.
自家現像のススメ
趣旨はタイトル通り。自家現像しようという意味。自家現像すると次のメリットがある。
@一本あたりの経費が機材の償却費を考えても1/10で済む
A現像待ちが無い。必要なら即日結果を得られる
B増感・減感や微粒子・粗粒子など特殊処理が可能
C結果を自分の手で得られて楽しい
デメリットはあまり考えられないが、
@機材の初期投資がかかる
A時間を必要とする
B手間と後処理は自分でやらなければならない
デメリットの@は他の趣味から考えて大したものではない。中古機器の導入と写真用以外からの流用で相当部分が
まかなえる。具体的にはモノクロのみで10-15K、カラーだと初期投資はラボ用薬剤で15K程度別途にかかるが、
大量なので100本単位で処理できるから、一本あたりは非常にローコストだ。
Aについて、現像に要する時間はせいぜい一時間(乾燥は放置なので考慮せず)だから隙間時間で出来る
Bは仕事なら苦痛だが趣味なら楽しみなのでデメリットとはいえない
☆ということで、まだ中古機材などがヤフオクなどで手に入る今が挑戦する良いチャンスだ。はじめてみれば
「こんな面白い事を他人任せにして、しかも金を払っていたなんて損していた」と感じるだろう。それゆえ「沼からの誘い」を
書こうと思い立った。仲間(沼)は多い(深い)ほど楽しいから
◎必要機材(必須分のみ)
暗室に代わるダークバッグ(暗袋)。大小いろいろあり価格もいろいろだが安くても大きいものが使い易い。中に
段ボール箱を入れると扱いが楽になる。大き目のダークボックス(DP店にトラブル時のサービス用で良くある)がベスト。
現像タンク @LPLのもの。タンクサイズがいろいろあり、135、120に対応。使用液が少なく外からの温度調整が楽で
数が出回っているから安い。薬の注入や排出がやや弱いので、120については工夫が必要。現行はゴムキャップ式になって
いるが、出来れば旧のステンレスが耐久度で望ましい。
現像タンク Aパターソンとそのコピー品。巻き込みが楽で温度変化に強い。薬の注入や排出がスムーズだが薬の量が
多く、プラスチックなので経年変化には弱い。127にも対応する(右前にあるのは4×5用の社外アダプター)
現像薬液いろいろ。私の場合は右から「現像」「停止(単なる薄めた酢酸)」「定着」「水洗促進剤」で専用タンクは
一切使っていない。現像薬は光が嫌いなので暗所で保管か濃い色のタンクが望ましい。市販のボトルも高いものではないが、
ペットボトルで十分用が足る。なお現像薬は空気との接触を減らすため、ビー玉などを投入するかボトルを変形させて
空気と触れないようにするのが望ましい。
☆私の場合は耐久力が極めて高いフジのSPD(スーパープロドール)の5リットル用を2.5リットルに溶いて保管し、
数本(適当)現像ごとに100-250ミリリットルを200-500ミリリットルに希釈して元液にし、これに濾過した古いものをボトル
一杯に満たす(常に古い液を入れて平衡状態にする)通称ウナギノタレ方式だ。現像力の強いSPDをわざと弱め、微粒子と
軟調を狙いとする。どの程度でどのくらい追加するかは長年のカンで、ネガを見て行っているので、推奨はしないと言うか
カンは文章化できないから説明出来ない。
定着液は処理本数又は現像結果でその場で全量交換している。定着が弱くなれば結果に出るから、その場で旧液を捨てて
新液で追加処理する。
漏斗とフイルムクリップ。クリップは専用品でなくても大丈夫
35oフイルムのベロ出し、これが無いとパトローネ破壊が必要なのである方が便利
薬剤を溶いたり薬液の注入に使えるトオカップ(料理用の計量カップなどの流用可)が欲しい
液温計は料理用で1000円前後の電子タイプで十分だ。(ガラス式はバラツキがあるのでもはや薦められない)
時間を計るためにストップウオッチなどが欲しいが、キッチンタイマーや100円ショップのものなどで十分
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
《現像手順》
@ フイルムのリールへの巻き込み(135)・テストフイルムで明るい所で何度も練習しよう!
