《実例》
☆作業順に掲載しているので、形式の統一性がないのはご容赦を。
@新コンパーラピッド0番
上側(黄)がスローガバナー。このシャッターは最高速では追加バネ(または通常位置よりバネを余分に引く)が初速を上げる。
青の部分がシャッターセットレバーとD型の運動をして行きはシャッターを開かず、帰りに開く運動をするオウムのクチバシ状の部品が
下についている。なお、このシャッターは大判用レンズに付属するもので、右側のセルフタイマー部分は中身が無い。
☆デッケルのコンパーはもっとも普及したレンズシャッターの元祖だ。リムセットから改良を重ね、多くのカメラメーカーに採用され
続け、現在も第一線で活躍している。その信頼性と耐久力は秀でていると言えよう。定期的に清掃・給油をしていれば戦前のものでも
立派に使える。これは設計の良さと材質によるものだろう。
あえて短所をあげれば、組立に注意とコツが必要というところか。もちろん一般ユーザーには関係ないことだが。
Aコニラピッド
コニカUのもの。ほぼコンパーを踏襲している。赤の部分がスローガバナーで、黄色は羽根を開閉する往復運動部。青の部分はこの写真
では外れている。ここがシャッターセットレバーを起動する部分で、分解するとこのようにすぐ外れてしまう。もちろんここを直して
から組む。
☆コニラピッドの水没品大修理海水なのでほぼ修復不能、応急手当で一先ず機能した
開いたところ。普通はこれを見たら静かに閉めて、無かったことにする。
Bタロン
タロン35のシャッター。セットリングではなく、軸巻きのバネを使い、通称オウムのクチバシ型の駆動部を持つプロンタータイプで、
黄色がスローガバナー、赤い部分が裏側から巻かれて駆動トルクを得る部分。
☆プロンターも採用例が多い形式だ。スローガバナーはコンパーとほぼ同一だが、セット部がわかりやすく、分解整備時に調速カムを
外しても外れる部分が無いので作動が確認できる。ただし、オウムのクチバシに掛けられているバネは非常に細く小さいので折れやすく、
これが折れると音はすれども羽根が開かないという典型的故障が起りやすい。それ以外は良く出来たシャッターだ。
Cリコー
理研・リコーはプロンタータイプか簡易型の二系統が多い。これは35-S3のもの。黄色がガバナー、赤が駆動部で、青い部分はセルフ
タイマー
Dミノルタフレックス2
ミノルタはコンパータイプ。作りは非常にわかりやすい。黄色がガバナー、赤は羽根の開閉部。これも最高速はエキストラバネを追加
する構造だ。
EコパルNo.0
コパルはセイコーと並んで、レンズシャッターの多くを汎用から専用まで供給してきた。両社ともコンパーやプロンターに学んでいるが、
それぞれ独自の工夫をしている。
それらの中で特に多く使われたのがこの0番だ。スタジオ撮影などには不要なセルフタイマーは組み込まれていない。プロンターの変形
でいつでもシャッターを強制的に開けるプレスレバーがついている。ピントグラスでのピント合せには必須のデバイスだ。
二枚目にはカムリングを装着した状態を示す。ここを組む時には印をつけた部分がきちんとガイド溝に嵌まっていないとまともに作動
しない。これらのピンは速度変更用、タイム作動(一度シャッターを切るともう一度押すまで開いたままになる)やバルブ作動の切り
替え、ガバナー切り替え(ガバナーを二つ持つ場合)などのためにある。
FコパルNo.1
構造や作動は0番とほぼ同じだ。
Gシャネル5A
一般的なレンズシャッターでは最大級。主にバレルレンズと組んで使われる。最高速は1/100秒。大きさは煙草との比較でわかるだろう。
コンパクトカメラ一台分の重量があるから、弱いボード周りでは使えない。
HパールU
645のパールはコニラピッドそのもの。コンパータイプで黄色がガバナー部。赤印のところにシャッターレバーがつくのだが、この写真
では外れている。(簡単に外れて落としやすいので、整備中は外している)
IコニカC35
シャッターの開き方で速度と絞りを兼ねるタイプ。矢印のところがフライホイールで、これをどれだけ廻すかでシャッター開度が決まる。
もちろん同時に絞りも一義的に決まる。
この形式では低速は1/30秒程度が限界だ。スナップの手持ち撮影では手ブレの限界がその辺りだから、スナップカメラとしてはこれより
遅い速度は過剰性能と言う割切である。
Jヤシカ72E
ハーフ用のごく小型のシャッター。このヤシカ72Eは本格的なプロンタータイプ。
Kリコーキャディー
こちらは初期リコー独特の長いアームを持つタイプ。シャッター羽根を先端で駆動するアームは、力点・支点の間が短く、作用点=駆動部
が長い。てこの原理で先端の動きは大きくなるが、シャッターセットのストロークが極端に短くセットするトルクが必要になるので、
調節が大変で駆動トルクが弱い。少しでも油が切れるとスタックするので厄介なシャッターだ。
Lミノルタレポ
