは無いから前にあると判明。



やっと真相がわかった。絞りはごく小さいレバーで開閉され、そのレバーを押すように三角形のカムがあるが、バネは見えているカムではなく、直接レバーに掛かっている。絞り込むのはカムがガイドピンで動かされて絞りピンを押す構造だ。
外から見て動いているように見えるカムだが、押して戻ってもレバーにはテンションが無いから開かないというわけだ。



このバネが犯人だ。直径3ミリ程度のループになっているごく細く小さいもの、こんなバネ一つで機能不全になるから機械は難しい。



バネはこの白い線のようにかける必要がある。ただし、向かって左側はこのように乗せるのではなく、下側に入れてレバー(頭だけ出ていてピン状)に掛ける。指は入らないから針や細いラジオペンチで作業する必要がある。

作業するにはすぐ上のシャッターレリーズのリンクが邪魔だが、左はシャッターを押し、右はシャッターを戻せば分解しなくても隙間が出来るので作業できる。バネが飛ばないように透明セロテープでガードして掛けようとした・・・・・甘かった!

経験者ならわかることだが、細いバネの扱いは極めて面倒だ。細いラジオペンチでコントロールしながら掛けようとしたが、なかなか上手く入らない。何度か試していたら、ふっと音も無く消えた。バネがどこかに飛んでしまったのだ。

部屋中を一日がかりで磁石片手に探しても、あのバネが見つかる確率はごく低い。探すのはあきらめて手持ちのバネから合いそうなものを探すが、なかなかちょうど良いものが無い。無ければ作るしかないので、目打ちの軸部を使って何とかそれらしいものを作って再挑戦・・・ここから悪戦苦闘、バネは勝手に変形するしすぐ飛ぶ。結局、3度目に作ったものが掛かった時には三時間経過していた。





ということで、二度とやりたくない(笑)作業完了。また外れたら、みやっちに自力更生していただこうと心に固く誓ったのであった。

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《試写》

どちらもいつものアリスタ・プレミアム100にて。

実は、Sの試写後に後玉にカビがあり、少しボケるのが判明した。前から見たときには見落としていたのだ。この試写は対策前のもので、整備後はレポと同等の抜けになった。後日の清水でのオフ会(後日発表)では、スッキリした画像が安定して得られた。(どちらもシュテックラーにて現像)

REPO S







REPO





☆清水オフ会にて撮影したレポSのもの



追加記事へのリンク

これらのカットではレポのものが実にクリアーである。コントラストが高く、ピントが良い。レポSは二枚目にはっきりカビの影響が出たので、この比較では負けているが、その後の実用では全く問題なくなり、トーン、コントラスト、ピントの三拍子揃った良いレンズだとわかった。

二台を機能で比較すると、シャッター速度も絞りも選べ、F1.8の明るさと組み合わせればほとんどの用途に万能性を発揮するSに軍配が上がるだろう。ただし、レポの針におよそ合わせるだけという簡便さもハーフで気楽に写すと言う点では劣るものではない。レンズ性能はどちらもロッコールを名乗るにふさわしい良いものなので、全く不満は感じなかった。

メーターの針の振れ方で直感的に明るさが読めるので光が読みやすい。そのために、逆光補正は針式EEと大差なく使える。もちろん、ファインダーから目を離すので即写性は劣るが、実際の撮影ではほとんど差はない。光が読めるベテランには良い武器となるだろう。

☆Sさん、大いに楽しめました。ありがとうございます。


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