リール(どちらか)、フイルムとタンク本体をダークバッグに入れる。35oの場合はハサミも入れる
−−☆ここからはダークバッグを閉じて全て手探りで行う☆
−−−−−−−−−−−−−−−−−−
フイルムを引き出す。この写真では古いものなので巻かないが、新しいものなら勝手に巻きたがる。1センチ程度残した
位置で切って、タンクがパターソンならこのままで良いが、LPLなら元の形に巻き直す
LPLではこの方向にして、フイルムのリード部を青い印の爪に引っ掛け、右に引きながら一回転巻きつける
引っ掛けから半周でリード部になる。ここで左右が正しい位置になるよう確認する。以後、真っ直ぐに入らないと手に
フイルムの反発が伝わる
巻いている途中。フイルムを逆U字型に軽く変形するように持ち、少し巻いてはごく軽く押してわずかだが軽く前後
するのを確認する。きれいに巻けていれば手に逆らうような動きがしない。ずれていると反発して巻きにくくなる
巻き終わり。きれいに入れば、36枚撮りでは最外周まで巻くことになる。その他は途中で終了する
下手な巻き付け例。印のところが歪んでいる。このようになるとフイルムが重なって上手く現像できない。少しでも
疑問を感じたら大きく戻してやり直すこと。手間を怠ると失敗してしまうので慎重に
パターソンではフイルムを真っ直ぐ切った状態がやり易い。リード部に乗せて少し引く。ワンウェイにするためのベアリングを
両方超えたら巻きだす。矢印の方向に捻って往復運動すれば巻き込める。湿り気があると張り付いて送りにくいことと、性急に
作業すると引っかかり易いので注意。また、上手く巻けない時はフイルムを外すが、引き出しにくければ左に廻してリールを
分解して外し、改めて入れなおすこと。なお、パターソンのリールは分解して位置を選ぶことで、135・127・120に対応する
明るいところでは簡単だが、手探りかつ狭いダークバッグではフイルムを自由に扱いにくい
巻き上がると急に動作がフリーになる
☆ダークバッグは通気性が無いから非常に湿度と温度が上がり易い。下手なうちは出来るだけ気温が低い乾燥した時に
巻き込むのが良い。何らかのトラブルで困った時は、フイルムのみタンクに入れ(パターソンは中軸もセットする)、光に
当たらないようにしたら作業を中断してダークバッグ内を風に晒し、自分の頭も冷やしてもう一度挑戦しよう。
フイルム巻き込みは現像では最大の面倒なので、練習は必須だ
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
温度を測って必要温度にする
A 以後は現像あるのみ。先ずは現在の液温を確認して、暖め、又は冷やす事を考える。通常は20℃が基準だが、上は25℃程度
までは時間短縮で可能だ。昔のフイルムだと液温が高くなると膜面が弱くなったり粒子が荒れたりしたが、今のものなら
25度くらいでは影響ない。1度で30秒増減でいける。もちろん現像薬添付の説明書の基準を先ずは守って、基本の方法を
身に着けよう。(KODAK D76、富士ミクロファインなどがベーシックな現像薬で手に入り易い)
薬の温度を簡単に上げるには電子レンジが速い。1リットルの液で10秒で1-1.5℃上昇する。ただし、機械によるので
必ずテストしてから実用しよう。また室温との差が大きく、液温を保ちたい時はダブルバット(処理温度に近い水を大きい
容器にいれ、その中に薬剤の瓶や現像タンクを入れて温度を保つ方法)が望ましい。夏に冷やすには氷を入れた二重バットが楽。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−基本手順−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
Aモノクロ
現像(指定時間)・停止(1分程度)・定着(指定時間)・予備水洗(1分程度)・ハイポ処理(FUJI QWなどで1分程度)・水洗(指定時間)
−−−乾燥には水切り材等で水滴防止しても良いが、台所用洗剤を一滴入れても同様の効果あり。乾燥はホコリの少ない風呂場
などが望ましい。要は大きな水滴を残さず均一に乾燥させるのが大事で、セーム皮などで静かに拭う方法もある。いずれにせよ
水を吸って弱くなっている膜面を痛めないことが大事。
Bネガカラー(私の私的方法)
発色現像(☆)・漂白(5-6分)・水洗(色が出なくなるまで)・ハイポ定着(モノクロに準じる)・以下はモノクロと同様
−−−☆現像薬に市販のミニラボDP用の発色現像液を利用。30℃で5.5分、38℃で3分程度処理する。スタビライズは実施しないが
この方法で問題ないネガが得られている。あくまで個人の例なので、参考まで。
☆現像薬の注入はムラ防止のため出来るだけ短時間で行いたい。トオカップや漏斗を使って少しでも素早く入れることが
特に120フイルムや135フイルムでも複数処理する時にはは求められる。
☆ここで言う時間は、「薬液の入れ始めから排出完了までの時間」を指す。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
☆
☆120フイルムの巻き込みについては、@パターソン・
ALPL(120.135)を参照しよう。120フイルムは135に比べて幅が広く、
相対的に腰が弱いから折れに弱い。慎重な扱いが必要だ。
☆微粒子になる低温現像のレポート
☆ネガカラー、リバーサルの現像は達人の工夫を参照しよう。
豊富な実験に基づく素晴しい報告だ。
☆その他、種々の特殊現像がある。希釈現像や低温現像は長時間なので、温度や手順による影響が少ない。
変わった所ではコーヒーやビタミンCなどによる代替薬品現像、超軟調微粒子現像などさまざまな手法がある。
これらは検索して先達の研究を参考にすると良い。もちろん基本の現像をマスターした後の話。
Oct 2016