ハーフはそれぞれ専用設計で、それぞれ独自のシステムを持つ。これはコンパータイプで、黄色がガバナー、赤矢印はシャッター設定
と連動させて絞りを変える部分。シャッターと絞りを独立して持つが、同時にコントロールして機械式手動プログラムシャッターを
実現させている。
Mコニレット
簡易カメラだが複数の速度を持つコニレット。矢印がはずみ車で、これを廻すのが抵抗になって低速を出す。もちろんそれほど大きな
変化は出来ないから、シャッター段数は少ない。それでも簡易カメラ用としては贅沢な仕様だ。
Nホルガ120S
比較用の典型的な単速簡易シャッター。昔のコダックなどの簡易カメラやフジペット、ダイアナなども全く同一形式で、一本のバネを
シャッターレバーを押すトルクで準備し、一定位置まで来ると穴明きボードがくるっと廻って露光する。当然ながら低速は全く無い。
単速のコントロールはバネの強さと各部のフリクションだけだ。ただし、これらは意外なほど安定して1/50から1/125秒程度で動作する。
実用では意外なほど使えるから面白い。
Oプレモ
プリモではない、プレモはコダックに1世紀前に飲み込まれたメーカーだ。赤い印のところがピストンになっていて、オリフィス
(小穴)が空気を制限してガバナーになる。今も正確に作動する優れものだ。何故この形式が消えたか、おそらく小型化の要求だろうが、
今でも通用する性能がある。
Pマミヤフレックスジュニア
ちょっと変わったプロンタータイプ。詳細はこちらにあり。
Qマミヤ35V
コンパータイプ。セットリングの変形で苦労した。
RフジカGL690
フジカGL690用のセイコーの0番で、コンパー・プロンター折衷タイプだが、シャッターセットリングは確実にホールドされていて、
上を外しても外れるような事は無い。
Sフジカ35SE
1/1000秒まであるシチズンMLT、長く伸びたアームはセルフタイマーの作動を伝えるリンクで、これが外れるとシャッターは
まったく動作しなくなる。下手に開けて、これが外れてジャンクになっている個体がある。
21 コダック・ポニー828
コダックの828フイルムを使うポニーのもの。全くのオリジナルスタイルで、一応スローガバナーがあり、Bから1/200秒まで5速と
意外にちゃんとしたシャッターだ。清掃と注油で問題なく動くようになった。コダックのシャッターは材質が良いのか壊れにくい。
22 ブラウン・パグゼッテ
プロンター的だがオリジナルな構造だ。シャッターセットは裏から行うのが距離計連動時代の35oカメラの基本だろう。
23 フジカ35M
フジカの35o連動距離計式カメラの基本形。非常にしっかりした作りだ。プロンターの仲間と言う構成。
24 ネオカ35K
ネオカの35Kは廉価版で、シャッターも簡易だが、これでもしっかり仕事をする。
25 パックス35M2
コンパータイプ。テスト撮影していて途中からシャッターセットが出来なくなった。このシャッターは巻上げに応じて赤い部分が
回転し、黄色のセットリングを押す構造だが、回転部から伸びたセットリングを押す部品に内向きにテンションを掛けている
スプリングが、変形して本来の位置から外れていた。
26 リコーフレックス・ホリデー
リコー独特の簡易型シャッターである。鎌形の大きなアームの先にシャッター開閉ピンを片道だけ引っ掛けるところがあり、そのレバー
に待ったをかける簡易なスローガバナーを持つ。部品点数が少なく、磨耗には比較的強いが、スロータイムは書いてあるほどにはならず、
最高速を主に使い、スロータイムはあてにしない方が良い。今回の整備後のテストでは、高速は出るがスローは気のせい程度のディレイ
だった。同じようなシステムだが、リコー・キャディーのシャッターはきっちり低速が出ているから、このシャッター形式でも、しっかり
したスローガバナーなら問題ない。
27 フジカ6
富士のこのシャッターはプロンタータイプだろう。材質は良いが羽根に油が回ったものが多い。確実な清掃をすれば、確実に動く。
スーパーフジカ6も同一の構造(違いは距離計連動の有無だけ)
28 ヤシカ・ハーフ14
ヤシカハーフ14は独特の構造で、右下のフライホイールがシャッター兼絞りを司る。
29 リコー500DX
リコーでもこの500DXはコンパータイプのオーソドックスな機構。
30 フジカハーフ&ドライブ
独特の構成で、プロンター変形と言うより、独自システムと言える。ハーフもドライブもこの部分は全く同一で、全て共用できる。
羽根油のトラブルが多いので、必ず清掃が必要と考えた方が良いだろう。
31 旧コンパーラピッド
バルブとタイムがシャッターセットせずに作動する古いコンパーラピッド。印の所にシャッターレバーに連動してシャッターを開く
部品が組み込まれている。バルブとタイム以外ではキャンセルする仕組みだ。ピントグラスでのフォーカシングが基本だった時代には
便利な仕組みだ。
次ページへ